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- 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の開示状況(24年1月)
コラム
2024年01月17日
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図表2は、プライム市場上場企業のうち3月期決算企業の開示状況を、PBRと時価総額別で集計し、23年12月末時点と23年7月14日時点を比較したものである。PBRで見ると、PBR1倍未満の企業ほど開示が進展した。一方、時価総額で見ると、時価総額が大きい企業ほど開示が進展した。全体では、検討中を含む開示企業の割合で見ると、PBR1倍未満かつ時価総額1,000億円以上の企業の開示が81%と最も高かった。それに対し、PBR1倍以上かつ時価総額250億円未満の企業の開示が30%と最も低かった。PBR1倍以上の企業は1倍未満の企業に比べて、今回の開示要請に対する危機感が小さかったようだ。また、時価総額が小さい企業は大きい企業と比べて、今回の開示要請に対応する知見やリソースが不足している可能性があると思われる。
東京証券取引所は、今後の取組みとして以下の3つを予定している。(1)今回公表した一覧表を毎月更新すること、(2)投資者の視点を踏まえた対応のポイントや、投資者の高い支持が得られた取組みの事例について、企業の規模や状況に応じていくつかのパターンを取りまとめ、公表すること(24年1月~2月予定)、(3)企業の開示状況や投資家等からのフィードバック等を概ね半年に1回程度集計すること(24年1月予定)。特に、(2)(3)の好事例の公表や投資家からのフィードバックは、経営リソースを対応に向けることが難しい小規模企業や、現在「検討中」としている企業にとって参考になると思われる。
今回の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況の集計方法は、直近に提出されたコーポレート・ガバナンスに関する報告書にキーワードが記載されているか否かで機械的に集計されており、内容の質は問われていない。今回の要請をきっかけに、資本コストへの意識が高まり、企業と投資家の建設的な対話が活性化することを通じて、中長期的な企業価値の向上が期待されている。企業の経営戦略等における変化への道のりはまだ始まったばかりである。
今回の「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示状況の集計方法は、直近に提出されたコーポレート・ガバナンスに関する報告書にキーワードが記載されているか否かで機械的に集計されており、内容の質は問われていない。今回の要請をきっかけに、資本コストへの意識が高まり、企業と投資家の建設的な対話が活性化することを通じて、中長期的な企業価値の向上が期待されている。企業の経営戦略等における変化への道のりはまだ始まったばかりである。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2024年01月17日「研究員の眼」)
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経歴
- 【職歴】
2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
2015年 ニッセイ基礎研究所入社
2020年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)
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