コラム
2024年03月11日

投資部門別売買動向(24年2月)~海外投資家は4カ月連続買い越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2月の日経平均株価は、月初は堅調な米経済指標を受けて米国の早期利下げ期待が後退し、3万6,000円台前半で一進一退の動きであったが、8日に日銀がマイナス金利解除後も緩和的な姿勢を継続するとの観測から3万6,863円まで上昇した。その後も、人工知能(生成AI)分野の成長期待を背景とした日米半導体関連株の上昇や、一時1ドル150円台まで円安が進行したことなどを好感し、15日には3万8,157円まで上昇した。下旬には、米国のエヌビディアの予想を大幅に上回る好決算を受け、日経平均株価は22日に3万9,099円と、約34年ぶりに終値で史上最高値(3万8,195円)を更新した。その後も3万9,000円台で堅調に推移し、月末は3万9,166円で終えた。このように日経平均株価が推移するなか、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、信託銀行、個人が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2024年2月(2月5日~3月1日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家が現物と先物の合計で9,937億円の買い越しと、2月最大の買い越し部門であった。図表2は、海外投資家の売買動向を現物と先物に分けて集計したものである。中長期資金が多いと思われる現物は、1月には全週で買い越しだったものの、2月は第3週(2月19日~22日)に売り越しに転じた。現物と先物の合計においては、2023年11月以降4カ月連続の買い越しを記録しているが、現物の買いの勢いは1月に比べて若干落ち着きを見せており、中長期的な資金流入は徐々に穏やかになっている可能性がある。
図表2 海外投資家は4カ月連続買い越しも、現物は第3週に売り越し
また、2月は事業法人も現物と先物の合計で2,329億円の買い越しと、2021年6月から33カ月連続で買い越した。
図表3 事業法人は33カ月連続買い越し
一方で、信託銀行は現物と先物の合計で2月に1兆1,494億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。2024年1月以降2カ月連続で売り越しを記録しており、日経平均株価が上昇するなか、利益確定の売りが優勢となったようだ。ただし、例年、年度末には配当金の再投資などにより買い越す傾向が見られる。そのため、3月は、特に最終週に向けて買いが優勢になる可能性が高いだろう。
図表4 信託銀行は2カ月連続の売り越し
また、2月は個人も現物と先物の合計で1,448億円の売り越しとなった。現物と先物合計で2023年11月以降4カ月連続の売り越しを記録した。しかし、日経平均株価が上昇を続け、史上最高値を更新した2月の売り越し金額は1月以前と比較して少なくなっており、市場においては、個人の利益確定と買い遅れを懸念する動きがあり、売りと買いが交錯している様子が見られる。
図表5 個人は4カ月連続の売り越し
図表6は、2023年1月末を基準値100として、2月の代表的な指数の推移をまとめたものである。TOPIXコア30の大型株はTOPIXをアウトパフォームした一方で、TOPIX Mid 400やTOPIX Smallなどの中小型株はTOPIXをアンダーパフォームした。1月に続いて、海外投資家は大型株を中心に買い越していたようだ。
図表6 TOPIXコア30(大型株)が指数をアウトパフォーム
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2024年03月11日「研究員の眼」)

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