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- 定年後の女性の働き方~よりポジティブな選択の機会へ
2024年06月11日
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1――はじめに
中高年女性の中には、勤め先を定年退職した後も、働き続けることを望む女性は多い。定年後研究所とニッセイ基礎研究所が昨年10月に行ったアンケート「中高年女性の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」(以下、共同研究)では、60歳未満の中高年女性会社員の約4割は、退職後のセカンドキャリアとして就業継続を希望している(図表1)。そこで本稿では、女性が定年後も働き続ける場合には、具体的にどのような仕事や働き方をしているのかについて、政府統計や先行研究を基にまとめる。
2――定年後の女性の働き方
2-1│60歳代前半女性の所得分布
まず、定年後の所得分布について検討する。始めに述べておきたいのは、定年制度の有無や定年の年齢、定年後も継続雇用している社員の役割や評価方法、処遇については、企業によって幅が大きいという点である。「定年を経て働き続けている男女」に特定した賃金統計もない。
これらの点を踏まえた上で、現時点では、企業の約7割に定年制度があり、そのうち約7割は定年年齢を60歳としていることから1、定年後も働く人の所得水準の参考として、総務省の「令和4年就業構造基本調査」より、60~64歳の人の所得分布を、性、学歴、雇用形態別に整理した(図表2)。なおここでは、学歴は「高卒」と「大卒」の2種類、雇用形態は「正規の職員」、「契約社員」、「パート」、「自営業主」の4種類について抽出した2。
まず男性について、継続雇用の人が含まれるとみられる「契約社員」についてみると、所得階級のボリュームゾーンは「200~399万円」で、大卒では約5割、高卒で約6割を占めた。2番目に多いのが「400~599万円」で、大卒では約2割、高卒では約2割弱だった。3番目に多いのが「199万円以下」で、大卒で約1割、高卒で2割弱だった。600万円以上も、大卒に限れば1割弱いるが、高卒ではわずかだった。
次に、この年代の男性では就業者数は少ないが、「パート」の所得分布を見ると、「199万円以下」が大部分(大卒で7割弱、高卒で約6割)を占めた。
これに対して、60~64歳でも定年前、もしくは定年がない企業で働いていると考えられる「正規の職員」の所得分布を見ると、「200~399万円」が高卒では半数を占め、大卒では約3割だった。大卒では、「400~599万円」が3割弱だったほか、「800万円以上」という高所得層も約2割いた。つまり男性の場合、特に大卒では、正社員として働いているのと、定年を越して契約社員として働いているのとでは、所得に大きな落差があると言えそうである。この点は、前稿で指摘したことと一致している3。
次に、女性の所得分布を見ていきたい。図表を一見して分かる通り、男性に比べて低所得の割合が大きい。まず継続雇用の人が含まれるとみられる「契約社員」については、就業者数は男性に比べて少ないが、所得分布のボリュームゾーンはやはり「200~399万」で、大卒では5割弱、高卒で6割弱だった。この構成割合だけを見ると、男性とそれほど大きな開きは無いが、男性と違って「400~599万円」の割合が少なく、大卒でも1割弱、高卒ではわずかだった。女性で2番目に多かった所得階級は「199万円以下」で、大卒では約3割、高卒では約4割だった。600万円以上の層も、大卒に限れば1割弱いたが、高卒では0%だった。
次に、この年代の女性で就業者数が圧倒的に多いパートをみると、「199万円以下」が大部分を占めており、大卒では約8割、高卒では9割弱に上った。2番目に多い「200~399万円」は、大卒では約2割、高卒では約1割だった。
これに対して、「正規の職員」の所得分布を見ると、男性と同様に、ボリュームゾーンは「200~399万円」であり、高卒で6割弱、大卒では約4割だった。大卒に限れば、「400~599万円」が3割弱を占めたほか、「600~799万円」も約1割、「800万円以上」という高所得層も1割弱いた。従って、男性ほどの落差はないにせよ、正社員から、上述した契約社員に変わると、所得水準は下がると言える。
つまり、女性の場合は、定年前または定年制がない企業で働き続けている正社員では「200~399万円」の年間所得を得ている人が多いが、定年後にパートの仕事に変えると、ほとんどが200万円未満という低所得層になる。契約社員に変わっても、水準はやや落ちる。
因みに、これまでみてきたように、男女いずれも学歴による年間所得の差が大きいが、この年代の四年制大学への進学率は、男性では3~4割、女性では1割強である4。
まず、定年後の所得分布について検討する。始めに述べておきたいのは、定年制度の有無や定年の年齢、定年後も継続雇用している社員の役割や評価方法、処遇については、企業によって幅が大きいという点である。「定年を経て働き続けている男女」に特定した賃金統計もない。
これらの点を踏まえた上で、現時点では、企業の約7割に定年制度があり、そのうち約7割は定年年齢を60歳としていることから1、定年後も働く人の所得水準の参考として、総務省の「令和4年就業構造基本調査」より、60~64歳の人の所得分布を、性、学歴、雇用形態別に整理した(図表2)。なおここでは、学歴は「高卒」と「大卒」の2種類、雇用形態は「正規の職員」、「契約社員」、「パート」、「自営業主」の4種類について抽出した2。
まず男性について、継続雇用の人が含まれるとみられる「契約社員」についてみると、所得階級のボリュームゾーンは「200~399万円」で、大卒では約5割、高卒で約6割を占めた。2番目に多いのが「400~599万円」で、大卒では約2割、高卒では約2割弱だった。3番目に多いのが「199万円以下」で、大卒で約1割、高卒で2割弱だった。600万円以上も、大卒に限れば1割弱いるが、高卒ではわずかだった。
次に、この年代の男性では就業者数は少ないが、「パート」の所得分布を見ると、「199万円以下」が大部分(大卒で7割弱、高卒で約6割)を占めた。
これに対して、60~64歳でも定年前、もしくは定年がない企業で働いていると考えられる「正規の職員」の所得分布を見ると、「200~399万円」が高卒では半数を占め、大卒では約3割だった。大卒では、「400~599万円」が3割弱だったほか、「800万円以上」という高所得層も約2割いた。つまり男性の場合、特に大卒では、正社員として働いているのと、定年を越して契約社員として働いているのとでは、所得に大きな落差があると言えそうである。この点は、前稿で指摘したことと一致している3。
次に、女性の所得分布を見ていきたい。図表を一見して分かる通り、男性に比べて低所得の割合が大きい。まず継続雇用の人が含まれるとみられる「契約社員」については、就業者数は男性に比べて少ないが、所得分布のボリュームゾーンはやはり「200~399万」で、大卒では5割弱、高卒で6割弱だった。この構成割合だけを見ると、男性とそれほど大きな開きは無いが、男性と違って「400~599万円」の割合が少なく、大卒でも1割弱、高卒ではわずかだった。女性で2番目に多かった所得階級は「199万円以下」で、大卒では約3割、高卒では約4割だった。600万円以上の層も、大卒に限れば1割弱いたが、高卒では0%だった。
次に、この年代の女性で就業者数が圧倒的に多いパートをみると、「199万円以下」が大部分を占めており、大卒では約8割、高卒では9割弱に上った。2番目に多い「200~399万円」は、大卒では約2割、高卒では約1割だった。
これに対して、「正規の職員」の所得分布を見ると、男性と同様に、ボリュームゾーンは「200~399万円」であり、高卒で6割弱、大卒では約4割だった。大卒に限れば、「400~599万円」が3割弱を占めたほか、「600~799万円」も約1割、「800万円以上」という高所得層も1割弱いた。従って、男性ほどの落差はないにせよ、正社員から、上述した契約社員に変わると、所得水準は下がると言える。
つまり、女性の場合は、定年前または定年制がない企業で働き続けている正社員では「200~399万円」の年間所得を得ている人が多いが、定年後にパートの仕事に変えると、ほとんどが200万円未満という低所得層になる。契約社員に変わっても、水準はやや落ちる。
因みに、これまでみてきたように、男女いずれも学歴による年間所得の差が大きいが、この年代の四年制大学への進学率は、男性では3~4割、女性では1割強である4。
1 厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」。
2 性・学歴別の各カテゴリーの就業者数と、それに対する各雇用形態の内訳は以下の通りである。高卒男性の就業者は約124万人で、そのうち「自営業主」13.1%、「正規の職員」42.9%、「パート」、5.7%「契約社員」12.7%。大卒男性の就業者は約110万人で、そのうち「自営業主」8.9%、「正規の職員」40.4%、「パート」4.6%、「契約社員」12.2%。高卒女性の就業者は約107万人で、そのうち、「自営業主」4.1%、「正規の職員」18.6%、「パート」50.5%、「契約社員」6.2%、大卒女性の就業者は約29万人で、そのうち、「自営業主」7.6%、「正規の職員」25.2%、「パート」32.4%、「契約社員」9.4%。
3 坊美生子(2024)「女性と『定年』~男性との違いに注目して」(基礎研レポート)。
4 文部科学省「学校基本調査」(e-Stat.)
2-2│定年後の勤め先
ここからは、定年を経験した人に特定して、現在の仕事内容や働き方について、公益財団法人21世紀職業財団が2019年に公表した調査レポート「女性正社員50代60代におけるキャリアと働き方に関する調査――男女比較の観点から――」を基に、男女の違いに注目してまとめる。この調査の対象は、50歳時点で従業員300人以上の企業に正社員として勤めていた人である。
まず、定年を経験した60~64歳男女(図表3では「定年後男性」、「定年後女性」と表記。以下の図表でも同じ)の現在の勤め先を図表3にまとめた。男女とも全体の約6割が「50歳当時と同じ会社」と回答しており、定年後も継続雇用で働いているパターンが多数派だと言える。男女の差をみると、「50歳当時と同じ会社のグループ会社、関連会社」は男性の方がやや多く、「50歳当時と別の会社」は女性の方がやや多い。
ここからは、定年を経験した人に特定して、現在の仕事内容や働き方について、公益財団法人21世紀職業財団が2019年に公表した調査レポート「女性正社員50代60代におけるキャリアと働き方に関する調査――男女比較の観点から――」を基に、男女の違いに注目してまとめる。この調査の対象は、50歳時点で従業員300人以上の企業に正社員として勤めていた人である。
まず、定年を経験した60~64歳男女(図表3では「定年後男性」、「定年後女性」と表記。以下の図表でも同じ)の現在の勤め先を図表3にまとめた。男女とも全体の約6割が「50歳当時と同じ会社」と回答しており、定年後も継続雇用で働いているパターンが多数派だと言える。男女の差をみると、「50歳当時と同じ会社のグループ会社、関連会社」は男性の方がやや多く、「50歳当時と別の会社」は女性の方がやや多い。
(2024年06月11日「基礎研レポート」)
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03-3512-1821
経歴
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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