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- 中国経済の見通し-政策頼みの景気回復。不動産リスクは残存、貿易摩擦も新たな火種に
2024年05月29日
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1.中国経済の概況
中国国家統計局が4月16日に公表した2024年1~3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+5.3%と、前期(23年10~12月期)の+5.2%から伸びが小幅に加速した(図表-1)。季節調整後の前期比も+1.6%(年率換算+6.6%)と、前期(同+1.0%、年率換算+4.1%)から加速している。3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で掲げた今年の成長率目標である「+5%前後」に対して、比較的好調な出だしとなった。
もっとも、改善の主因は外需であり、内需は力強さを欠く状況にある。4月までの指標を踏まえてもその傾向に変わりはない。鉱工業生産は好調が続く一方、需要関連の指標は弱含みが続いている。不動産販売面積は1~4月の累計で前年比▲20.2%と前年割れに改善の兆しは依然みられない。また、5月初旬の連休(労働節)期間中における観光関連消費は、総額ではコロナ前の19年比113.5%であったが、単価では同88.5%と4月初旬の連休(清明節)時から低下した(図表-2)。このほか、PMI調査で「需要不足」と回答する製造業企業の割合は、23年後半以降、6割以上で高止まりを続けている(図表-3)。
こうしたなか、前期まで改善傾向にあった設備稼働率は、1~3月期に約7年ぶりの水準(20年のコロナショック発生時を除く)まで低下しており、需給のアンバランスによる過剰生産能力の問題が顕在化しつつあるようだ。消費者物価(CPI)、工業生産者出荷価格(PPI)ともに目立った改善はみられない(図表-4)。GDPデフレーター(≒GDPの名目伸び率-実質伸び率)も4四半期連続でマイナスとなっており、デフレ懸念が強まっている。
もっとも、改善の主因は外需であり、内需は力強さを欠く状況にある。4月までの指標を踏まえてもその傾向に変わりはない。鉱工業生産は好調が続く一方、需要関連の指標は弱含みが続いている。不動産販売面積は1~4月の累計で前年比▲20.2%と前年割れに改善の兆しは依然みられない。また、5月初旬の連休(労働節)期間中における観光関連消費は、総額ではコロナ前の19年比113.5%であったが、単価では同88.5%と4月初旬の連休(清明節)時から低下した(図表-2)。このほか、PMI調査で「需要不足」と回答する製造業企業の割合は、23年後半以降、6割以上で高止まりを続けている(図表-3)。
こうしたなか、前期まで改善傾向にあった設備稼働率は、1~3月期に約7年ぶりの水準(20年のコロナショック発生時を除く)まで低下しており、需給のアンバランスによる過剰生産能力の問題が顕在化しつつあるようだ。消費者物価(CPI)、工業生産者出荷価格(PPI)ともに目立った改善はみられない(図表-4)。GDPデフレーター(≒GDPの名目伸び率-実質伸び率)も4四半期連続でマイナスとなっており、デフレ懸念が強まっている。
2.需要の動向
1~3月期の実質GDP成長率における最終消費(個人消費+政府消費)の寄与度は、+3.9%PTと、前期の+4.2%PTから低下した(図表-5)。小売売上高の伸び率(名目前年同期比、以下同)は低下傾向にあり、4月には前年同期比+2.1%まで低下した(図表-6)。ゼロコロナ終了後のペントアップ需要がみられた前年の要因もあるが、前期比でも低水準が続いている。雇用・所得の先行きに対するマインドは一段の悪化に歯止めがかかる兆しがみえるが、個人消費の勢いは弱い。政府消費は4月に持ち直した。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+1.2%PTから低下した(図表-5)。固定資産投資の伸び率の推移を見ると(図表-7)、23年の終わりから24年3月にかけて改善傾向にあったが、4月には小幅に下落した。製造業の投資は堅調が続く一方、インフラ投資が減速した。また、不動産開発投資は減少幅が小幅に拡大した。
純輸出の寄与度は、+0.8%PTと、前期の▲0.2%PTからプラスに転じた(図表-5)。輸出入の伸び率の推移を見ると(図表-8)、輸出入とも、3月に一時悪化したが、4月には再び改善した。主要国・地域向けの輸出は、ASEAN向けでプラス幅が拡大、米国・欧州向けでマイナス幅が縮小しており、日本のみマイナス幅が拡大した。なお、前期比(試算値)では減速している。
総資本形成(=総固定資本形成+在庫変動)の寄与度は、+0.6%PTと、前期の+1.2%PTから低下した(図表-5)。固定資産投資の伸び率の推移を見ると(図表-7)、23年の終わりから24年3月にかけて改善傾向にあったが、4月には小幅に下落した。製造業の投資は堅調が続く一方、インフラ投資が減速した。また、不動産開発投資は減少幅が小幅に拡大した。
純輸出の寄与度は、+0.8%PTと、前期の▲0.2%PTからプラスに転じた(図表-5)。輸出入の伸び率の推移を見ると(図表-8)、輸出入とも、3月に一時悪化したが、4月には再び改善した。主要国・地域向けの輸出は、ASEAN向けでプラス幅が拡大、米国・欧州向けでマイナス幅が縮小しており、日本のみマイナス幅が拡大した。なお、前期比(試算値)では減速している。
3.産業の動向
1~3月期の産業動向を概観すると(図表-9、10)、第1次産業は前年同期比+3.3%と前期(同+4.2%)から減速した。第2次産業は同+6.0%で前期(同+5.5%)から加速した。その内訳をみると、「製造業」が同+6.4%と、前期(同+5.3%)から加速した一方、「建築業」は同+5.8%と、前期(同+6.7%)から減速した。第3次産業は同+5.0%と、前期(同+5.3%)から減速した。その内訳を見ると、主な業種のうち加速したのは「情報通信・ソフトウェア・IT」のみで、その他は減速した。「不動産業」は、マイナス幅が前期から拡大しており、不動産不況の影響が如実に表れている。このほか、「卸小売業」や「宿泊飲食業」の減速には上述の消費動向の影響、「金融業」の減速には金融緩和に伴う利ざやの縮小の影響が表れていると考えられる。このように、産業別の観点では、「製造業」主導の改善であることがうかがえる。
関連する月次指標の推移を見ると(図表-11、12)、鉱工業生産は、3月に一時減速した後、4月には輸送機械や情報通信機械を中心に再び改善した。他方、サービス業生産は、23年11月をピークに、24年4月にかけて減速傾向が続いている。ゼロコロナ終了後のペントアップ需要がみられた前年要因のほか、国家統計局は労働節休暇期間の前年とのずれによる影響を挙げている。
関連する月次指標の推移を見ると(図表-11、12)、鉱工業生産は、3月に一時減速した後、4月には輸送機械や情報通信機械を中心に再び改善した。他方、サービス業生産は、23年11月をピークに、24年4月にかけて減速傾向が続いている。ゼロコロナ終了後のペントアップ需要がみられた前年要因のほか、国家統計局は労働節休暇期間の前年とのずれによる影響を挙げている。
(2024年05月29日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
・2006年:みずほ総合研究所(現みずほリサーチ&テクノロジーズ)入社
・2009年:同 アジア調査部中国室
(2010~2011年:北京語言大学留学、2016~2018年:みずほ銀行(中国)有限公司出向)
・2020年:同 人事部
・2023年:ニッセイ基礎研究所入社
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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