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- ECB政策理事会-今回は据え置き、次回は文字通りデータ次第か
2024年07月19日
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(金融・通貨環境)
(結論)
(質疑応答(趣旨))
- 6月の政策金利引き下げが短期市場金利に円滑に波及する一方、広範な資金調達環境はやや変動が大きくなっている
- 資金調達費用は、我々の過去の政策金利引き上げが伝達経路に波及を続けているため、引き続き制限的である
- 資金借入の平均金利は企業向けで5月に5.1%に低下、住宅ローンは引き続き3.8%だった
- 借入への信用基準は引き続き厳格化している
- 最新の銀行貸出動向調査では、企業向け貸出金純は4-6月期にやや厳格化する一方、住宅ローン向けはやや緩和した
- 企業の借入需要はやや低下する一方、家計の住宅ローン需要は22年初以来の伸び率となった
- 総じて、信用動向は引き続き弱い
- 企業や家計への銀行貸出は5月に前年比0.3%に成長し、前月からわずかに上昇した
- M3で計測される広義通貨は5月に1.6%となり、4月の1.3%から上昇した
(結論)
- (声明文冒頭に記載の決定に再言及)
(質疑応答(趣旨))
- 域内物価圧力がまだ高いと言及されたが、賃金、利益、生産性に関する議論で最大の懸念は何か、9月に追加利下げするためにはどのようなデータを得る必要があるのか
- 域内インフレは高く、私がWPPと呼ぶ賃金(wage)、利益(profit)、生産性(productivity)に大きく左右されると考えている
- 名目賃金は購買力低下を補うために今年、大幅に上昇している
- 多くの調査や企業電話調査、特にSAFE調査の公表によれば、賃金上昇傾向は25年に大幅に低下し、26年にはさらに低下することが示唆されている
- 生産性は23年10-12月期には▲1%、現在も▲0.6%と低水準で回復も限られている
- 我々は需要の回復に伴う消費の増加により、保持されていた雇用者が財生産やサービス部門の需要に反応する形で生産性が上昇することを期待している
- 6月にはやや改善しており、さらに需要が回復することを期待したい
- 利益は23年末と比較して反転し、単位利益がマイナスに転じた
- つまり、物価へのキャッチアップとその他の要因による人件費上昇を追加的に吸収した
- 私は、データに依存するが、それは特定データ(data point)に依存することを意味しない
- 域内インフレは高く、私がWPPと呼ぶ賃金(wage)、利益(profit)、生産性(productivity)に大きく左右されると考えている
- 財政政策について。ユーロ圏の一部の国が大幅な財政赤字で財政健全化が遅れていることは、2%への回帰を難しくし、場合によっては金融安定における問題になると懸念しているか
- 我々は、財政ガバナンス枠組みの一連の規則を支持、合意したすべての加盟国が、これらの規則と原則を実際に適用することを強く支持する
- 9月の潜在的な金利変更について。すべてが現状通りで、見通し通りの指標となった場合、9月には利下げがなされるのか
- 本日の決定は全会一致であり、決定はデータ依存で、会合毎に、事前の金利経路の確約なく、行われるというものだった
- 9月の決定は開かれており(open)、今後発表されるすべてのデータに基づいて決定される
- 現在、米国から聞かれる高関税とさらなる貿易摩擦の可能性について。インフレ再燃という効果の観点からも理事会で議論されているのか
- 分断化(segmentation)、断片化(fragmentation)から生じるリスクに関しては理事会内部でも議論する予定である
- 明らかに関税が維持されるか引き上げられるかは重要である
- 輸出は回復の主要な原動力の一部であるため特に重要と言える
- 将来、誰がどのような政治的決定を行うにせよ、注視する領域である
- 今回の決定は全会一致とのことだが、将来の利下げやその利点について誰か議論したか
- 理事会では1日目に多くの討論、議論を行い、意見を出し、2日目にチーフエコノミストのレーン理事が政策提案をする
- 今回は、全員がレーン理事の提案を支持した
- これは3つの主要金利の据え置き、会合毎のデータ依存性、事前の金利経路の確約がないことが含まれる
- 25年後半のインフレ目標達成について、6週間前よりも自信は増しているか、少なくなっているか
- 我々は今後の数週間から数か月、追加の(特定データではなく)データを様々な角度、形から詳細に分析する段階にあると考える
- より多くのデータが、もし実際に、現在進んでいるディスインフレ過程を裏付けるものであれば、我々の自信はさらに強まるだろう
- 本日、フォンデアライエン氏が新しい5年の責務に選出された。パリでは政治的に大きな切が立ち込めており、比喩を用いればシンクロナイズドスイミングで見られるような動きとは程遠い。この点に照らして、フォンデアライエン氏の選出についてコメントをもらえるか
- フォンデアライ委員長の今朝の声明は、我々は議論の最中のことであるのでコメントするつもりはない
- 現時点では、大差で再選されたことに祝意を示したい
- もちろん、欧州レベルでの提案は、非常に注視していく
- 耳にしたかもしれないが、最近の調査におけるECBスタッフの約40%が燃え尽き症候群に苦しんでいるという事実が、金融政策の過程全体、過去2日の会合だけでなく、それまでの過程も含めた過程を妨害していると感じるか
- 80から90%とは言わないが、職員の大多数がECBで働くこと、欧州の同胞の利益のために働くという使命に高いモチベーションを有している
- 彼らの多くが非常に多くの仕事をしていることに留意する必要があり、もちろん多くのプログラムを用意している
- またそのような仕組みを強化してきた
- 例えば、ECB総裁に就任して以降、内部告発制度を導入し、今年初めにメディエーターを採用し、リーダーシップやモチベーションを高めるだけでなく励ますことの重要性を理解するためのワークショップを数多く開催したい
- 今後も、こうした取り組みを続けるつもりだ
- 仮に賃金上昇が予想通りに減速しない場合、ECBはどの程度の経済減速、需要鈍化が必要だと考えるか
- 各国中央銀行が公表している数字を信じるならは、25年と26年の前半には2%目標に完全に合致する数字に戻ると見ている
- 我々の前提に対する多くの証拠や、モデル主導と経験則の双方による将来への多くの理解があるため、すべて完全に間違っているという仮定は受け入れられない
- もし間違っていたら、通常すべきことをするつもりだ
- 速やかに2%目標に戻るために、データに基づいて再評価し、決断を下し、制限的な行動を続け、必要があればさらに制限を強める
- トランプ氏が11月の大統領選挙前の世論調査で優勢だが、もし彼が勝利した場合、欧州のインフレ率と成長率にはどのような影響があるか
- 政治的な展開について推測はしない
- もちろん、その結果としての、例えば、関税引き上げや、ユーロ圏外における貿易や金融で強く結びついている国の政策については考慮する必要がある
- 明らかに、特に米国の金融市場の大きさを考慮すれば、米国の展開がEUやユーロ圏にどのような結果をもたらすかについて注意深く評価されるだろう
- 域内インフレ圧力は依然として強く、サービスインフレは高く、ヘッドラインインフレ率は来年にかけて目標を上回る状況が続くと見られるとの文章について。新しくはないが、なぜ利下げを見送ったかはよくわかる。金利の確約経路なしに将来を見た場合、この文のどこに利下げのヒントを見出すべきか。利下げの軌道に乗っていると安心させるためには何を変えるべきか
- 私たちがディスインフレの過程にあり、正しい方向を向いている確信し、自信を強めるためには今後数週間か数か月の間に入手できるすべてのデータ、指標を見る必要がある
- ユーロ圏の銀行貸出調査について、信用は弱すぎるのか、もう少し詳しく教えて欲しい。制限的な領域にあるので、資金調達環境の正常化が弱すぎるのか。私にはしばらくの間、制限的な領域にとどまり続けるように感じられる
- 企業と家計で少し違いがある
- 企業では金利が下がったが、信用需要は極めて低い
- 住宅ローンの金利に変化はないが、住宅ローン需要には増加が見られる
- 企業側については、投資動向と関連し将来の回復につながるためより詳しく見ていきたい
- 前回の記者会見で、あなたは利下げ過程(dialling back process)にいる可能性が高いと述べた。今、この可能性は強くなっているか
- 我々はディスインフレ軌道に乗っている一方、同時に域内インフレ圧力は引き続き強く、賃金、利益、生産性の相互関係はその経路に不確実性を生み出している
- 「一方では、他方では、」という状況のため、今回の会合では何も決定せず、今後の会合ではデータを観察、分析して我々が軌道に乗っているのかの確信を強めることができるかを決定する
- スペイン中銀の新総裁が不在の現状についての見解を知りたい。任命されないまま9月を迎えると見ているか
- (デギンドス副総裁)本日は、スペイン中銀を代表してデルガド副総裁が出席した
- 彼女はよい代表であり、自分の主張を述べ、ラガルド総裁が言及した全会一致の決定の一部となった
- スペイン中銀総裁の選出はスペイン政府に権限がある
- スペイン政府は次回の会合までにだkれかを任命すると明言している
- 次回の会合までに新しいスペイン中銀総裁が任命されることを希望しているが、政府の建言である
- 成長について。これが理事会にとってより大きな課題になっているなら、あなたのプロセスにも影響を及ぼすように思われる
- 成長は明らかに我々が注意深く見ているものであり、我々は回復を観察している
- 「好循環」と呼んでいる、サービス業の雇用の多さとサービス消費により支えられているサービス業が主導する回復と言える
- また、将来の見通しを持つために役立つのは投資水準で、我々は注意深く見ており、依然として弱く、厳しい資金調達環境や企業が経験する不確実性がその要因と言える
- 我々の回復がどこからきているのかを注意深く観察し続けるつもりである
- 今は夏で、読書の季節である。次のラウンドで何をすべきか、次に再検討する可能性の高い分野についての考えを新たにするために、あなたの読書リストには2021年の戦略見直しが含まれているのか
- 戦略見直しをするのではなく、戦略見直しの評価を行う
- まもなく開始され、25年後半には結果が出る見込みである
- インフレ目標は議論されず、ドットプロットも議論対象外である
- インフレ率はEU諸国で大きく異なる。例えばフィンランドやイタリアでは1%を割っている。そして実際には利下げが必要である。ECB理事会にとって一部の国のインフレ率が高すぎること、そして成長のためには利下げが必要であることはどれほど大きな問題なのか
- それがユーロ圏の魅力である
- 我々はユーロ圏全体のために決定を行っており、国家や加盟国に基づいた特定の意思決定をできないことを把握している。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年07月19日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1818
経歴
- 【職歴】
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
・SBIR(Small Business Innovation Research)制度に係る内閣府スタートアップ
アドバイザー(2024年4月~)
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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