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「中高年女性正社員」に着目したキャリア支援~「子育て支援」の対象でもなく、「管理職候補」でもない女性たち~

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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6――中高年女性正社員に対する上司からの期待
「従来通りの業務の継続」という“現状維持”も、いずれの年齢階級でも3割前後に上った。「管理職への就任」については、「45~49歳」では8.1%となったが、「55~59歳」では3.3%に過ぎなかった。また、何を期待されているかが「分からない」という回答も、いずれの年齢階級でも1~2割に上った。
このように、過半数の中高年女性は、上司からスキルアップやパフォーマンスを上げることを期待されていないと感じており、何を期待されているのか理解できないという人もいる。管理職昇進への期待はほんのわずかである。
女性社員の意識が低いから上司が期待しない、ということも、上司が期待しないから女性社員の意識が高まらない、ということも、両方考えられるが、どちらが先かを論じていても仕方ない。先行研究では、上司から期待されている場合の方が、期待されたことがない場合に比べて、女性社員の貢献意欲が高くなる確率が高いことが指摘されている3。上司から、成果や成長を期待することは、中高年女性の育成に必要な要素であり、組織の活性化への第一歩と言えるのではないだろうか。
3 公益財団法人21世紀職業財団(2017)「『一般職』女性の意識とコース別雇用管理制度の課題に関する調査研究―『一般職』女性の活躍に向けてー」
7――終わりに
中高年女性正社員たちのこれまでのキャリアや現状を見ると、管理職経験者は少なく、キャリアも比較的乏しいが、本人たちの意識を探ると、様々な配置や研修、学び直しなどによるスキルアップを希望しているなど、意識の高い層が一定、いることが分かった。ただし、上司から成長を期待されていると感じている中高年女性は、少数に過ぎない。
このような状況を一言で言うならば、企業は、中高年女性正社員という人材を生かし切れていない、ということではないだろうか。「はじめに」で述べたように、少子化の加速によって、企業は若年層の人材確保が年々困難になり、人手不足も大きな課題となっているのに、今雇用している中高年人材、中でも女性を、どのように活用していくか、ということが整理できていないように思う。
本稿で紹介した共同研究の結果から言えば、既に中高年に到達した女性、50歳代後半の女性の中にも、意識の高い層はいることから、性別や年齢によって育成の対象から外すのではなく、個人の意欲や適性を見て、成果や成長を期待し、キャリア支援を行っていくべきではないだろうか。
「均等法第一世代」として、女性の長期雇用の道を切り開いてきた人たちが、中高年に到達して、限定的な業務だけ行って居場所に困っているのではなく、定年を迎えるまで、様々な仕事にチャレンジして、組織に貢献している姿を示すことができれば、後に続く女性社員たちにとっても、本当のロールモデルとなり、「定年まで頑張って働こう」という意識づけになるのではないだろうか。
(2024年05月09日「基礎研レポート」)
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03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
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