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- TOPIX見直しは第二段階へ~概要公表後、新規採用候補銘柄の株価は上昇~
2024年08月16日
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1――はじめに
日本取引所グループ(JPX)は2024年6月19日に「TOPIX等の見直しの概要」1を公表した。これは、2022年4月から取り組んできたTOPIX見直しの第二段階である。8月18日まで意見を募集した後、9月末を目途に正式なルールが公表される予定である。
本稿では、まずここまでのTOPIX見直しスケジュールと概要をまとめる。次に、JPXの試算をもとに第二段階のTOPIX見直し案が実施された場合の指数全体の変化を確認する。最後に、第二段階の見直しで、最も影響を受けるであろうTOPIX定期入替が実施された場合の新規採用および除外候補銘柄について、第二段階の見直し公表以降の株価を確認した。
1 JPX総研『TOPIX等の見直しについて』、『TOPIX等の見直しの概要』
本稿では、まずここまでのTOPIX見直しスケジュールと概要をまとめる。次に、JPXの試算をもとに第二段階のTOPIX見直し案が実施された場合の指数全体の変化を確認する。最後に、第二段階の見直しで、最も影響を受けるであろうTOPIX定期入替が実施された場合の新規採用および除外候補銘柄について、第二段階の見直し公表以降の株価を確認した。
1 JPX総研『TOPIX等の見直しについて』、『TOPIX等の見直しの概要』
TOPIXは、もともと株価動向や日本の経済動向を示す指標として設定された。さらに近年では、インデックス投資が盛んになるなかで、市場代表性と合わせて投資対象としての機能性を兼ね備えた指数を求める声が高まっていた。
TOPIX見直しの第一段階では、2022年4月の市場再編に合わせて、まず市場区分と指数を切り離した。そのうえで、既存の構成銘柄のうち流通株式時価総額100億円未満の銘柄を「段階的ウエイト低減銘柄」とし、2022年10月最終営業日から四半期ごとに10段階で構成比率を低減することとした。2025年1月最終営業日に段階的ウエイト低減銘柄がTOPIXから完全に除外されると、TOPIX構成銘柄は2024年8月現在の約2,200銘柄から約1,700銘柄に削減される予定である。それをもって、TOPIX見直しの第一段階は終了する。
TOPIX見直しの第二段階では、対象市場をプライム・スタンダード・グロース市場に広げたうえで、年1回の定期入替を実施する予定である。定期入替の銘柄は、年間売買代金回転率、および浮動株時価総額の累積比率という2つの流動性基準を用いて選定する。8月の指数コンサルテーションの結果を受けて、2024年9月末頃に公式ルールが公表される(図表2)。
TOPIX見直しの第一段階では、2022年4月の市場再編に合わせて、まず市場区分と指数を切り離した。そのうえで、既存の構成銘柄のうち流通株式時価総額100億円未満の銘柄を「段階的ウエイト低減銘柄」とし、2022年10月最終営業日から四半期ごとに10段階で構成比率を低減することとした。2025年1月最終営業日に段階的ウエイト低減銘柄がTOPIXから完全に除外されると、TOPIX構成銘柄は2024年8月現在の約2,200銘柄から約1,700銘柄に削減される予定である。それをもって、TOPIX見直しの第一段階は終了する。
TOPIX見直しの第二段階では、対象市場をプライム・スタンダード・グロース市場に広げたうえで、年1回の定期入替を実施する予定である。定期入替の銘柄は、年間売買代金回転率、および浮動株時価総額の累積比率という2つの流動性基準を用いて選定する。8月の指数コンサルテーションの結果を受けて、2024年9月末頃に公式ルールが公表される(図表2)。
3――構成銘柄数は約500銘柄削減、その他の特性は変わらず
JPXは、今回の第二段階のTOPIX見直しについて、指数の連続性を確保しつつ、広範な網羅性や投資対象としての機能性を向上させることを目的としている。JPXが行った事前の試算では、次期TOPIX(第二段階)の構成銘柄数は、第一段階の見直し終了後TOPIXの約1,700銘柄から約1,200銘柄へと、さらに約500銘柄減少する。ただし、次期TOPIXの浮動株時価総額の合計および市場カバー率、業種、規模、ファンダメンタルズ特性は、第一段階の見直し終了後TOPIXをほぼ維持する。そのうえで、流動性の低い小型株が除外されることで、構成銘柄の浮動株時価総額、1日あたり売買代金は、現行TOPIXの約2倍に増加すると試算している。
2022年4月に実施された市場再編前のTOPIXは、東証第一部に上場した企業が自動的にTOPIXの構成銘柄に採用された。その結果、2010年には約1700銘柄だったTOPIX構成銘柄数は、10年後の2020年には約2,200銘柄へと約500銘柄増えた。各年8月末時点(2024年は6月末時点)のTOPIX構成銘柄の時価総額累積比率を確認すると、銘柄数は増えているものの、期間を通して時価総額上位1,000銘柄でTOPIXウエイトの95%以上を占めている(図表3)。構成銘柄数は増えたものの、中身は時価総額が小さく、流動性が低い銘柄が増えたということが分かる。
2022年4月に実施された市場再編前のTOPIXは、東証第一部に上場した企業が自動的にTOPIXの構成銘柄に採用された。その結果、2010年には約1700銘柄だったTOPIX構成銘柄数は、10年後の2020年には約2,200銘柄へと約500銘柄増えた。各年8月末時点(2024年は6月末時点)のTOPIX構成銘柄の時価総額累積比率を確認すると、銘柄数は増えているものの、期間を通して時価総額上位1,000銘柄でTOPIXウエイトの95%以上を占めている(図表3)。構成銘柄数は増えたものの、中身は時価総額が小さく、流動性が低い銘柄が増えたということが分かる。
第二段階のTOPIX見直しでは、構成銘柄の選定基準に年間売買代金回転率と浮動株時価総額の累積比率を採用することで、次期TOPIX構成銘柄は約1,000~1,200銘柄で推移することが見込まれる。現在、時価総額上位500銘柄でTOPIXウエイトの約90%を占めていることを考えると、第二段階の削減でも十分かという点は見方が分かれるところである。しかし、これまでのように構成銘柄数が増え続ける状況に歯止めがかかること自体は評価できる。
(2024年08月16日「基礎研レポート」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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