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ツーポイント・コンバージョンの選択-勝利の確率を高めるために、いま勝負に打って出るべきか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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◇ 8点ビハインドの場合は、勝負に打って出るべき
問題文にもあったように、エキストラキックは9割以上の高い確率で成功する。一方、ツーポイント・コンバージョンは、成功か失敗かは半々というところで、相対的に確実性が低い戦略とされる。
ただし、この問題の場合は、着実に1点をとるよりも、あえて勝負に出て2点を狙ったほうが勝利の確率が高くなる - アメリカンフットボールで8点ビハインドの場合は、勝負に打って出ることが、確率の面から合理的ということになる。
ただ実際には、この場合にもエキストラキックが選択されることが多いようだ。その理由として、確率のパズルの本では、8点ビハインドの状態でツーポイント・コンバージョンを選択して失敗すると、チームの士気が低下してしまう恐れがあること。マネージャーにとって、ツーポイント・コンバージョンを選択して負けると自分の責任になるが、エキストラキックを選択してオーバータイムで負けても敗因は選手に向かいやすいため、保守的な行動をとりがちであること、が挙げられている。
◇ 成功確率が4割弱でも、勝負に打って出るべき
問題文と同じ状態で、エキストラキックの成功確率はp、ツーポイント・コンバージョンの成功確率はrとおこう。両者は倍以上違う (p×1/2 > r) ものとしておく。
エキストラキックを選択する場合、勝利の確率は、
p×p×1/2 + (1-p)×r×1/2 = 1/2×(p2+r-pr) …(1)
ツーポイント・コンバージョンを選択する場合、勝利の確率は、
r×p + r×(1-p)×1/2 +(1-r)×r×1/2 = 1/2×(pr+2r-r2) …(2)
ツーポイント・コンバージョンを選択したほうが勝利の確率が高くなるのは、
(2)-(1) = -1/2 × { r2 - (2p+1)r + p2 }
がプラス、つまり{ }内がマイナスとなる場合だ。
これは、rについての2次方程式の解の公式から、r > 1/2×((2p+1) - (4p+1)0.5) となる。
p=0.95の場合、r > 0.35455… となる。エキストラキックの成功確率が95%の場合、ツーポイント・コンバージョンの成功確率が35.5%以上であれば、勝負に打って出るべき、という結果になる。
p=0.9の場合、r > 0.327619… となる。エキストラキックの成功確率が90%の場合、ツーポイント・コンバージョンの成功確率が32.8%以上であれば、勝負に打って出るべき、という結果になる。
8点ビハインドの場合、ツーポイント・コンバージョンの成功確率が5割どころか4割弱でも、勝負に打って出ることが確率の面から合理的ということになる。
◇ 確率の面からスポーツを見てみると面白いかも
ただし、確率を踏まえてとられた戦略を眺めてみると、マネージャーの考えがおぼろげに見えてくるということもあるかもしれない。
スポーツを観戦するときの楽しみ方として、確率を意識してみることも面白いと思われるが、いかがだろうか。
(参考文献)
“Mathematical Puzzles” Peter Winkler (CRC Press, 2021)
“Going for 2 down 8 points: Explaining NFL analytics strategy” Seth Walder (ESPN, Sep. 24, 2023)
https://www.espn.com/nfl/story/_/id/28100383/going-2-8-points-why-nfl-teams-keep-doing-why-analytics-backs-up
“When To Go For 2, For Real - Down 4, 8 or 11 in the fourth quarter? Go for it.”Benjamin Morris (FiveThirtyEight, Feb. 3, 2017)
https://fivethirtyeight.com/features/when-to-go-for-2-for-real/
「観るまえに読む 大修館スポーツルール2024」(大修館書店, 2024年)
「公式規則・公式規則解説書 2024-2025」(公益社団法人 日本アメリカンフットボール協会)
https://americanfootball.jp/wp-content/uploads/2024/07/a15cff4d81ed8f91f8d54c9b41f2c582.pdf
(2024年10月22日「研究員の眼」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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