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線状降水帯の予測と対応-線状降水帯からいかに避難するか?
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
◇ 線状降水帯の「的中」、「空振り」、「見逃し」の割合
線状降水帯の呼びかけを行って実際に線状降水帯が発生した、つまり予測が「的中」したケースは、2022年に13回中3回(23%)だったが、2023年は22回中9回(41%)と、割合が上昇している。
一方、線状降水帯の呼びかけを行ったが実際は線状降水帯が発生しなかった「空振り」のケースは、2022年に13回中10回(77%)だったが、2023年は22回中13回(59%)と、割合が下がっている。
さらに、線状降水帯の呼びかけをできずに実際は線状降水帯が発生した「見逃し」のケースは、2022年に11回中8回(73%)だったが、2023年は23回中14回(61%)と、割合が低下している。
最新のセンサーの活用など観測の強化と、スパコン投入など予測強化の取り組みが、的中割合の上昇や、見逃し割合の低下という形で着実に表れていると言えるだろう。
◇ 明るいうちから早めに避難することが重要
線状降水帯は地震とは異なり、災害が発生する前にある程度予測することが可能とされている。この予測を生かして、大雨の危険性の呼びかけには「明るいうちから早めに避難する」ことが大切となる。
もし、避難をしていないまま「顕著な大雨に関する気象情報」が発表されたら、自ら生命を守るために、「迫りくる危険から直ちに避難する」ことが重要だ。そのためには、日ごろからハザードマップ等を見て避難場所や避難経路を確認しておくことが必要となるだろう。
◇ 地球温暖化の進行で甚大化する大雨被害
それによると、「日本域を対象に高解像度かつ多数の気候予測シミュレーションを行い、地球温暖化が進行すると、線状降水帯をはじめとする暖候期の極端な大雨がさらに増加する可能性が高いことを明らかにしました」とのことだ。
毎年のように発生する線状降水帯による大雨の被害は、どうやら地球温暖化と関係しているようだ。頻繁な大雨により、被害が甚大化する可能性もある。
近年は、梅雨が明けた後も、夏から秋にかけては線状降水帯が発生しやすい。この時期、地球温暖化の影響も踏まえたうえで、線状降水帯への危険意識を高めておくことが必要だ。
【参考資料】
「気象と気象用語」(松山地方気象台, 2023年6月)
「気候変動による大雨・線状降水帯 - 2021年度第21回気象教室 (10月17日) 開催報告」(日本気象協会 九州支部だより №136, 2021年11月)
「図解・気象学入門 改訂版 - 原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図」古川武彦・大木勇人著(ブルーバックス B-2235, 講談社, 2023年)
「線状降水帯予測精度向上ワーキンググループ資料」(第5回/令和4年12月27日、第7回/令和5年12月19日、第8回/令和6年6月13日ほか、気象庁)
「地球温暖化がさらに進行した場合、線状降水帯を含む極端降水は 増加することが想定されます」(気象研究所、一般財団法人気象業務支援センター、海洋研究開発機構、京都大学、北海道大学、寒地土木研究所/令和5年9月19日報道発表)
(2024年08月06日「研究員の眼」)
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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