2024年05月24日

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(2)「栄地区」
「栄地区」では、中区栄4丁目で中部日本ビルディングと中日新聞社が開発した地上 33 階建てのオフィス、ホテル、多目的ホール等で構成する「中日ビル」(延床面積約11.7万m2)が2023年8月に竣工、2024年4月に全面開業した11(図表-19 ①)。9~22階のオフィスフロアは9割が成約済みとことである12

また、市有地の「栄広場」と隣接エリアを合わせた地区(錦三丁目25番街区)で、三菱地所、パルコ、日本郵政不動産、明治安田生命保険、中日新聞社の5社は「名古屋駅・伏見・栄地区都市機能誘導制度」を活用した複合ビル(延床面積約11万m2)を開発中で、2026年3月に竣工予定である13。ホテルには、米ヒルトングループの「コンラッド」が入居する。地上41階・地下4階建てを予定する当ビルの高さは約211メートルと、名古屋テレビ塔(約180メートル)を超え、栄地区では最も高いビルとなる(図表-19 ②)。

また、中区新栄町2丁目で、第一生命保険、鹿島建設、ノリタケカンパニーリミテドが共同で地上 19 階建ての「栄トリッドスクエア」14(延床面積約4万m2)を開発中で、2026年3月に竣工予定である15(図表-19 ③)
図表-19 「栄地区」におけるオフィス開発計画
 
11 中部日本ビルディング株式会社・株式会社中日新聞社「名古屋・栄の新たなランドマークへ「中日ビル」が 2024年4月23日(火)に全面開業名古屋初を含む93のテナントが出店」2024年1月11日
12 日本経済新聞「栄に「ビジネス」呼び込め 中日ビルが全面開業 オフィス賃料、名駅より割安」2024/4/24
13 三菱地所株式会社、株式会社パルコ、日本郵政不動産株式会社、明治安田生命保険相互会社、株式会社中日新聞社「「(仮称)錦三丁目 25 番街区計画」着工~名古屋の新たなランドマークとなるシンボルタワーが栄に誕生~」2022年6月13日
14 鹿島建設株式会社HP「栄トリッドスクエア」
15 第一生命保険株式会社、鹿島建設株式会社、株式会社ノリタケカンパニーリミテド「名古屋市中区栄エリアにおけるオフィスビル共同開発プロジェクト始動」2022年11月11日
(3)「伏見・丸の内地区」
「丸の内地区」では、中区丸の内1丁目で清水建設、富国生命保険、清水総合開発が開発した「名古屋シミズ富国生命ビル」(地上 16階建て・延床面積約4.8万m2)が2024年3月に竣工した16(図表-20 ①)。

「伏見地区」では、中区錦2丁目の「りそな名古屋ビル」跡地で鹿島建設が地上 13 階建てのオフィスビル(延床面積約2.6万m2)を開発中で、2025年10月に竣工予定である17(図表-20 ②)。
図表-20 「伏見・丸の内地区」におけるオフィス開発計画
 
16 清水建設株式会社・富国生命保険相互会社清水総合開発株式会社・「「(仮称)名古屋丸の内一丁目計画」のビル名称を決定~多様な働き方に応える超環境配慮型オフィス「名古屋シミズ富国生命ビル」~」2023年6月30日
17 週刊ビル経営「鹿島建設 「(仮称)錦通桑名町ビル計画」着工」2023/12/11
(3)名古屋市の新規供給予定面積
2023年は「エニシオ名駅」や「中日ビル」等の大規模ビルが竣工し、新規供給量は前年比+80%の約1.9万坪となった(図表-21)。

2024年も「名古屋シミズ富国生命ビル」や「第2名古屋三交ビル」等、大規模ビルの竣工が予定されており、新規供給量は約1.6万坪となる見通しである。翌2025年は一旦落ち着くものの、2026年は「(仮)錦三丁目25番地区計画」や「栄トリッドスクエア」等の大規模開発が竣工予定で、新規供給量は約2.4 万坪となり9年ぶりに2万坪を上回る見通しである。
図表-21 名古屋のオフィスビル新規供給見通し
3-3.賃料見通し
前述の新規供給見通しや経済予測 、オフィスワーカーの見通し等を前提に、2028年までの名古屋のオフィス賃料を予測した(図表-22)。

新規供給は、名駅エリアや栄エリアを中心に大規模開発計画が複数進行中である。

需要面に関して、愛知県の就業者数は、情報通信業等を中心に増加し、人手不足感も強いことから、名古屋市の「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さい。また、名古屋でも、フリーアドレスを導入し、リモート会議用ブース・個室を充実させる等、在宅勤務を取り入れたフレキシブルな働き方に即したオフィスの利用形態を採用する企業が増えている。リニア中央新幹線の名古屋駅開業を見据えて、新たな路面公共交通システム等の導入が進んでおり、都市機能の強化・向上が図られることで、オフィス需要にもプラスの効果が期待される。

以上を踏まえると、名古屋市のオフィス需要は底堅く、空室率が大きく上昇する懸念は小さいと予想する。

名古屋のオフィス成約賃料は、空室率が安定的に推移することに伴い、現行水準で概ね横ばいで推移し、2023年の賃料を100とした場合、2024年は「100」、2025年は「101」、2028年は「99」となる見通しである。
図表-22 名古屋のオフィス賃料見通し
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2024年05月24日「不動産投資レポート」)

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金融研究部   上席研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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