2024年10月31日

2024年7-9月期の実質GDP~前期比0.2%(年率0.8%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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● 7-9月期は年率0.8%のプラス成長を予測

2024年7-9月期の実質GDPは、前期比0.2%(前期比年率0.8%)と2四半期連続のプラス成長になったと推計される1

外需が前期比・寄与度0.2%(年率0.7%)と成長率を押し上げたが、所得税・住民税減税で可処分所得が押し上げられているにもかかわらず、物価高や地震臨時情報、台風に伴う経済活動停止の影響で民間消費が前期比0.2%の低い伸びにとどまったこと、設備投資が前期比▲0.3%と2四半期ぶりの減少となったことから、国内需要が前期比横ばいにとどまった。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が0.0%(うち民需0.0%、公需0.0%)、外需が0.2%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.6%(前期比年率2.4%)と2四半期連続の増加となり、実質の伸びを上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.4%(4-6月期:同1.0%)、前年比2.5%(4-6月期:同3.2%)と予測する。輸出入デフレーターはいずれも前期比でマイナスとなったが、国内需要デフレーターが前期比0.5%(4-6月期:同1.0%)と15四半期連続で上昇した。
 
なお、11/15に内閣府から2024年7-9月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2024年4-6月期の実質GDP成長率は外需の下方修正などから、前期比年率2.9%から同2.7%へ若干下方修正されると予想している。
 
2024年7-9月期は2四半期連続のプラス成長を確保したが、所得税・住民税減税が6月から実施されていることを考慮すると、消費を中心に期待はずれの低成長にとどまったとみられる。筆者は4-6月期のGDP1次速報公表後の8月中旬時点では、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率2.8%と予想していた。

現時点では、10-12月期の実質GDPは前期比年率1%程度のプラス成長を予想しているが、物価の高止まりなどを背景に、引き続き民間消費を中心に下振れリスクは高い。
 
1 10/31までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。

●主な需要項目の動向

● 主な需要項目の動向

・民間消費~物価高、地震臨時情報、台風の影響で低い伸びにとどまる~ 

民間消費は前期比0.2%と2四半期連続の増加を予測する。
消費関連指標の推移 6月から実施されている所得税・住民税減税で家計の可処分所得は押し上げられているが、物価高による下押し圧力の強い状態が続いていることに加え、南海トラフ地震臨時情報や台風の接近・上陸を受けた一部列車の運休、旅行のキャンセル、工場の操業停止等が消費の伸びを抑制した。

2024年7-9月期の消費関連指標を確認すると、自動車販売台数が前期比4.0%(4-6月期:同14.5%)、外食産業売上高が前期比1.9%(4-6月期:同1.9%)、延べ宿泊者数が前期比0.6%(4-6月期:同4.0%)と増加したが、小売業販売額指数が前期比▲0.3%(4-6月期:同0.4%)の減少となった(いずれもニッセイ基礎研究所による季節調整値、外食産業売上高、小売販売額指数は消費者物価指数で実質化)。
・住宅投資~住宅価格上昇の影響から弱い動きが続く~
新設住宅着工戸数の推移 住宅投資は前期比▲2.9%と2四半期ぶりの減少を予測する。

新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2024年1-3月期の78.6万戸から、4-6月期には81.9万戸へと持ち直したが、7-9月期は78.3万戸へと減少した。

住宅価格上昇の影響などから住宅投資は弱い動きが続いている。
・民間設備投資~2四半期ぶりの減少~

民間設備投資は前期比▲0.3%と2四半期ぶりの減少を予測する。

設備投資の一致指標である投資財出荷指数(除く輸送機械)は2024年4-6月期の前期比0.9%の後、7-9月期は同▲3.0%となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2024年4-6月期に前期比▲0.1%となった後、7、8月の平均は4-6月期を▲0.8%下回っている。
設備投資関連指標の推移/設備投資計画(全規模・全産業)
日銀短観2024年9月調査では、2024年度の設備投資計画(全規模・全産業、含むソフトウェア・研究開発投資額、除く土地投資額)が6月調査から▲0.5%下方修正され、前年度比10.1%となった。前年比で二桁の高い伸びは続いているが、2022、2023年度に比べると伸びは鈍化している。

設備投資は、高水準の企業収益を背景に基調としては底堅さを維持していると判断されるが、2024年7-9月期は生産活動の停滞を背景に2四半期ぶりに減少したとみられる。
・公的固定資本形成~2四半期ぶりの減少~
公共工事請負金額、出来高の推移 公的固定資本形成は前期比▲1.0%と2四半期ぶりの減少を予測する。

公共工事の先行指標である公共工事請負金額は2024年7-9月期に前年比2.2%と7四半期連続で増加したが、4-6月期の同8.8%から伸びが大きく低下した。一方、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2024年4-6月期に前年比3.0%と3四半期ぶりに増加した後、7、8月の平均は同3.5%となっている。
・外需~3四半期ぶりに成長率を押し上げ~
 
外需寄与度は前期比0.2%(前期比年率0.7%)と3四半期ぶりのプラスを予測する。財貨・サービスの輸出が前期比2.8%の増加となり、財貨・サービスの輸入の伸び(同2.0%)を上回ったことから、外需は成長率の押し上げ要因となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 2024年7-9月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比0.7%(4-6月期:同▲1.6%)、EU向けが前期比2.2%(4-6月期:同▲8.3%)、アジア向けが前期比▲1.1%(4-6月期:同0.4%)、うち中国向けが前期比▲4.9%(4-6月期:同▲3.8%)、全体では前期比▲0.1%(4-6月期:同0.3%)となった。

米国、EU向けは前期比でプラスとなったが、前期までの落ち込みの反動も含まれており、基調は強くない。また、景気低迷が続く中国向けは、2023年7-9月期から5四半期連続で減少し、2024年度入り後は減少ペースが加速している。
日本・月次GDP 予測結果
 
 

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(2024年10月31日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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