2024年07月23日

コロナ禍後のインバウンド需要~地方での回復の遅れと旅行単価の増加は続くのか~

経済研究部 研究員 安田 拓斗

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■要旨
 
  • インバウンド需要は回復している。宿泊旅行統計で2023年の外国人延べ宿泊者数を国籍・地域別に見ると、米国や韓国からの宿泊者数が大きく回復しているが、不動産不況の悪影響などによって中国からの宿泊者数の回復は大きく遅れている。
     
  • 都道府県別には、コロナ禍前に中国人宿泊者への依存度が大きかった都道府県は回復が遅れている。一方、東京都はコロナ禍前を大きく上回り、全体を押し上げている。
     
  • 旅行単価が大きく増加したため、外国人旅行消費額は急回復している。1人当たり宿泊日数の増加とホテル価格などの高騰が旅行単価の押し上げ要因となった。加えて、物価上昇によって飲食費や交通費なども増加している。
     
  • 引き続き中国人旅行者数は回復を続ける公算が大きい。2023年の中国人旅行者は高収入、親族・知人訪問、留学、ビジネス目的という特徴があった。今後、観光・レジャー目的の中間層が回復すれば、回復が遅れている都道府県でも外国人延べ宿泊者数の回復は加速するだろう。ただし、中国国内の消費は弱い動きとなっており、海外旅行需要も弱い動きが継続するリスクもある。
     
  • コロナ禍前に比べて円安が継続していることが追い風となり、引き続きインバウンド需要は好調を維持することが予想される。インバウンド需要の好調を長期的なものにするために、人手不足への対応など受け入れ準備を進める必要がある。旅行業は日本経済に欠かせない存在になりつつある。旅行業の更なる発展を期待している。


■目次

1――はじめに
2――外国人延べ宿泊者数の回復状況
  1|外国人延べ宿泊者数はコロナ禍前の水準を回復
  2|中国人延べ宿泊者数の回復の遅れ
  3|東京都の大幅回復が全体を押し上げている
3――外国人旅行消費額の状況
  1|単価増加で外国人旅行消費額は急回復
  2|宿泊日数増加が旅行単価の押し上げ要因
4――鍵を握る中国人旅行者の今後の動向
  1|中国人旅行者数の回復がインバウンド需要を押し上げる見込み
  2|2023年の中国人旅行者の特徴:(1)高収入
  3|2023年の中国人旅行者の特徴:(2)親族・知人訪問、留学、ビジネス目的
5――おわりに

(2024年07月23日「基礎研レポート」)

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経済研究部   研究員

安田 拓斗 (やすだ たくと)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2021年4月  日本生命保険相互会社入社
     2021年11月 ニッセイ基礎研究所へ

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