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- 米国経済の見通し-景気は緩やかに減速、12月利下げ開始を予想
2024年06月10日
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(貿易)堅調な国内経済を背景に外需の成長率寄与度はマイナス傾向が続く
前述のように、実質GDPにおける24年1-3月期の外需は成長率寄与度が▲0.9%ポイント(前期:+0.3%ポイント)と大幅なマイナス寄与に転じた(前掲図表7)。輸出入の内訳をみると輸出が前期比年率+1.2%(前期:+5.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、輸入が+7.7%(前期:+2.2%)と前期から大幅に伸びが加速して成長率寄与度の押下げに寄与した。当期はとくに輸入増加の影響が大きい。
前述のように、実質GDPにおける24年1-3月期の外需は成長率寄与度が▲0.9%ポイント(前期:+0.3%ポイント)と大幅なマイナス寄与に転じた(前掲図表7)。輸出入の内訳をみると輸出が前期比年率+1.2%(前期:+5.1%)と前期から伸びが鈍化したほか、輸入が+7.7%(前期:+2.2%)と前期から大幅に伸びが加速して成長率寄与度の押下げに寄与した。当期はとくに輸入増加の影響が大きい。

米国経済が貿易相手国に比べて相対的に堅調な経済を維持することが見込まれるため、堅調な輸入を背景に当面成長率寄与のマイナス傾向は継続するとみられる。
当研究所は外需の成長率寄与度が、23年の+0.6%ポイントから24年が▲0.4%ポイント、25年が▲0.1%ポイントとマイナス寄与を予想する。
もっとも、24年の大統領選挙でトランプ氏が再選される場合にはすべての輸入品に対する10%関税や中国からの輸入品に対する60%関税賦課など1期目よりさらに保護主義的な通商政策を採用する可能性があり、25年以降の貿易収支の動向は不透明である。
3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)コア、総合指数ともに緩やかに低下
CPIのコア指数(前年同月比)は前述のように低下基調が持続している(前掲図表4)。コア指数のうちコア財価格は24年4月が▲1.3%と4ヵ月連続でマイナスとなっており物価押下げ要因となっている(図表19)。一方、コアサービス価格では、住居費が+5.5%と23年3月の+8.2%をピークに低下基調が持続しているものの、依然としてFRBの物価目標を大幅に上回っているほか、賃金上昇率との連動性が高いコアサービス(除く住居費)が+4.9%と、こちらは23年10月の+3.8%から上昇基調が持続するなどコアサービスの高止まり要因となっている。
CPIの住居費のうち、家賃指数は24年4月が+5.4%と高止まりしているものの、家賃指数の動きに1年先行するとされる不動産情報サイトのZillowが推計する観察家賃指数は22年2月に前年同月比+16.0%でピークアウトし、23年9月に+3.2%まで低下している(図表20)。このため、家賃指数は24年夏場にかけて低下基調が続く可能性が高い。もっとも、観察家賃指数はその後小幅ながら上昇に転じているため、CPIの家賃指数は今年の夏場以降低下スピードが鈍化する可能性が高い。
CPIのコア指数(前年同月比)は前述のように低下基調が持続している(前掲図表4)。コア指数のうちコア財価格は24年4月が▲1.3%と4ヵ月連続でマイナスとなっており物価押下げ要因となっている(図表19)。一方、コアサービス価格では、住居費が+5.5%と23年3月の+8.2%をピークに低下基調が持続しているものの、依然としてFRBの物価目標を大幅に上回っているほか、賃金上昇率との連動性が高いコアサービス(除く住居費)が+4.9%と、こちらは23年10月の+3.8%から上昇基調が持続するなどコアサービスの高止まり要因となっている。
CPIの住居費のうち、家賃指数は24年4月が+5.4%と高止まりしているものの、家賃指数の動きに1年先行するとされる不動産情報サイトのZillowが推計する観察家賃指数は22年2月に前年同月比+16.0%でピークアウトし、23年9月に+3.2%まで低下している(図表20)。このため、家賃指数は24年夏場にかけて低下基調が続く可能性が高い。もっとも、観察家賃指数はその後小幅ながら上昇に転じているため、CPIの家賃指数は今年の夏場以降低下スピードが鈍化する可能性が高い。
さらに、コアサービス(除く住居費)についても今後労働需給の緩和が見込まれる中で賃金上昇率は低下が見込まれるため、今後は緩やかながら低下基調に転じることが予想される。
当研究所は、住居費や賃金上昇率の低下傾向は続くものの、低下は緩やかに留まることから、コアインフレ率(前年同月比)は24年末に+3%(24年通年:+3.3%)とFRBの物価目標を大幅に上回る水準に留まろう。その後、25年末の+2%台前半まで緩やかに低下すると予想する。
一方、原油価格は足元の70ドル台半ばから25年末にかけて概ね同水準で横這い推移すると予想している。このため、エネルギーは24年7-9月期から25年7-9月期まで小幅ながら物価押下げ要因となろう。この結果、総合指数は、コア指数同様に緩やかな低下基調が持続することが見込まれる。当研究所はCPIの総合指数(前年比)が23年見込みの+4.1%から、24年に+3.1%、25年に+2.4%に低下すると予想する。
当研究所は、住居費や賃金上昇率の低下傾向は続くものの、低下は緩やかに留まることから、コアインフレ率(前年同月比)は24年末に+3%(24年通年:+3.3%)とFRBの物価目標を大幅に上回る水準に留まろう。その後、25年末の+2%台前半まで緩やかに低下すると予想する。
一方、原油価格は足元の70ドル台半ばから25年末にかけて概ね同水準で横這い推移すると予想している。このため、エネルギーは24年7-9月期から25年7-9月期まで小幅ながら物価押下げ要因となろう。この結果、総合指数は、コア指数同様に緩やかな低下基調が持続することが見込まれる。当研究所はCPIの総合指数(前年比)が23年見込みの+4.1%から、24年に+3.1%、25年に+2.4%に低下すると予想する。

FRBはインフレ抑制のために22年3月から政策金利の引上げを開始し、23年7月に5.5%に引き上げた後は、9月から6会合連続で政策金利を据え置いた(図表21)。24年5月のFOMC会合後に発表された声明文では、景気判断部分でインフレについて「ここ数ヵ月は委員会の物価目標2%に向けた進展がみられない」との表現を追加し、足元でインフレが想定より上振れしている状況を示した。一方、ガイダンス部分では「委員会はインフレ率が持続的に2%に向かっているとの確信が深まるまで、目標レンジを引き下げることは適切でないと考えている」との記述が維持され、次の政策金利変更は利下げである方針が確認された。
一方、同会合後の記者会見でパウエル議長はインフレ率が持続可能なペースで目標の2%へ移行していると十分に確証を得るためには、以前想定されていたよりも時間がかかるとの見解を示し、利下げ開始時期が3月会合で想定された時期から先送りされる可能性を示唆した。このため、6月会合後に示されるFOMC参加者による24年の政策金利見通し(中央値)は3月予想時点の3回利下げから利下げ回数の縮小が見込まれる。
足元で労働市場が堅調を維持する中、インフレ低下のカギを握る住居費は夏場以降に低下ペースが鈍化する可能性があるほか、住居費除きのコアサービス価格に影響する賃金上昇率は足元で低下が足踏みとなっていることから、FRBはインフレ動向を慎重に見極めるとみられ、当研究所はFRBによる利下げ開始時期を24年12月と予想する。その後は25年末にかけて3回の追加利下げを実施しよう。ただし、インフレが今後数ヵ月探偵で物価上昇圧力の緩和が続くことや、労働市場の減速が顕著となる場合には利下げ開始時期が9月に前倒しされる可能性はあろう。
一方、量的引締め政策については5月会合で6月以降に米国債とMBSの合計で従前の毎月900億ドルから米国債の削減ペースを鈍化させ合計毎月600億ドルペースで削減している。当研究所は、当面600億ドルペースで削減を継続した後、25年中にも量的引締め政策が終了すると予想する。
(長期金利)24年10-12月期平均が4.2%、25年10-12月期がド3.6%への低下を予想
長期金利(10年金利)は、23年10月に一時5%超となった後、労働市場の減速やインフレ率の低下、追加利上げ観測の後退もあって、12月に一時3.8%割れまで低下した(図表22)。
長期金利(10年金利)は、23年10月に一時5%超となった後、労働市場の減速やインフレ率の低下、追加利上げ観測の後退もあって、12月に一時3.8%割れまで低下した(図表22)。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年06月10日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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