2024年07月16日

IPCC第7次評価サイクルの注目点-PM2.5や対流圏オゾンが引き起こす気候変動に注目が集まる!?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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3|特別報告書の提案トピック:ティッピングポイントに関するものが最も多かった
特別報告書のテーマについては、ほとんどすべての国が追加することを支持した。提案項目としては、ティッピングポイントに関するものが最も多かった。

気候変動においては、一般に複数の事象の間に、連鎖的、循環増幅的、非線形的な波及が生じる。その原因の1つとして、ティッピングポイントが挙げられる。ティッピングポイントに達すると、突然の変化が起こったり、不可逆的な変化6があらわれたりするとされる。1.5度上昇の到達が見通される中で、気温上昇が続いた場合のティッピングポイントへの注目度が高まっているものとみられる。
図表4. 特別報告書として提案された項目
 
6 第6次評価報告書は、気候変動の「不可逆的な変化」について説明している。それによると、ある状態からの自然なプロセスによる回復が、対象となる時間軸に比べて大幅に長くかかる場合、「特定の時間軸で、不可逆的である」とされる。不可逆的な変化には、回復までに何千年もの時間を要するものもある。また、ある生物種が絶滅することにより、生態系が変化してしまい、元と同じ姿に完全に回復することはない、といった事象も含まれる。

5――おわりに (私見)

5――おわりに (私見)

本稿では、IPCCのこれまでの活動を踏まえて、第7次評価サイクルの体制やスケジュールを概観した。加盟国に対する提案の調査では、炭素除去回収・貯留技術等への関心が増すとともに、ティッピングポイントへの注目が高まっている様子がうかがえる。

今後、第7次評価サイクルでの調査や研究が進み、各種の報告書が公表されるものと考えられる。その動向を引き続き、注視していくこととしたい。

(参考資料)
 
“About History of the IPCC”(IPCC HP) https://www.ipcc.ch/about/history/
 
「IPCCとは」(気象庁HP) https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/index.html
 
“Planning for the seventh assessment cycle - Synthesis of IPCC Member Countries’ Views on the Products for the seventh assessment cycle”(IPCC-LX/INF. 6, Rev.11.I.2024)
 
“Sixtieth session of the IPCC - Decisions adopted by the Panel”(IPCC)
 
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)等に関する国際動向」(文部科学省研究開発局, 令和6年2月9日)
 
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第59回総会の結果について」(環境省, 2023年7月31日)
https://www.env.go.jp/press/press_01972.html
 
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第60回総会の結果について」(環境省, 2024年1月22日)
https://www.env.go.jp/press/press_02665.html
 
気候変動-温暖化の情報提示 ~ 気候変動問題の科学の専門家は “ドラマが少ない方向に誤る?”」篠原拓也(ニッセイ基礎研究所, 基礎研レター, 2024年4月23日)

(2024年07月16日「基礎研レター」)

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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

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