2024年02月05日

インドネシア経済:23年10-12月期の成長率は前年同期比+5.04%~輸出と政府消費が増加して5%成長に回復

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インドネシアの2023年10-12月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.04%増(前期:同4.94%増)と上昇し、市場予想2(同+5.00%)を若干上回る結果となった。

なお、2023 年通年の成長率は前年比5.05%増(2022年:同5.31%増)と低下した。

10-12月期の実質GDPを需要項目別に見ると、輸出と政府消費の回復が成長率上昇に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比4.78%増(前期:同5.08%増)と低下した。費目別に見ると、輸送・通信(同7.24%増)とホテル・レストラン(同6.35%増)、住宅設備(同4.85%増)が堅調に拡大した一方、食料・飲料(同2.56%増)や保健・教育(同3.66%増)が伸び悩んだ。

政府消費は前年同期比2.81%増となり、前期の同3.93%減から増加した。

総固定資本形成は前年同期比5.02%増(前期:同5.77%増)と鈍化した。建設投資(同6.42%増)が加速したものの、機械・設備投資(同2.00%増)が伸び悩んだ。

純輸出は成長率寄与度が+0.45%ポイント(前期:+0.46%ポイント)となり横ばいの結果だった。まず財・サービス輸出は前年同期比1.64%増(前期:同3.91%減)と上昇し、3四半期ぶりのプラス成長となった。輸出の内訳を見ると、サービス輸出(同17.91%増)の好調が続いたほか、財輸出(同0.40%増)が小幅ながらプラスとなった。また財・サービス輸入は同0.15%減(前期:同6.75%減)とマイナス幅が縮小した。
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第三次産業と第二次産業がそれぞれ鈍化した(図表2)。

第三次産業は前年同期比5.50%増(前期:同5.79%増)と低下し、過去5四半期で最も低い伸びにとどまった。内訳を見ると、運輸・倉庫(同10.33%増)とホテル・レストラン(同7.89%増)、ビジネスサービス(同7.62%増)、情報・通信(同6.74%増)が順調に増加したものの、構成割合の大きい卸売・小売(同4.09%増)をはじめ、金融・不動産(同4.73%増)、行政・国防(同1.61%増)、教育(同2.63%増)が伸び悩んだ。

第二次産業は前年同期比5.75%増(前期:同5.82%増)と小幅に低下した。内訳を見ると、鉱業(同7.46%増)と建設業(同7.68%増)、電気・ガス・水供給業(同8.36%増)が加速したものの、全体の2割を占める製造業(同4.07%増)が鈍化した。

第一次産業は前年同期比1.12%増(前期:同1.49%増)と小幅に低下した。
 
1 2024年2月5日、インドネシア統計局(BPS)が2023年10-12月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

10-12月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済はコロナ禍からの経済活動の正常化により、2022年は実質GDPが前年比+5.31%(2021年:同+3.70%)と上昇したが、2023年は物価高と金利上昇を受けて景気拡大ペースが鈍化した。今回発表されたGDP統計では2023年10-12月期の成長率が前年同期比+5.04%(7-9月期:同+4.94%)と小幅に上昇したものの、2023年通年の成長率も前年比+5.05%となり前年を下回る結果となった。

10-12月期は輸出の底入れと政府消費の回復により成長率が小幅に上昇した。財貨輸出は石炭やパーム油、ニッケルなど主力輸出品の価格下落や世界経済の減速による主要貿易相手国の需要鈍化を受けて過去2四半期マイナス成長が続いたが、10-12月期は石油・ガスの出荷量が増加して前年同期比+0.40%となり小幅ながらプラスの伸びとなった。サービス輸出(同+17.91%)はインバウンド需要の動きが鈍っているが、依然として回復傾向にある(図表3)。昨年12月の外国人旅行者数は前年同月比+20%の114万人となり、コロナ禍前の8割超の水準まで回復した。また政府消費は前年同期比+2.81%となり、下振れていた前期の同▲3.93%から増加した。

一方、民間消費(同+4.78%)は前期の同+5.08%から鈍化して3四半期ぶりに+5%を下回った。インドネシアでは2月14日に大統領選と総選挙を予定しており、選挙運動は昨年11月28日に開始して2月10日まで行われる。政党による選挙キャンペーンにより10-12月期の非営利団体の消費支出は前年同期比+18.11%と大幅に増加したものの、GDPの半分以上を占める家計消費支出(前年同期比+4.47%)の鈍化を相殺するには至らなかった。また投資(前年同期比+5.02%)は建設投資の増加により+5%を上回る伸びが続いているが、インドネシア中銀の金融引き締めや輸出低迷などによる機械・設備投資の停滞が重石となり、投資全体では伸び悩んだ。

先行きは景気の伸び悩みが続きそうだ。今年は財・サービス輸出の回復が見込まれるが、一次産品価格は低迷しており財輸出の大幅な増加は見込みにくく、またインバウンド需要の回復ペースも緩やかなペースにとどまるだろう。また今年はインドネシア中銀の金融緩和が予想されるが、米国の利下げ転換を待って行われるものとみられるため、年内は現在の金融引き締めの影響が経済全体に浸透して内需を抑制するだろう。そして2月の大統領選は総投票数の過半数を獲得する候補者がいなければ、6月の決選投票にもつれこむことになる。この場合は政治の先行き不透明感が続くため、民間企業の設備投資を控える動きは続くとみられる。もっとも今年1月の世論調査によると、最有力候補であるプラボウォ・スビアント国防相(グリンドラ党党首)とジョコ大統領の長男ギブラン・ラカブミン氏のペアの支持率が初めて50%を超えた。1回目の投票で決着がつく場合は民間企業による投資再開のタイミングが早まり、内需の底堅さが増す展開も予想される。
(図表3)インドネシアの外国人観光客数/(図表4)インドネシアのインフレ率と政策金利
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2024年02月05日「経済・金融フラッシュ」)

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