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2024年12月10日
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1.トピック:2025年はどんな年?金融市場のテーマと展望
師走に入り、今年も残すところ20日余りとなった。まだ年内に日米金融政策会合など重要なイベントを残しており、年末の着地点は不透明ではあるものの、例年同様、今年の金融市場を振り返り、来年の市場のテーマと動向を展望したい。
(2024年の振り返り・・・大型の材料を巡る思惑で不安定な一年に)
初めに2024年のこれまでの金融市場の動きを振り返ると、まず日本の長期金利(10年国債利回り)は上昇した。年初の時点で0.6%台前半であったものが、7月初旬には一時1.1%台に乗せ、足元も1.0%台半ばにある。
初めに2024年のこれまでの金融市場の動きを振り返ると、まず日本の長期金利(10年国債利回り)は上昇した。年初の時点で0.6%台前半であったものが、7月初旬には一時1.1%台に乗せ、足元も1.0%台半ばにある。
次に、ドル円レートは年間を通じて乱高下したが、足元では年初比円安で推移している。年初に1ドル141円台でスタートした後、堅調な米経済動向を背景とするFRBの利下げ観測後退を受けて米金利上昇が牽引する形で円安ドル高が進行。その後、米金利は低下に転じたが、「日米金利差は開いたまま」と見方を追い風に7月初旬には約38年ぶりの円安水準となる161円台後半を付けた。一方、8月に入ると、米景気後退懸念が俄かに高まり、投機筋の円売りポジション解消を巻き込んでドルが一旦急落したが、秋以降は米景気後退懸念の解消とトランプ氏再選に伴う米金利上昇を受けて持ち直し、足元では151円台で推移している。この間、政府による円買い介入(計4回・15.3兆円を投入)と日銀による利上げ(観測)はドル円の上値を抑制してきた。
日本株の代表的な指標である日経平均株価も激しい値動きを辿ったが、足元では年初比株高で推移している。まず、年初から夏にかけては大きく上昇し、7月上旬には一時42000円台を付けて過去最高値を更新した。背景としては、日本株と連動性の高い米国株の上昇が追い風となったほか、円安ドル高の進行を受けて企業収益の改善期待が高まったこと、日本企業の企業統治改革への期待が高まったことなどが挙げられる。しかし、8月に入ると、日銀による予想外の利上げ(7月末)や米経済の減速懸念が急速な円高を巻き込んで株価の急落を引き起こし、8月初旬には一時31000円台にまで落ち込む場面があった。その後株価は持ち直しに転じたものの、日銀による利上げ観測及びそれに伴う円高への警戒感、衆院選での与党過半数割れ等に伴う政治の安定性喪失、トランプ氏の再選による関税の引き上げ懸念などが重石となり、足元で39300円台と史上最高値を3000円程度下回る状況にある。
以上のように、今年の相場動向は、最終的に金利上昇・円安・株高で着地しそうだが、日米金融政策や米経済動向、トランプ氏の再選といった大型の材料を巡って市場の思惑が激しく揺れ動き、総じて不安定な展開となった一年と総括できる。
以上のように、今年の相場動向は、最終的に金利上昇・円安・株高で着地しそうだが、日米金融政策や米経済動向、トランプ氏の再選といった大型の材料を巡って市場の思惑が激しく揺れ動き、総じて不安定な展開となった一年と総括できる。
(2025年はどんな年?)
それでは、来年2025年は金融市場にとってどのような年になるのだろうか?来年のスケジュールを踏まえつつ、内外の主な注目材料を点検してみる。
それでは、来年2025年は金融市場にとってどのような年になるのだろうか?来年のスケジュールを踏まえつつ、内外の主な注目材料を点検してみる。
<注目材料(1):トランプ政権による政策発動とその経済への影響>
まず、来年の市場を展望するうえで最も注目されるのは、1月下旬に発足する「トランプ次期米政権による政策発動とその経済への影響」だ。
まず、来年の市場を展望するうえで最も注目されるのは、1月下旬に発足する「トランプ次期米政権による政策発動とその経済への影響」だ。

ドル円にとっては、基本的には米金利の上振れを通じて円安ドル高要因になると考えられるが、インフレや金利の高止まり、関税引き上げ・貿易摩擦による米・世界経済減速懸念や、減税に伴う米財政悪化懸念が意識される場合にはドル売りとリスクオフ(回避)的な円買いが相まって円高ドル安要因になる。
日本株にとっては、円安と減税による米景気回復期待が追い風になる可能性はあるものの、インフレに伴う米利下げ停止、関税引き上げと貿易摩擦による米・世界経済減速懸念が下押し材料になる。トータルで見ると、下振れリスクの方が大きいだろう。
いずれにせよ、トランプ氏の政策が「いつ」、「どの順序で」、「どのレベルで」発動されるかによって、相場の展開は大きく変わることになる。
1 減税と規制緩和は需要の増加、関税引き上げは輸入物価の押し上げ、不法移民の送還は人手不足に伴う賃金上昇を通じてインフレを促す。ただし、減税のうち主軸となるトランプ減税(個人向け)の延長は現状維持のため追加的な景気刺激効果はない。また、エネルギー領域の規制緩和がもしエネルギー価格の押し下げに繋がるのであれば、物価押し下げ効果が出る。
<注目材料(2):地政学リスクの動向>
二つ目の注目材料は、上記のトランプ政権による政策にも絡むが、「地政学リスクの動向」だ。今年2024年は、ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルを軸とする中東での武力衝突(イスラエルvsハマス・ヒズボラ・イラン)が継続し、たびたび市場を揺るがした。一方、トランプ次期米大統領は、かつて大統領選挙中にロシア・ウクライナ戦争について「自身が大統領なら1日で戦争を終わらせるだろう」と発言し、大統領選勝利後も早期停戦の実現に意欲を示してきた。ハマスに対しても自らの就任前の人質解放を呼びかけ、応じない場合の報復を示唆するなど外交的圧力をかけている。同氏特有の圧力を用いたディール(取引)外交が功を奏して停戦に持ち込めるのか、それとも対立の火に油を注ぐことになるのかが注目される。
また、米国の外交・安全保障に対するスタンスは、既に起こっている戦争・武力衝突のみならず、北朝鮮や台湾、南シナ海情勢といった世界的な紛争リスクにも多大な影響を与えるだけに、その動向が注目される。
地政学リスクが鎮静化すれば、世界経済の下振れリスクが軽減されるため、日本株にとってはプラスに働く。ドル円への影響は限定的ながら、リスクオン(選好)の円売りに繋がる可能性がある。日本の長期金利には、リスクオンの債券売りが金利上昇圧力となる。ただし、中東やロシアといった産油国が関わるリスクが鎮静化する場合には、供給リスク緩和による原油安が金利低下圧力となることで、金利への影響が相殺される可能性が高い。
本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
二つ目の注目材料は、上記のトランプ政権による政策にも絡むが、「地政学リスクの動向」だ。今年2024年は、ロシア・ウクライナ戦争、イスラエルを軸とする中東での武力衝突(イスラエルvsハマス・ヒズボラ・イラン)が継続し、たびたび市場を揺るがした。一方、トランプ次期米大統領は、かつて大統領選挙中にロシア・ウクライナ戦争について「自身が大統領なら1日で戦争を終わらせるだろう」と発言し、大統領選勝利後も早期停戦の実現に意欲を示してきた。ハマスに対しても自らの就任前の人質解放を呼びかけ、応じない場合の報復を示唆するなど外交的圧力をかけている。同氏特有の圧力を用いたディール(取引)外交が功を奏して停戦に持ち込めるのか、それとも対立の火に油を注ぐことになるのかが注目される。
また、米国の外交・安全保障に対するスタンスは、既に起こっている戦争・武力衝突のみならず、北朝鮮や台湾、南シナ海情勢といった世界的な紛争リスクにも多大な影響を与えるだけに、その動向が注目される。
地政学リスクが鎮静化すれば、世界経済の下振れリスクが軽減されるため、日本株にとってはプラスに働く。ドル円への影響は限定的ながら、リスクオン(選好)の円売りに繋がる可能性がある。日本の長期金利には、リスクオンの債券売りが金利上昇圧力となる。ただし、中東やロシアといった産油国が関わるリスクが鎮静化する場合には、供給リスク緩和による原油安が金利低下圧力となることで、金利への影響が相殺される可能性が高い。
本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年12月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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