2024年06月03日

米個人所得・消費支出(24年4月)-コアPCE価格指数(前月比)は前月から低下、市場予想に一致

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想に一致、個人消費は市場予想を下回る

5月31日、米商務省の経済分析局(BEA)は4月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月:+0.5%)と前月を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.7%)と+0.8%から小幅下方修正された前月を大幅に下回ったほか、市場予想の+0.3%も下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は▲0.1%(前月改定値:+0.4%)と+0.5%から小幅下方修正された前月から小幅ながらマイナスに転じたほか、プラスを見込んだ市場予想の+0.1%を下回った(図表5)。貯蓄率1は3.6%(前月:3.6%)と前月から横這いとなった。

価格指数は、総合指数が前月比+0.3%(前月:+0.3%)と前月、市場予想(+0.3%)に一致した。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.2%(前月:+0.3%)とこちらは前月から低下、市場予想(+0.2%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.7%(前月:+2.7%)と前月、市場予想(+2.7%)に一致した。コア指数は+2.8%(前月:+2.8%)とこちらも前月、市場予想(+2.7%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:コアPCE価格指数(前月比)は23年12月以来の水準に低下

個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)の名目ベースは高い伸びとなった3月の+0.7%、2月の+0.7%から4月は大幅に低下(図表1)。さらに実質ベースでは3ヵ月ぶりにマイナスに転じるなど4月の個人消費は顕著な減速を示した。

これに対して、個人所得(前月比)は4月の賃金・給与が+0.2%と23年11月以来の水準に低下するなど、こちらの伸びも鈍化した。とくに、実質可処分所得は24年に入ってから4月も含めて2ヵ月でマイナスとなっており、個人消費の原資としての可処分所得の伸びには陰りがみられる。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数の前月比は総合指数では前月から横這いとなったものの、物価の基調を示すコア指数では前月から低下し23年12月以来の水準となるなど、4月は物価上昇圧力が幾分和らいだことを示した。もっとも、前年同月比では総合指数、コア指数ともに前月から横這いとなったほか、依然としてFRBの物価目標である2%を上回っており、FRBの物価目標達成時期は見通せない状況が続いている。

3.所得動向:賃金・給与が23年11月以来の水準に低下

4月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景にこれまで堅調を維持してきた賃金・給与が+0.2%(前月:+0.6%)と23年11月以来の水準に低下するなど足元で労働需給が緩和している可能性を示唆した(図表2)。また、自営業者所得が横這い(前月:+0.2%)、移転所得が+0.3%(前月:+0.8%)といずれも前月から伸びが鈍化した。一方、利息配当収入は+0.5%(前月:横這い)とこちらは前月から伸びが加速した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、4月の名目が+0.2%(前月:+0.5%)と前月から伸びが鈍化した(図表3)。また、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は▲0.1%(前月:+0.1%)と前月からマイナスに転じた。前述のように実質可処分所得は24年に入ってから4ヵ月のうち2ヵ月でマイナスとなるなど、可処分所得の伸びがなかなか物価の伸びに追いついていない状況となっている。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.財消費がマイナスに転じたほか、サービス消費も伸びが鈍化

4月の名目個人消費(前月比)は、サービス消費が+0.4%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化したほか、財消費が▲0.2%(前月:+1.1%)と高い伸びとなった前月の反動もあって4ヵ月ぶりにマイナスに転じた(図表4)。

財消費は、耐久財が▲0.3%(前月:+0.3%)、非耐久財が▲0.1%(前月:+1.5%)といずれも前月からマイナスに転じた。

耐久財では、自動車・自動車部品が+0.8%(前月:▲1.5%)と前月からプラスに転じた一方、家具・家電が▲0.7%(前月:+0.4%)、娯楽財・スポーツカーが▲1.1%(前月:+1.9%)といずれも前月からマイナスに転じて耐久財消費全体を押し下げた。

非耐久財では衣料・靴が+0.2%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じた一方、食料・飲料が+0.1%(前月:+1.0%)と大幅に伸びが鈍化したほか、ガソリン・エネルギーが▲0.1%(前月:+6.6%)とマイナスに転じて非耐久財消費全体を押し下げた。

サービス消費は、金融サービスが+1.0%(前月:+0.8%)、外食・宿泊が+0.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速したほか、住宅・公共料金が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの伸びを維持した。一方、娯楽サービスが+0.1%(前月:+0.7%)、医療サービスが+0.5%(前月:+0.7%)と前月から伸びが鈍化したほか、輸送サービスが▲1.8%(前月:0.8%)と前月から大幅なマイナスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比、前年同月比ともに物価を押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.2%(前月:+1.2%)と3ヵ月連続のプラスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.2(前月:▲横這い)とこちらは2ヵ月連続でマイナスとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が+3.0%(前月:+2.6%)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、小幅ながら伸びが加速した(図表7)。食料品価格指数は+1.3%(前月:+1.5%)と前月から小幅に伸びが鈍化したものの、82ヵ月連続でプラスを維持した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年06月03日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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