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最低賃金政策の方向性-国内外の潮流、ポリシーミックスの重要性

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
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毎年7月頃、厚生労働相の諮問機関である中央最低賃金審議会から「域別最低賃金額」の目安額が公表される。同審議会は、公労使各同数の委員から構成される審議体であり、地域における労働者の生計費、賃金動向、事業者の賃金支払い能力の3点を考慮し、最低賃金を定めることが法律に規定されている。同審議会で提示された目安額は、地域の実情を反映させる都道府県最低賃金審議会の審議・答申を経て、最終的な改定額が8月頃に決定し、その年の9月末から10月末頃にかけて適用される。
政府は、6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2024~賃上げと投資がけん引する成長型経済の実現~」(骨太方針2024)の中で、最低賃金を『2030年代半ばまでに全国加重平均を1,500円となることを目指すとした目標について、より早く達成ができるよう、労働生産性の引上げに向けて、自動化・省力化投資の支援、事業承継やM&Aの環境整備に取り組む』との方針を掲げている。
今年度は、物価や春闘の結果を踏まえて、過去最大となった昨年を上回る引き上げ幅となる可能性が高い。さらに来年以降は、最低賃金の積極的な引き上げを目指す政府方針に加えて、深刻化する人手不足や物価上昇に伴う経済構造の変化、持続可能性を重視する社会意識の変化といった要素が、最低賃金の押上げに作用する。ただ、最低賃金の引き上げから恩恵を受ける労働者は増える一方、企業の負担増は年々大きくなっている。
本稿では、日本における最低賃金の現状と、今後の引き上げを左右する経済社会の情勢変化について概観し、国や自治体、企業が最低賃金の引き上げにどのように臨むべきか考察する。
■目次
1――はじめに
2――日本における最低賃金の現状~最低賃金は改善も、国際的にはまだ低い~
3――最低賃金を巡る経済社会の情勢変化~基調的な変化は、最低賃金の引き上げに作用~
1|人手不足の深刻化~国際的な人材獲得競争の激化~
2|ノルムの変化~持続的な賃金上昇の定着~
3|人権擁護の高まり~SDGsの視点からの生活賃金を重視~
4――次年度以降の見通し~東北・九州、中小企業への影響を注視~
1|最低賃金引き上げの方向性
2|企業への影響
5――おわりに~ポリシーミックス、スピード感を合わせることが必要~
(2024年07月23日「基礎研レポート」)
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03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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