2024年08月15日

グローバル株式市場動向(2024年7月)-半導体関連銘柄は反落

金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志

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1――半導体関連銘柄は反落

2024年7月、グローバル株式市場は月間では上昇となったものの、米政府による対中半導体規制などにより月後半は軟調な展開となった。代表的な世界株指数(含む新興国)であるMSCI All Country World Index (MSCI ACWI)の騰落率1は2024年7月 +1.5%、過去1年(2023年8月-2024年7月)では+15.1%となっている(図表1)。

先進国と新興国を比べると、先進国が上昇した一方で新興国は小幅に下落した。先進国(MSCI  World Index)が+1.7%、新興国(MSCI Emerging Markets Index)が▲0.1%となった(図表2)。
図表1 世界株指数の推移/図表2 先進国・新興国指数の推移
グロース・バリューでは、グロース指数(MSCI ACWI Growth Index)が▲0.9%、バリュー指数(MSCI ACWI Value Index)が+4.2%とバリュー優位となった(図表3)。企業規模別では、大型株(MSCI ACWI Large Cap Index)が+1.1%、中型株(MSCI ACWI Mid Cap Index)が+4.0%、小型株(MSCI ACWI Small Cap Index)が+5.7%と中小型株優位となった(図表4)。
図表3 グロース・バリュー指数の推移/図表4 企業規模別指数の推移
 
1 以下、特に断りのない限り騰落率は米ドル建、配当を除いた指数値の変化率を示す。

2――国・業種別の動向

2――国・業種別の動向

国別に見ても多くの国が上昇した(図表5)。アイルランド(+10.3%)、ギリシャ(+6.9%)、ベルギー(+6.8%)の騰落率が高かった。一方で、オランダ(▲5.1%)、台湾(▲4.8%)、デンマーク(▲4.3%) の騰落率が低かった。主要国について見ると、米国(+1.2%)、中国(▲2.2%)、ドイツ(+1.8%) 、日本(+5.7%)となった。

米国は上旬は利下げによる景気のソフトランディングへの期待から上昇したが、その後は対中半導体規制強化やテック企業の決算内容の不調などから下落に転じた。ドイツはフランスの議会選挙で台頭していた極右勢力が失速し、欧州での政治不安が後退したことで上昇した。

日本は円高が進行したことによる企業業績の低下見通しから円建てでは下落したが、ドル建てでは上昇となった。中国は中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第3回総会(3中総会)で公表された内容について投資家は目新しい内容に乏しいと反応したことで下落した。

アイルランドでは同国のハリス首相が英国のスターマー首相と会談、英国のEU離脱に関連して北アイルランドでの貿易ルールを巡り悪化していた両国の関係の改善を表明したことから株式市場は上昇した2

オランダでは米国が対中半導体規制を厳格化するとの報道を受けてASMLなど同国の半導体関連銘柄が下落したことから株式市場は下落した。
図表5 各国の株式市場の騰落率
業種別に見ると、 その他金融(+5.6%)、保険(+4.8%)、銀行(+4.8%)がリターンが高かった。一方で、 半導体・半導体製造装置(▲5.5%)、メディア(▲4.2%)、ソフトウェア・サービス(▲2.6%) がリターンが低かった(図表6)。

米国による対中半導体規制の強化の影響は大きく、上昇が続いていた半導体・半導体製造装置セクターは反落に転じた。
図表6 グローバル株式市場の業種別騰落率
 
2 ロイター通信、「スターマー英首相、アイルランド首相と会談 関係再構築を表明」、2024年7月18日

3――世界の主要企業の株価動向

3――世界の主要企業の株価動向

世界の主要な企業の株価は半導体、IT関連などで下落した銘柄が多かった (図表7)。時価総額上位30位の企業では、テスラ(+17.3%)、ユナイテッド・ヘルス・グループ(+13.1%)、アッヴィ (+9.0%)のリターンが高かった。一方で、イーライリリー(▲11.2%)、 ASMLホールディング(▲10.9%)、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン (▲7.7%) のリターンが低かった。テスラは同社の第2四半期の自動車販売台数が予想を上回ったことが好感された。一方で、イーライリリーは将来的な売上拡大に見込まれる同社の肥満症薬について競合企業が開発の進展を報じたことから株価は下落した。
図表7 世界の主要企業の株価動向

4――今後の見通しと注目されるテーマ

4――今後の見通しと注目されるテーマ

グローバル株式市場は上昇が続いたが、半導体関連銘柄の下落など懸念される点も見られる。7月16日、IMFは世界経済見通しの改訂版を公表した3。この中で、世界経済の成長率について2024年を3.2%、2025年を3.3%と予測した。前回4月時点の予測から2024年の見通しは変わらず、2025年については0.1ポイント上方修正した。IMFは世界経済は足踏み状態にあると指摘している。

米国など先進国ではサービス価格の上昇がインフレ率の低下を妨げており、それが金融政策の正常化を複雑にしているとしている。今後のリスク要因としては、貿易摩擦や地政学的緊張の再燃によるインフレ率の上振れが挙げられている。インフレ率の上振れは、高金利がより長く続くことにつながり財政・金融リスクが懸念される。主要国の金融政策の動向が注目される中、グローバル株式市場の動向に引き続き注視したい。
 
3 国際通貨基金、「世界経済見通し改訂版 足踏み状態の世界経済」、2024年7月16日
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年08月15日「基礎研レター」)

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金融研究部   准主任研究員・ESG推進室兼任

原田 哲志 (はらだ さとし)

研究・専門分野
資産運用、ESG

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
         大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
    2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)

    【加入団体等】
     ・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
     ・修士(工学)

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