2024年06月19日

日銀短観(6月調査)予測~大企業製造業の業況判断DIは2ポイント上昇の13と予想、物価関連項目に注目

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 6月短観では、注目度の高い大企業製造業で、小幅ながら、景況感の持ち直しが示されそうだ。製造業・非製造業ともに円安に伴う原材料価格上昇が景況感の重石となるが、製造業ではダイハツの認証不正問題で停止していた自動車生産・出荷の再開や半導体市場の回復が追い風となる。一方、大企業非製造業では、長引く物価高による消費マインドの停滞もあり、景況感が若干弱含むと予想している。
     
  2. 先行きの景況感はバラツキが生じると予想。円安に伴う原材料高への懸念が幅広く景況感の重石となる中、製造業では自動車の挽回生産期待等を支えに緩やかな持ち直しが示される。非製造業でも大企業では定額減税や賃上げ効果への期待からやや改善すると見るが、中小企業は先行きを慎重に見る傾向が強いだけに、先行きにかけて悪化が示されると予想。
     
  3. 23年度の設備投資計画(全規模)は、人手不足による工事の遅れや資材価格高騰を受けて先送りになった分が大きいと推測されることから、例年よりもやや大きめの下方修正が入ると予想。一方、24年度計画は大幅に上方修正されると見込む。例年6月調査では投資額が上乗せされる傾向が強いうえ、今回は前年度からの繰り越しも大きめになる。ただし、実態としても、投資余力の改善に加え、脱炭素・DX・省力化・サプライチェーンの再構築等に伴う投資需要を背景とした強めの投資計画が示されると見込んでいる。
     
  4. 今回の短観で特に注目されるのは物価関連項目だ。価格設定に影響を与える「販売価格判断DI」や「企業の物価見通し」が高止まりしたり上振れたりするか?、賃上げを通じて物価に影響する「雇用人員判断DI」が人手不足の深刻化を示し、賃上げ原資となる「収益計画」が堅調となるか?などがポイントになる。「賃金と物価の好循環に伴う基調的な物価上昇率の高まり」に対する日銀の自信に繋がる内容になるかが、利上げを占う材料となる。
(図表1)日銀短観業況判断DIの予測表
■目次

6月短観予測:景況感は小動きに、インフレ関連項目に注目
  ・非製造業の景況感は堅調維持
  ・設備投資計画は総じて強めの内容に
  ・注目ポイント:物価関連項目
  ・利上げ判断を後押しも、目先はハードル高い

(2024年06月19日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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