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- 東京オフィス市場は調整局面を脱する。ホテル市場は一段と改善-不動産クォータリー・レビュー2024年第1四半期
2024年05月10日
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物流賃貸市場は、首都圏では新規供給の影響を受けて空室率が一段と上昇している。シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2024年3月末)は9.7%(前期比+0.4%)と、2012年以来12年ぶりの高水準となった(図表-15)。外縁部を中心に空室の消化に時間を要しており、来期の新規供給のプレリーシングが現時点で30%程度の進捗であることから、空室率は10%を超える可能性もあるとのことである。一方、近畿圏の空室率は5.3%(前期比▲0.7%)に低下し、空室は一部の物件や一部の地域に限られている。
また、一五不動産情報サービスによると、2024年1月の東京圏の募集賃料は4,620円/月坪(前期比+0.4%)に上昇した6。
また、一五不動産情報サービスによると、2024年1月の東京圏の募集賃料は4,620円/月坪(前期比+0.4%)に上昇した6。
6 J-REITが所有する物流施設は賃料の増額改定が続いている。GLP投資法人(2024年2月期)の満期更改時賃料上昇率は+7.2%、日本プロロジスリート投資法人(2023年11月期)の改定賃料変動率は+4.2%であった。
4.J -REIT(不動産投信)市場
2024年第1四半期の東証REIT指数(配当除き)は昨年12月末比▲0.7%下落した。セクター別では、オフィスが▲2.7%下落する一方、住宅(+4.5%)と商業・物流等(+0.2%)は上昇した(図表-16)。金融政策正常化に伴う金利の先高観に加えて、需給面では新NISAを契機としたJリート投信(毎月分配型)からの資金流出が響き、東証REIT指数は一時2020年11月以来の安値水準に下落した。その後は期末にかけて反発したものの、株式市場(TOPIX+17.0%)の上昇率を大きく下回った。3月末時点のバリュエーションは、純資産11.9兆円に保有物件の含み益5.4兆円を加えた17.3兆円に対して時価総額は15.3兆円でNAV倍率7は0.89倍、分配金利回りは4.4%、10年国債利回りに対するイールドスプレッドは3.7%となっている。
ニッセイ基礎研究所は、3月にJ-REIT市場の分配金見通しを発表した8。2024年はプラス成長を維持するものの、借入金利の上昇が下押し要因となり、今後5年間の分配金成長率は▲5%となる見通しである。今後の「金利のある世界」「インフレのある世界」を前提にすると、J-REIT各社には金利とインフレに打ち克つ内部成長の実現が求められる。保有不動産のバリューアップを通じた賃料水準の引き上げや資本コストを意識したマネジメント力の発揮に期待したい。
7 NAV倍率は、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
8 岩佐浩人『J-REIT市場の動向と収益見通し。借入金利上昇を背景に今後5年間で▲5%減益を見込む~シナリオ別の分配金レンジは「▲18%~+7%となる見通し~』
7 NAV倍率は、市場時価総額がリートの解散価値(NAV:Net Asset Value)の何倍で評価されているかを表わす指標。
8 岩佐浩人『J-REIT市場の動向と収益見通し。借入金利上昇を背景に今後5年間で▲5%減益を見込む~シナリオ別の分配金レンジは「▲18%~+7%となる見通し~』
(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年05月10日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1858
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
2005年 ニッセイ基礎研究所
2019年4月より現職
【加入団体等】
・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
岩佐 浩人のレポート
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