2024年04月30日

鉱工業生産24年3月-1-3月期は大幅減産だが、明るい材料も見られる

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.24年1-3月期は20年4-6月期以来の大幅減産

経済産業省が4月30日に公表した鉱工業指数によると、24年3月の鉱工業生産指数は前月比3.8%(2月:同▲0.6%)と3ヵ月ぶりに上昇し、ほぼ事前の市場予想(QUICK集計:前月比3.5%、当社予想は同3.3%)通りの結果となった。出荷指数は前月比4.3%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数は前月比1.1%と2ヵ月連続の上昇となった。

3月の生産を業種別に見ると、不正問題発覚に伴う生産停止の影響で1月(前月比▲15.9%)、2月(同▲8.1%)と大きく落ち込んだ自動車が、工場の稼働再開を受けて前月比9.6%となったほか、フラットパネル・ディスプレイ製造装置、半導体製造装置を含む生産用機械(同11.6%)、在庫調整が進展する電子部品・デバイス(同9.2%)が高い伸びとなった。

24年1-3月期の生産は前期比▲5.4%(23年10-12月期:同1.1%)と2四半期ぶりの減産となり、四半期ベースの落ち込み幅は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて緊急事態宣言が発令された20年4-6月期(前期比▲15.1%)以来の大きさとなった。

業種別には、不正問題の影響で自動車が前期比▲17.3%の大幅減産となったほか、鉄鋼(前期比▲3.6%)、生産用機械(同▲1.9%)、汎用機械(同▲7.8%)、電気機械(同▲9.0%)などほとんどの業種が前期比でマイナスとなった。

鉱工業生産は23年度を通して一進一退の動きが続き、23年度は前年比▲2.0%(22年度は同▲0.3%)と2年連続の減産となった。
鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移/鉱工業生産の業種別寄与度
財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は23年10-12月期の前期比0.9%の後、24年1-3月期は前期比▲2.1%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は23年10-12月期の前期比1.6%の後、24年1-3月期は前期比▲6.2%となった。

23年10-12月期のGDP統計の設備投資は前期比2.0%と3四半期ぶりに増加した。設備投資は高水準の企業収益を背景に基調としては持ち直しているが、24年1-3月期は伸びが大きく鈍化する可能性が高い。

消費財出荷指数は23年10-12月期の前期比1.0%の後、24年1-3月期は前期比▲6.0%となった。耐久消費財が前期比▲11.4%、非耐久消費財が前期比▲0.9%であった。
財別の出荷動向 23年10-12月期のGDP統計の民間消費は前期比▲0.3%と3四半期連続で減少した。個人消費は、高水準の貯蓄を背景に22年度中は堅調に推移したが、物価高による実質所得の減少が続くなか、貯蓄率の大幅低下によって過剰貯蓄による押し上げ効果が剥落したこともあり、23年度入り後は弱い動きとなっている。24年1-3月期の民間消費は、物価高の悪影響が続く中、生産・出荷停止に伴う自動車販売の落ち込みもあり、4四半期連続の減少となる可能性が高い。

2.明るい材料も散見され、4-6月期は増産へ

製造工業生産予測指数は、24年4月が前月比4.1%、5月が同4.4%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(3月)、予測修正率(4月)はそれぞれ▲1.0%、▲0.2%であった。

予測指数を業種別にみると、1月(前月比▲9.9%)、2月(同▲11.5%)と大きく落ち込んだ輸送機械は、3月に前月比11.8%となった後、4月が同6.1%、5月が同10.5%の大幅増産計画となっている。1月の国内生産が0台だったダイハツは、2月から生産を再開しているが、生産台数は2月が前年同月の8.3%、3月が同34.2%にとどまった。フル稼働までには時間を要するものの、足もとの水準が低いこともあり4月以降の生産は前月比で高い伸びとなることが見込まれる。
輸送機械の生産、在庫動向/電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス
電子部品・デバイスの出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は23年7-9月期に9.2%と8四半期ぶりにプラスに転じた後、24年1-3月期は34.0%までプラス幅が拡大した。1-3月期は出荷が前年比0.4%と6四半期ぶりにプラスに転じる一方、在庫のマイナス幅が10-12月期の前年比▲25.1%から同▲33.6%へと拡大した。在庫調整の進展を受けて、電子部品・デバイスの生産は堅調に推移することが見込まれる。

また、4月に前月比21.5%(5月は同▲1.5%)の大幅増産計画となっている生産用機械は、3月の生産計画(前月比8.5%)が実績(同8.3%)とほぼ一致していた(予測調査ベース)ことを踏まえると、4月の実績も高い伸びとなることが期待できるだろう。
 
24年3月の生産指数を4、5月予測指数で先延ばしすると、24年4、5月の平均は24年1-3月期を8.9%上回る。実際の生産の伸びは計画を下回る傾向があることを考慮する必要があるが、自動車の挽回生産、電子部品・デバイスの在庫調整の進展、半導体関連需要に支えられた生産用機械の大幅増産など、明るい材料がみられることから、24年4-6月期の生産は1-3月期の落ち込みを取り戻す高い伸びとなることが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年04月30日「経済・金融フラッシュ」)

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