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2025年度の年金額の見通しは1.9%増で、年金財政の健全化に貢献 (前編)-年金額改定の仕組み

保険研究部 主席研究員・年金総合リサーチセンター 公的年金調査部長 兼任 中嶋 邦夫
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原則的な考え方は上記の通りであるが、年金財政健全化のための調整ルール(マクロ経済スライド)には特例(いわゆる名目下限措置)が設けられている。特例は、a:原則どおりに調整率を適用すると調整後の改定率がマイナスになる場合と、b:本来の改定率がマイナスの場合、に適用される(図表6左の特例aと特例b)。大雑把に言えば、特例aは物価や賃金の伸びが小さいとき、特例bは物価や賃金が下落しているときに適用される。
特例aの場合は、単純に調整すると調整後の改定率がマイナスになるので、名目の年金額が前年度を下回ることになる。これを避けるため、実際に適用される調整率の大きさ(絶対値)を本来の改定率と同じ大きさ(絶対値)にとどめて、調整後の改定率はゼロ%にされる。特例bの場合は、本来の改定率がマイナスなので、この場合も名目の年金額が前年度を下回ることになる。そこで、年金財政健全化のための調整を行わず、本来の改定率の分だけ年金額がマイナス改定される。
2017年度までは、これらの特例ルールに該当した場合に生じる未調整分は繰り越されていなかった。しかし、前述した本来の改定率と同様に多くの年度で特例に該当する状況だったため、2016年の法改正で見直された。2018年度から未調整分が翌年度へ繰り越され、2019年度以降で特例に該当しない年度、すなわち原則どおりに当年度の調整率を適用しても調整後の改定率がプラスになり、さらなる調整余地が残っている年度に、当年度の調整率と前年度からの繰越分を合わせて調整する仕組みになった(図表6右の繰越適用(原則)。厚生労働省の資料では「キャリーオーバー」と称される仕組み)。
なお、当年度分の調整率と前年度からの繰越分の合計を適用すると調整後の改定率がマイナスになる場合には特例aが適用される。当年度の調整率と前年度からの繰越分の合計のうち本来の改定率と同水準までを調整して調整後の改定率はゼロ%になり、未調整分は翌年度へ繰り越される(図表6右の繰越適用(特例a))。また、本来の改定率がマイナスの場合には特例bが適用され、当年度の調整率と前年度からの繰越分の合計が翌年度へ繰り越される(図表6右の繰越適用(特例b))。
2 ―― 仕組みを理解する意義:名目額が上がる場合こそ、注意が必要
後編では、これらの仕組みを踏まえて、現時点のデータに基づく粗い見通しと注目ポイントを考察する。
(2024年12月02日「基礎研レポート」)
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03-3512-1859
- 【職歴】
1995年 日本生命保険相互会社入社
2001年 日本経済研究センター(委託研究生)
2002年 ニッセイ基礎研究所(現在に至る)
(2007年 東洋大学大学院経済学研究科博士後期課程修了)
【社外委員等】
・厚生労働省 年金局 年金調査員 (2010~2011年度)
・参議院 厚生労働委員会調査室 客員調査員 (2011~2012年度)
・厚生労働省 ねんきん定期便・ねんきんネット・年金通帳等に関する検討会 委員 (2011年度)
・生命保険経営学会 編集委員 (2014年~)
・国家公務員共済組合連合会 資産運用委員会 委員 (2023年度~)
【加入団体等】
・生活経済学会、日本財政学会、ほか
・博士(経済学)
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