2024年03月11日

2023~2025年度経済見通し-23年10-12月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2023年1月に前年比4.2%と1981年9月以来41年4ヵ月ぶりの高い伸びとなった後、政府による電気・都市ガス代の負担緩和策の影響などから鈍化傾向が続き、2024年1月には前年比2.0%となった。
 
2022年1月から実施されてきたガソリン、灯油等に対する燃料油価格激変緩和措置は2024年4月末まで継続、2023年2月から実施されている電気・都市ガス代の激変緩和措置は2024年4月使用分まで継続し、5月使用分では激変緩和の幅を縮小することとなっている。

足もとのガソリン店頭価格は、補助金がなければ1リットル当たり190円台となっており、円高、原油安が大きく進まない限り、2024年5月でも政府が目標としている175円を大きく上回る。ガソリン、灯油等に対する激変緩和措置は2024年5月以降も継続される公算が大きい。
激変緩和措置による消費者物価(除く生鮮)への影響 今回の見通しでは、ガソリン、灯油等の激変緩和措置は、2024年度末まで現行どおり、2025年度は補助率を縮小した上で継続、電気・都市ガス代の激変緩和措は、2024年度末まで補助額を縮小した上で継続、2025年度には終了することを前提とした。

激変緩和措置による消費者物価上昇率への影響は、2023年10-12月期まではコアCPI上昇率の押し下げ要因となっていたが、2024年1-3月期以降は押し上げ要因となるだろう。激変緩和措置によるコアCPI上昇率への影響を年度ベースでみると、2022年度が▲0.7%程度、2023年度が▲0.3%程度、2024年度が0.4%程度、2025年度が0.4%程度となることが見込まれる。
財・サービス別の消費者物価(生鮮食品を除く) 物価高の主因となっていた輸入物価の上昇には歯止めがかっており、財価格の上昇率はすでにピークアウトしている。食料(生鮮食品を除く)は輸入物価高騰に伴う原材料費の上昇を価格転嫁する動きが広がり、2023年8月には前年比9.2%まで伸びが加速した。その後、川上段階(輸入物価、国内企業物価)の食料品価格の落ち着きを反映し、2024年1月には同5.9%まで鈍化した。

一方、人件費との連動性が高いサービス価格は2023年8月以降、前年比で2%台の伸びが続いており、2024年1月には前年比2.2%と財(生鮮食品を除く)の上昇率(同1.9%)を上回った。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測 コアCPI上昇率は、政府による各種支援策に左右される展開が続いているが、基調としては上昇ペースの鈍化傾向が続いている。2024年2月は前年同月に開始された激変緩和措置による押し下げが一巡し、電気代、都市ガス代の下落率が大きく縮小することから、2024年1月の前年比2.0%から一気に2%台後半まで伸びを高める可能性が高い。コアCPI上昇率が日銀の物価目標である2%を割り込むのは、円安による押し上げ効果が減衰し、食料品などの財価格の上昇率のさらなる鈍化が見込まれる2024年度後半となることが予想される。
財・サービス別には、2022年度は物価上昇のほとんどがエネルギー、食料(除く生鮮食品、外食)を中心とした財の上昇によるものだったが、物価上昇の中心は財からサービスにシフトしつつある。2024年度以降は、消費者物価上昇率への寄与度はサービスが財を上回るだろう。

コアCPIは、2022年度の前年比3.0%の後、2023年度が同2.8%、2024年度が同2.1%、2025年度が同1.5%、コアコアCPIは2022年度の前年比2.2%の後、2023年度が同3.9%、2024年度が同1.9%、2025年度が1.5%と予想する。
日本経済の見通し(2023年10-12月期2次QE(3/11発表)反映後)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2024年03月11日「Weekly エコノミスト・レター」)

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