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管理職志向が強いのはどんな女性か~「中高年女性会社員の管理職志向とキャリア意識等に関する調査~『一般職』に焦点をあてて~」より(6)

生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子
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1――はじめに
女性活躍推進法に基づいて、従業員101人以上の企業は、女性管理職の数値目標などを盛り込んだ一般事業主行動計画を策定しているが、まだ目標に届いていないところは多い。従って、女性社員の中から、“潜在的希望者”を含めて管理職志向がある人を見出し、育成し、登用していくことは、企業にとっても重要な課題となっているだろう。同時に、女性社員たちの管理職志向を全体的に高めていくことも必要だと考えられる。従って本稿では、潜在的希望者を含めて、管理職志向を持つ中高年女性とは、どういった女性なのかについて、上述の調査結果を用いた様々なクロス分析のデータから報告する。
1 調査対象は、全国の、従業員500人以上の大企業に正社員として勤める45歳以上で、コース別雇用管理制度がある企業では「一般職」と「総合職」の女性。コース別雇用管理制度がない企業では、「主に基幹的な業務や総合的判断を行う職種」と「主に定型的な業務を行う職種」に就く女性。及び、定年前にこれらのコースや職種に就き、定年後も同じ会社で、継続雇用で働いている女性。有効回答数1,326(「一般職」1,000、「元一般職」39、「総合職」258、「元総合職」29)。
2 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77584?site=nli
3 坊美生子(2024)「企業や家庭の状況が変われば、管理職を希望する中高年女性は『4人に1人』まで増える~女性登用の数値目標を達成する鍵は企業と家庭にあり~」(基礎研レポート)
2――管理職志向が強いのはどんな女性か
まず、上述のアンケートから、現在は管理職に就いていない中高年女性1,159人について、個人年収(勤務先での給与)と管理職志向とのクロス分析を行った。なお、管理職志向については、将来的に管理職に「就きたい」と回答した人と、「職場の状況次第では就いても構わない」、「家庭の状況次第では就いても構わない」と回答した人を合わせて「希望層」とし、「就きたくない」と回答した人を「非希望層」として分析した。
結果は図表1の通りである。年収階級別に見ると、「600万円~800万円未満」、「800万円~1,000万円未満」、「1,000万円以上」の高収入層では、管理職希望層が3~5割弱となり、全体より高かった。高年収層は、高度なスキルや専門知識を持っているか、幅広い職務経験があると考えられることから、仕事にやりがいを感じ、キャリアへの意識が高いと考えられる。あるいは逆に、待遇が良いために、現在の仕事に「やりがい」を感じ、管理職昇進にも意欲を持っている可能性もある。
一方、低年収であることと、管理職希望との関連は見られなかった。
次に、中高年女性が就いているコース(「総合職」または「一般職」)・年齢階級と、管理職志向をクロス分析した。因みに、当調査では、勤務先にコースがある人を「総合職」または「一般職」と分類しただけではなく、勤務先にコースがなくても、職場において主に基幹的な業務に就いている人を「総合職」、主に定型的な業務にうち就いている人を「一般職」に分類して分析した。
その結果、管理職希望層の割合が最も高かったのは、「総合職45~59歳」と「総合職50~54歳」(約4割)だった(図表2)。ただし、「一般職45~49歳」でも希望層は約3割に上り、3番目に高かった。「一般職55~59歳」と「元一般職60歳以上」、「総合職55~59歳」の希望層は全体より低かったが、いずれも2割弱~約2割いることが分かった。
コースごとの違いに着目すると、50歳代前半までは「総合職」の方が「一般職」よりも希望層が10ポイント以上高いが、50歳代後半では、ほとんど差がなくなっていた。また、図表には示していないが、すべての年齢階級をまとめた「一般職」全体の管理職希望層は約2割、「総合職」全体の管理職希望層は約3割となり、両コースには約10ポイントの差しかなかった。
コース別雇用管理制度が導入された男女雇用機会均等法施行当時は、もともと「総合職」には幹部候補の役割、「一般職」には補助的な役割が期待されていたが、少なくとも均等法から40年近く経った現在は、中高年となった一般職女性のうち約2割が管理職希望を持っており、一般職の中にも昇進意欲が強い層が一定数いることが分かった。
次に、職場の様々な状況に対する満足度と、管理職志向をクロス分析した。具体的には、図表3「小項目」の列に示した様々な状況に対して、「満足」と回答した女性の管理職志向を分析した。
その結果、「仕事の内容」や「仕事のやりがい」、「評価制度」など、職務や評価への満足度が高い層は、希望層の割合が全体よりも高かった。また、「人事異動ローテーションや転勤の範囲」、「職種転換制度の有無や運用」、「管理職登用の機会」など、人事関連についても、満足度が高い層は、軒並み希望層が高かった。 「教育・研修機会」や「同僚との相互のサポ―ト体制」、「職場の雰囲気」、「現在の女性管理職の人数」など、教育や組織運営・組織風土に関わる項目、福利厚生等への満足度が高い層も、希望層が高かった。「働き方」への満足度が高い層と、管理職希望との関連は見られなかった。
このように、中高年女性が、職場において、現在の仕事や評価制度、人事、教育に満足して「働きがい」を感じ、また、職場の雰囲気や福利厚生などに満足して「働きやすさ」を感じている場合は、管理職志向も強いと言える。
(2024年03月29日「基礎研レター」)

03-3512-1821
- 【職歴】
2002年 読売新聞大阪本社入社
2017年 ニッセイ基礎研究所入社
【委員活動】
2023年度~ 「次世代自動車産業研究会」幹事
2023年度 日本民間放送連盟賞近畿地区審査会審査員
坊 美生子のレポート
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