2024年06月21日

再び1ドル160円に接近、円安圧力のしぶとさは?~マーケット・カルテ7月号

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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為替・金利 3ヶ月後の見通し 月初1ドル157円台前半でスタートしたドル円はやや円安ドル高となり、足元では159円付近と約2カ月ぶりの円安水準にある。この間、CPIをはじめ予想を下回る米経済指標を受けてドル安に振れる場面もあったものの、長続きしなかった。予想を上回る米雇用統計やタカ派的なドットチャート(FOMC参加者の政策金利見通し)、FRB要人から相次ぐ利下げに対する慎重な発言などがドル高圧力になったためだ。また、中旬のMPMにおいて日銀は長期国債買入れの減額方針を決定したが、具体策の決定を次回MPMへ先送りしたことがむしろ「正常化に慎重」と捉えられ、円安を促した。

今後も根強いインフレ圧力への警戒感から、FRBは利下げに慎重な姿勢を維持し続けると見込まれる。日銀は次回7月のMPMで国債買入れ減額の具体策を決めて速やかに開始するものの、金利の急騰を招くような大幅な減額は避けるとみられ、円売りの主因となっている「日米金利差は大きく開いたまま」という状況を大きく変えるには至らない。今後も政府による円買い介入及び介入への警戒感がドルの上値を抑えるものの、当面ドルの高止まりが予想される。政府の出方次第ではあるが、一時的に160円を再び突破する展開も視野に入る。

一方、秋に入ると、刻々と迫る米大統領選を巡る不透明感や日銀による利上げ観測の高まりから多少円高に振れると想定している。ただし、FRBの段階的な利下げ開始が現実味を帯びるまでは大幅な円安修正は見込めず、3か月後の水準は155円台と見ている。

長期金利は月初1.0%台半ばでスタートした後、米CPIの予想比下振れや日銀による国債買入れ減額を巡る具体策の決定先送りを受けてやや低下し、足元では0.9%台後半で推移している。

日銀は7月MPM後に国債買入れの減額を開始するほか、利上げ観測も燻り続けるとみられるため、長期金利の上昇圧力は今後高まると考えられる。ただし、日銀は買入れ減額にあたって、国内景気を減速させるような長期金利の急上昇を招かないように配慮する可能性が高い。また、今後の国債買入れ方針が明らかになることで、不透明感を理由に手控えていた国債投資を再開する投資家も出てくるだろう。従って、3ヵ月後の水準は現状比でやや高い1.1%前後と予想している(ユーロ円に関する記述は割愛)。
 
(執筆時点:2024/6/21)

(2024年06月21日「基礎研マンスリー」)

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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