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気候指数 2023年データへの更新-日本の気候の極端さは、1971年以降の最高水準を更新

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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![図表15-1. 指数推移 (5年平均) [奄美]](https://www.nli-research.co.jp/files/user/report/nlri_report/2024/report240405-1-15_1-655x322.jpg?v=1712297807)
奄美の合成指数は、2000年代半ばより上昇を続け、2023年秋季には1.16(前年秋季は1.12)となっている。特に、湿度指数が2を超えて推移していることが寄与している。なお、この地域区分は、気象の観測地点が名瀬と沖永良部の2つ、潮位の観測地点が奄美の1つだけであり、各指数が変動しやすい。また、海面水位指数は、観測が開始された1996年以降だけとなっている。指数推移を見る際には、こうした点に注意が必要となる。
[2023年の各月の動向]
![図表15-2. 指数推移 (2023年の各月の指数) [奄美]](https://www.nli-research.co.jp/files/user/report/nlri_report/2024/report240405-1-15_2-655x330.jpg?v=1712297807)
高温指数は、9月に高い水準となった。一方、海面水位指数は、4月、9月、12月に高水準を付けた。また、降水指数と湿度指数は、6月と8月に上昇した。これら4つの指数が寄与する形で、6月、8月、9月、12月に合成指数が高い水準となった。
![図表16-1. 指数推移 (5年平均) [沖縄]](https://www.nli-research.co.jp/files/user/report/nlri_report/2024/report240405-1-16_1-655x321.jpg?v=1712297807)
沖縄の合成指数は、長らくゼロ近辺で推移してきたが、2010年代半ばより上昇し、2023年秋季には1.10(前年秋季は1.05)となっている。特に、高温指数は急上昇して、2020年に2を超えた。その後、やや低下したものの高い水準にある。また、湿度指数は、2010年代以降に大幅に上昇した。これらのことが、合成指数の上昇につながっている。
[2023年の各月の動向]
![図表16-2. 指数推移 (2023年の各月の指数) [沖縄]](https://www.nli-research.co.jp/files/user/report/nlri_report/2024/report240405-1-16_2-655x325.jpg?v=1712297807)
高温指数は、9月に高い水準となった。一方、海面水位指数は、4月、5月、9月に高水準を付けた。また、湿度指数は、6月、8月、12月に上昇した。これら3つの指数が寄与する形で、8月、9月、12月に合成指数が高い水準となった。
高温指数と海面水位指数の2つは、長らく合成指数を上回る水準で推移し続けている。高温指数は、上昇基調にあり、2010年代半ば以降は上昇の勢いが増している。海面水位指数も、2020年代に上昇傾向を強めている。
湿度指数は、1990年代後半以降マイナスで推移していたが、2010年代に急上昇し、プラスに転じている。2020年代は、0.5を上回る水準で落ち着いている。
低温指数は、低下を続けている。気温の指数として高温指数とあわせてみると、極端な高温の日が増加する一方、極端な低温の日は減少している、と言える。
降水指数と乾燥指数は、いずれもゼロ近辺で推移している。風指数は、概ね0~0.5の範囲内での変動となっている。この3つの指数については、近年、大きな上昇や低下の動きは見られていない。
まとめると、2023年は高温指数と海面水位指数が大きく上昇した。一方、降水指数と湿度指数は大きな変化はなかった。その結果、合成指数の上昇が引き起こされ、1971年以降の最高水準の更新につながったものといえる。
[2023年の各月の動向]
高温指数は、3月、8月、9月に非常に高い水準となった。特に、9月には、5に迫る水準にまで上昇した。一方、1月、10月、11月は、他の月に比べて低い水準にとどまった。
海面水位指数は、6月と9月に高かった。その一方、3月、11月、12月は低かった。
降水指数と湿度指数の変動は、年間を通じて、それほど大きくなかった。
まとめると、2023年は、春先(3月)や盛夏~残暑の時期(8月、9月)に、参照期間(1971~2000年)に比べて極端な高温の日が多かった。また、6月や9月には、海面水位が参照期間よりも高い状態が多かった。その結果、3月、6月、8月、9月に合成指数が高水準に達することとなったと言える。
5――おわりに(私見)
今後、気候変動問題が保険事業に与える影響をみていくために、気候指数と各種保険事故の発生動向を関連付けるような展開が考えられる。例えば、生命保険事業に関しては、まず、気候指数と死亡率の関係を定式化する。その上で、将来の気候指数の推移に応じて、死亡率がどのように変化し、死亡保険金の支払いがどのような影響を受けるか、といったシナリオを作成することが挙げられる。
グローバルに目を向ければ、地球温暖化を背景とした気候変動の問題は、これからますます注目度が高まるものと考えられる。スーパー台風の襲来や、豪雨、豪雪による激甚災害など、急性リスクの懸念はさらに高まっている。一方、南極やグリーンランドの氷床の融解、アフリカ山岳地域等の氷河の消失、ヨーロッパなどでの熱波や干ばつの発生など、慢性リスクの発生が、人々の生活に深刻な影響を及ぼし始めている。
こうしたリスクを定量的に示すために、引き続き、気候指数の検討を進めるとともに、気候の極端さの定量化に関する海外の調査・研究動向のウォッチを続けていくこととしたい。
(2024年04月05日「基礎研レポート」)

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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