コラム
2023年10月13日

TOPIX除外予定銘柄の再評価~復活・残留は43社、正式に除外が決定した企業は439社~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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東京証券取引所は、2023年10月6日に2025年1月末にTOPIXから除外予定の段階的ウエイト低減銘柄の再評価の結果を公表した。再評価で43社が段階的ウエイト低減から解除されTOPIXに残る一方、439社が2025年1月末でTOPIXから除外されることが正式に決定した。

■ 段階的ウエイト低減銘柄の判定と再評価のプロセス

TOPIXは、もともと旧東証1部上場銘柄で構成されており、2022年4月4日の東証の新市場区分移行後も、旧東証1部上場銘柄は選択する市場に関わらず継続してTOPIX構成銘柄として採用された。但し、市場区分見直しに伴って流通株式時価総額100億円未満の銘柄については、図表1のように段階的ウエイト低減銘柄と判定し、2022年10月から構成ウエイトを10段階で低減し、2025年1月末にTOPIXから完全に除外することになった。
図表1 段階的ウエイト低減銘柄の判定と再評価のプロセス
段階的ウエイト低減銘柄は、2022年10月最終営業日から四半期ごとに10回に分けて組入れ比率低減が実施され、2025年1月最終営業日にTOPIXから完全に除外される。但し、2023年10月に再評価が行われ、再評価時に流通株式時価総額が100億円以上であれば、TOPIXの構成銘柄として残ることができ、これまで引き下げた分の組入れ比率も段階的に回復されることになっていた。
 
東証は2021年7月、2022年10月に流通株式時価総額の判定を実施し、2022年10月7日に段階的ウエイト低減銘柄として493社を公表した。その後、上場廃止となった企業もあり、今回の再評価の対象となった482社のうち43社は段階的ウエイト低減から解除されTOPIXに残留し、残る439社は段階的ウエイト低減が継続され2025年1月末でTOPIXから除外されることとなった。

■ 段階的ウエイト低減銘柄に指定された企業の株価推移

段階的ウエイト低減銘柄に指定された銘柄の株価はどのように推移したのだろうか。図表2は、段階的ウエイト低減銘柄に該当する企業の株価推移をまとめたものである。2022年10月7日に東証が公表した段階的ウエイト低減銘柄のうち、再評価でTOPIXへの残留が決まった43社を残留企業(青色)、段階的ウエイト低減が継続される439社のうち期間中の株価が取得できた437社を除外企業(赤色)とした。2022年10月7日の終値を基準(100)として、各企業の株価の累積騰落率を日次で計算し、それぞれの単純平均を集計した。段階的ウエイト低減銘柄はTOPIXでは小型株に該当するため、比較対象としてTOPIX(灰色)と合わせてTOPIX Small(黄色)も追加した。
図表2 段階的ウエイト低減銘柄の株価推移 
除外企業(赤色)の株価は、単純平均するとTOPIXやTOPIX Smallとほぼ連動した動きとなった。段階的ウエイト低減銘柄は最終的にTOPIXから除外されることもあり、積極的には買いにくいと思われたが、実際のところ指数を大きく下回って推移してはいなかった。それに対して残留企業は、株価の単純平均が集計期間を通して約50%上昇、中央値でも46%上昇しており、特に2022年11月以降にTOPIXやTOPIX Smallを大きく上回っていた。2022年10月7日に段階的ウエイト低減銘柄に指定されて以降、積極的な買いが入りづらい環境のなかでも着実に投資家からの評価を高めてきたことが確認できる。その結果、TOPIXに残留することができたといえよう。

■ 再評価に対する株式市場の反応

では、株式市場では再評価に対してどのように反応したのだろうか。図表3は、2023年10月6日の再評価公表前後の株価の騰落率を確認したものである。翌営業日の10月10日に、残留企業43社すべての株価は上昇し、単純平均(青色)で見るとTOPIXを1.2%、TOPIX Smallを1.5%上回った。今後のTOPIXに連動するファンドからの資金流入が期待できることもあってか、とりあえず株式市場では残留を好感した様子である。その一方で除外企業の単純平均(赤色)はTOPIXを1.4%、TOPIX Smallを1%下回っていた。TOPIXから正式に除外されることが決定されたことや、今後のTOPIXに連動するファンドからの売却が続くことが嫌気されたのかもしれない。
図表3 TOPIX残留企業の株価は全社が上昇

■ TOPIX構成銘柄は約2割減少

なお、図表4は2023年10月6日時点のTOPIX構成銘柄をもとに、今回の段階的ウエイト低減銘柄の再評価と、10月20日に実施予定の経過措置の適用期間の終了に伴うスタンダード市場への選択申請を市場別に反映させたものである。2023年10月6日時点のTOPIX構成銘柄は2,155社あり、段階的ウエイト低減銘柄439社が2025年1月末にTOPIXから除外されると、構成銘柄は約2割減少する。これまでと比べてかなり構成銘柄が絞られたが、まだ1,700銘柄以上もあることを踏まえると、TOPIXの改革は道半ばと言えそうである。
図表4 TOPIX構成銘柄は約2割減
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年10月13日「研究員の眼」)

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