2024年03月14日

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1.はじめに

大阪のオフィス市場は、昨年の新規供給が前年の約1割の水準に留まるなか、空室率は改善基調で推移した。しかし、今年は新規供給量が約8.7万坪に達し過去最大となる見込みで市場への影響が注目される。本稿では、大阪のオフィス市況を概観した上で、2028年までの賃料予測を行う。

2.大阪オフィス市場の現況

2.大阪オフィス市場の現況

2-1.空室率および賃料の動向
大阪市のオフィス空室率は、2020 年4月の緊急事態宣言の発令以降、上昇基調で推移していたが、2023年に入り改善に向かった。三幸エステートによると、2024年3月時点の空室率は4.0%(前年比▲0.5%)となった(図表-1)。

空室率をビルの規模1別にみると、「大規模3.1%(前年比▲0.8%)」、「大型3.7%(同▲0.3%)」、「中型5.9%(同▲0.2%)」、「小型6.6%(同▲0.1%)」となり、すべての規模が前年から低下した(図表-2)。2023年は大規模ビルの新規供給が少ないなか、立地改善や建物設備のグレートアップ等を目的とした移転が増加し、空室の消化が進んだ。
図表-1 主要都市のオフィス空室率/図表-2 大阪オフィスの規模別空室率
空室率が回復した一方で、成約賃料には頭打ち感がみられる。2023年下期の大阪市の成約賃料は、前期比▲4.6%、前年比▲3.1%となった(図表-3)。
図表-3 主要都市のオフィス成約賃料(東京都心5区除き)(オフィスレント・インデックス)
2023年の空室率と成約賃料の動き(前年比)を主要都市で比較すると、空室率は、大阪市が低下、都心5区、名古屋市、札幌市が概ね横ばい、仙台市と福岡市は上昇した。また、成約賃料は、大阪市が下落、福岡市が概ね横ばい、その他都市は上昇となった(図表-4)。

賃料と空室率の関係を表した大阪市の賃料サイクル2は、2012年下期を起点に「空室率低下・賃料上昇」局面が続いていたが、2020年下期から「空室率上昇・賃料上昇」局面へ移行し、現在は、次の「空室率上昇・賃料下落」局面に差し掛かりつつある(図表-5)。
図表-4 2023年の主要都市のオフィス市況(前年比)/図表-5 大阪オフィス市場の賃料サイクル
 
1 三幸エステートの定義による。大規模ビルは基準階面積200坪以上、大型は同100~200坪未満、中型は同50~100坪未満、小型は同20~50坪未満。
2 賃料サイクルとは、縦軸に賃料、横軸に空室率をプロットした循環図。通常、(1)空室率低下・賃料上昇→(2)空室率上昇・賃料上昇→(3)空室率上昇・賃料下落→(4)空室率低下・賃料下落、と時計周りに動く。
2-2.需給動向
三鬼商事によると、大阪ビジネス地区における2023年末の賃貸可能面積(総供給面積)は、222.2万坪(前年比+0.0万坪)となり、前年末から横ばいであった。

これに対して、賃貸面積(総需要面積)は、213.1万坪(前年比+2.2万坪)となった。この結果、大阪ビジネス地区の空室面積は9.1万坪(前年比▲2.2万坪)となり前年から▲19%減少した。(図表-6)。
図表-6 大阪ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積
図表-7 大阪ビジネス地区の賃貸可能面積・賃貸面積・空室面積の増減
2-3.エリア別動向
2023年末時点で賃貸可能面積が最も大きいエリアは「梅田地区(34.5%)」で、次いで「淀屋橋・本町地区(30.9%)」、「船場地区(14.3%)」、「新大阪地区(10.2%)」、「心斎橋・難波地区(5.2%)」、「南森町地区(5.0%)」の順となっている(図表-8)。

賃貸可能面積は、「心斎橋・難波地区」(前年比+2.6千坪)と「淀屋橋・本町地区」(同+1.9千坪)で増加した一方、「梅田地区(同▲3.5千坪)」と「南森町地区(同▲0.9千坪)」で減少し、全体では前年末から横ばいであった。(図表-9)。

これに対して、賃貸面積は、「新大阪地区(前年比+9.4千坪)」、「梅田地区(同+7.7千坪)」、「淀屋橋・本町地区(同+3.7千坪)」「心斎橋・難波地区(同+2.6千坪)」等で増加した。この結果、空室面積は全体で▲21.5千坪の減少となった。
図表-8 大阪ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2023年)/図表-9 大阪ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2023年)
エリア別の空室率(2023年12月末)をみると、「船場地区5.0%(前年比+0.3%)」を除く全てのエリアで低下した。特に、「新大阪地区4.8%(同▲4.1%)」は、築浅の大型ビルを中心に空室の消化が順調に進み大幅に低下した(図表-10左図)。

また、エリア別の募集賃料(2023年12月時点)は、全てのエリアで上昇し、特に「南森町地区(前年比+2.3%)」と「淀屋橋・本町地区(同+1.4%)」の上昇率が大きくなった(図表-10右図)。
図表-10 大阪ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

経歴
  • 【職歴】
     2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
     2018年 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
     一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)

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