コラム
2024年01月12日

投資部門別売買動向(23年12月)~事業法人は31カ月連続買い越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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2023年12月の日経平均株価は、日米の金融政策の見通しや為替市場の動向に影響を受けた。上旬は、米国景気の先行き懸念から米金利が低下し、為替市場で1ドル146円台と約3カ月ぶりの円高に推移したことを嫌気して、日経平均株価は5日に3万2,775円まで下落した。さらに、7日には日銀総裁の発言を受けて金融政策の早期修正観測が高まり、8日には3万2,307円まで下落した。中旬は、米FOMCの結果を好感して上昇した米国株を背景に日経平均株価も上昇したが、一時1ドル141円台前半まで進行した円高が懸念され、3万2,000円台後半で推移した。その後、19日の日銀の金融政策決定会合で現状維持が決定されたことで安心感が広がり、20日に3万3,675円まで上昇した。下旬は、円高進行に対する懸念が指数の上値を抑え、月末は3万3,464円で終えた。このように日経平均株価が推移する中、海外投資家、事業法人が買い越す一方で、個人、信託銀行が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年12月(12月4日~29日)の投資部門別の売買動向をみると、事業法人が現物と先物の合計で6,703億円の買い越しと、12月最大の買い越し部門であった。2021年6月から31カ月連続で買い越している。
図表2 事業法人は31カ月連続買い越し
海外投資家は、現物と先物の合計で1,671億円と買い越した。現物は4,946億円の売り越しと2カ月ぶりに売り越したが、先物は6,617億円買い越したことで、全体では小幅の買い越しとなった。
図表3 現物は売り越し、先物は買い越し
一方で、個人は現物と先物の合計で12月に3,575億円の売り越しと、最大の売り越し部門であった。週間ごとに見ると、個人は日経平均株価が下落した第1週(12月4日~8日)は5,371億円買い越したが、第2週~第4週(12月11日~29日)は8,947億円の売り越しに転じた。また、12月は信託銀行も現物と先物の合計で1,252億円の売り越しとなった。
図表4 個人は2カ月連続の売り越し
では、2023年全体では投資部門別売買動向にはどのような特徴があったのだろうか。図表5は、2023年1月~12月の投資部門別売買動向を集計した結果である。主な買い越し部門は、海外投資家(6.29兆円)と事業法人(4.88兆円)であった。一方、主な売り越し部門は信託銀行(5.41兆円)と個人(3.21兆円)だった。
図表5 2023年投資部門別売買動向
図表6は、2023年の各投資部門別の現物と先物の売買動向を、週次累積で示したものである。海外投資家は、東証の要請による企業改革への期待、米著名投資家による日本株への強気な姿勢、緩和的な金融環境に対する安心感などを背景に、4月第1週から10週連続で買い越し、この期間中に日経平均株価は約4,000円上昇した。また、企業の自社株買いが反映される事業法人は、年間を通して買い越しを続けた。2023年の上場企業(TOPIX構成銘柄)の自社株買い設定額は9.4兆円に達し、自社株買いの実施に伴う事業法人の買い越しは今後も続きそうである。一方、信託銀行と個人は、指数上昇のなかで利益確定の売却が優勢となった。
図表6 23年前半に海外投資家は大幅買い越し
2024年初からの日経平均株価は1月12日終値時点で3万5,577円と、2023年末比で約2,100円の大幅な上昇を記録した。1月18日には、1月第2週(1月9日~12日)の週間投資部門別売買動向の発表が予定されており、今回の買いの主体と投資部門別の売買規模に注目が集まっている。特に中長期資金と見られる海外投資家による現物の買いが確認されれば、日本株への期待がさらに高まるだろう。合わせて、新NISAの影響がどの程度及ぶのか、個人の売買動向も注目されている。
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2024年01月12日「研究員の眼」)

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