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マイナ保険証の利用状況と意向~マイナ保険証登録者・マイナポータルを介した健診・受診記録を閲覧者はどのような人か

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子
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4――おわりに
ニッセイ基礎研究所が行った調査を使って保険証の登録状況についてみると、7割程度が既に保険証としての登録を済ませていた。まだ登録していないが登録するつもりと回答した割合は1割程度あり、合わせて8割程度はいずれ登録を済ませると考えられる。
65歳以上や、定期的な投薬・通院を要する持病がある人等受診機会が多いと思われる人や、自分の健康状態に関心がある人で、既に登録をしている割合が高かったことと、20~34歳等、受診機会が少ないと思われる人で登録する予定がないと回答する割合が高いことから、医療機関の受診等の機会が多かったり自分の健康状態に関心がある人の方が、国が考える医療DXの背景やメリットを理解しやすい可能性が考えられるほか、利用できないと困るため、登録手続きを急いで行った可能性が考えられる。また、健康状態が良い人で既に登録している割合が高いことと、健康状態が良くない人で「わからない・マイナンバーカードを受け取っていない」と回答した割合が高かったことから、健康上の問題で、マイナンバーカード取得や保険証との紐づけにおいて何らかのサポートを必要としている人もいる可能性が考えられる。また、何かをするときには情報を収集して研究する人で「まだ登録していないが登録するつもり」が高いことから、情報を集めても紐づけを行う背景やメリットが十分に伝わっていない可能性が考えられる。いろいろ情報を収集して研究する人は、全体の57.1%と人数も比較的多いことから、現在保険証との紐づけを行っていない人の中には、情報を集めても登録に至っていない可能性が考えられる。改めて、従来の保険証を廃止する理由や背景、マイナバーカードを利用するメリットを周知することが必要だろう。
続いて、マイナポータルを使った健診結果や受診記録等閲覧状況についてみると、すでに利用しているのは、今のところ自分の健康への関心が高く、マイナポータルを利用することや健診情報等の閲覧に抵抗感が少ない一部の人に限られると考えられる。また、定期的な投薬・通院を要する持病があったり、オンライン診療・処方の利用がある等の受診機会が多い人や、自分の健康に関心がある人で情報閲覧にも関心があった。受診機会が多い人では、再診時や他の症状で受診をする際、過去の健診結果や受診・薬剤情報を振り返る機会がある可能性があり、関心が高いものと考えられる。また、医療サービスや、情報利用、情報セキュリティに不安を感じている人でも情報閲覧にも関心があった。これらの不安については、不安を感じる人の方が感じない人より多く、一般的な不安だと考えられる。こういった不安を持っていても、マイナポータルを介した健診結果や受診記録等の閲覧への関心は持っており、マイナポータルによる閲覧は幅広く関心を持たれているようだ。実際に閲覧するかどうかはわからないが、閲覧した結果、自分の健康状態が把握しやすいものであれば、今後利用が増える可能性がある。
マイナンバーカードの保険証としての利用は、医療機関等でこれまでの健診結果や受診記録・薬剤記録等を活用することで、受診の度に同じような検査を繰り返し受けることを避けたり、過去の症状を踏まえて治療を進められることや、マイナポータルを介して自分自身の健康状態や処方内容を確認できることがメリットの1つである。保険証との紐づけが進んだとしても、医療機関等で過去の記録を利用や、マイナポータルを介した確認が進まなければ、従来の保険証から切り替える意味が少なくなる。マイナンバーカードを保険証として利用すること、過去の特定健診の結果や診療・薬剤情報を利用すること、自分の健診結果や受診歴、予防接種歴を閲覧すること、それぞれについて、どういったメリットがあるか示していくことが必要となるだろう。
(2024年01月30日「保険・年金フォーカス」)

03-3512-1783
- 【職歴】
2003年 ニッセイ基礎研究所入社
村松 容子のレポート
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