2024年01月15日

インド消費者物価(23年12月)~12月のCPI上昇率は食品インフレで2ヵ月連続の上昇

経済研究部 准主任研究員 斉藤 誠

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インド統計・計画実施省が1月12日に公表した消費者物価指数によると、23年12月の消費者物価(以下、CPI)は前年同月比5.7%となり、11月の同5.6%から上昇した(図表1)。事前の市場予想1(同5.9%)を小幅に下回る結果であった。
 

地域別の上昇率をみると、都市部は前年同月比5.5%(前月:同5.3%)、農村部は同5.9%(前月:同5.8%)となり、それぞれ小幅に上昇した。

12月のCPIの内訳をみると、燃料・電力の下落が続いたものの、食品価格が上昇してCPIを押し上げた。

まず食品は前年同月比9.5%となり、前月の同8.7%から上昇して4カ月ぶりの高水準となった(図表2)。食品のうち、価格変動の大きい野菜(同27.6%)は前月の同17.7%から更に上昇した。野菜価格は7-8月に急上昇して9-10月に一旦低下したが、11月から再び高騰している。タマネギとトマトの価格はそれぞれ前月比▲16.1%、同▲9.4%と下落したものの、オクラとニンニクの価格がそれぞれ同21.4%、同19.0%と大きく上昇した。野菜のほか、豆類(前年同月比20.7%)や穀物製品(同9.9%)、香辛料(同19.7%)、果物(11.1%)の価格が高止まりした。一方、食用油(同▲15.0%)の価格下落が続いたほか、牛乳・乳製品(同5.1%)と加工食品(同4.1%)は比較的落ち着いた値動きとなった。

燃料・電力は前年同月比▲1.0%となり、11月の同▲0.8%から減少幅が広がった。

コアCPI(食品、燃料を除く総合)は前年同月比3.9%(11月:同4.1%)となり、低下基調が続いた。保健(同5.1%)や教育(同4.8%)、衣服・靴(同3.6%)、輸送・通信(同2.0%)、家庭用品・サービス(同3.4%)など幅広い品目が11月の水準を下回った。

(図表1)消費者物価上昇率/(図表2)食品価格指数の要因分解
インフレ率は品目別にみると総じて低下傾向にあるが、CPI全体の約半分を占める食品・飲料に左右されて上下に振れる展開となっている。12月の食品価格は前年同月比で大きく上昇してCPIを押し上げたが、冬野菜の入荷により前月比では下落(▲0.9%)するなど改善の兆しがみられる。エルニーニョの悪影響により食品価格の先行きは依然不透明だが、当面は冬野菜の供給が増えるなかで食品インフレが緩やかになると予想され、インフレ率は再び低下するだろう。

インドは今年4~5月に総選挙を予定しており、政府は食品価格の安定に向けて輸出抑制策を次々と講じている。政府はタマネギ価格を抑制するため、10月末に年内までタマネギに最低輸出価格を設定して価格の安定化を図ろうとしたが、値上がりが解消しなかったため、12月7日にタマネギの輸出禁止措置に踏み切ると共に、製糖工場に対してサトウキビを使ったエタノールの生産停止(後日、数量制限に変更)を指示している。
(図表3)消費者物価上昇とインフレ目標 12月のCPI上昇率はインド準備銀行(RBI)の目標レンジである2─6%の上限に近づき、中央値(4%)との乖離幅が拡大した(図表3)。RBIは引き続きインフレ動向に注意を払いながら、金融政策を据え置くだろうが、今後野菜価格が落ち着いてインフレ率が低下に転じると来年度の利下げ開始の時期が早まる展開が予想される。
 
1 Bloomberg集計の中央値。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

経歴
  • 【職歴】
     2008年 日本生命保険相互会社入社
     2012年 ニッセイ基礎研究所へ
     2014年 アジア新興国の経済調査を担当
     2018年8月より現職

(2024年01月15日「経済・金融フラッシュ」)

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