- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 不動産 >
- 不動産市場・不動産市況 >
- キャップレートの低下が継続するなか、投資不動産の選別が進む
キャップレートの低下が継続するなか、投資不動産の選別が進む

金融研究部 主任研究員 吉田 資
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
不動産投資市場では良好な景況感が維持されるなか、不動産価格の上昇が継続するとの見方が増えている。弊社アンケートにおいて、「東京の不動産価格のピーク時期」について質問したところ、「東京の不動産価格のピーク時期」について、「2023年あるいは現時点(既に価格はピーク)」(35%)との回答が最も多く、次いで「2024年」(30%)、「2025年」(25%)との回答が多かった。前回調査では、2023年中にピークアウトするとの見方が約8割を占めていたことから、価格のピーク時期に対する見解がやや後ろ倒しされる結果となった。
こうした情勢を背景として不動産利回りが一段と低下している。J-REITの開示データをもとに、東京中心部に所在する大規模オフィスビルの還元利回り(以下、キャップレート)を推計すると、2023年は、前年比▲0.1%低下の2.8%となり、過去最低水準を更新した(図表2)。同様に、東京中心部に所在する住宅のキャップレートも大きく低下しており、2023年は3.1%(前年比▲0.2%)となった。
日本政策投資銀行・価値総合研究所「オフィスビルに対するステークホルダーの意識調査2023」によれば、オフィスビルの選択において築年数の重要度が高いとの回答は、中堅・中小企業で27%、大企業で45%に達している。多くの企業は従業員満足度やエンゲージメントの向上を目指して、建物設備のグレートアップ等オフィス環境の整備に取り組んでいる。こうした状況を踏まえて、不動産投資家は築年数により投資物件を選別していると推察される。
ところで、弊社アンケートにおいて、「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」について質問したところ、「建築コスト」(68%)との回答が最も多く、次いで、「国内金利」(59%)、との回答が多い結果となった。建築物価調査会「建築費指数」によれば、資材価格の高騰や労務費の上昇などにより、「事務所」の建築費(2023年平均)は前年比+7%、「集合住宅」は前年比+8%と上昇が続いている。国内金利についても、日本銀行は2024年3月の金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除と長短金利操作(YCC)の撤廃を決定した。
コロナ禍を経ても、堅調に推移してきた不動産投資市場だが、今後は、建築コストの上昇や、金融政策の変更に伴う金利上昇が及ぼす影響等、市場動向の変化をこれまで以上に注視することが求められる。
(2024年06月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1861
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
吉田 資のレポート
新着記事
-
2025年03月18日
長期投資の対象、何が良いのか-S&P500、ナスダック100、先進国株式型で良かった -
2025年03月18日
中国で求められる、働きやすく、子育てしやすい社会の整備【アジア・新興国】中国保険市場の最新動向(68) -
2025年03月18日
グリーン車から考える日本の格差-より多くの人が快適さを享受できる社会へ- -
2025年03月18日
気候変動:アクチュアリースキルの活用-「プラネタリー・ソルベンシー」の枠組みに根差したリスク管理とは? -
2025年03月18日
EUがIRRD(保険再建・破綻処理指令)を最終化-業界団体は負担の軽減とルールの明確化等を要求-
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
-
2024年04月02日
News Release
【キャップレートの低下が継続するなか、投資不動産の選別が進む】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
キャップレートの低下が継続するなか、投資不動産の選別が進むのレポート Topへ