2024年01月19日

新NISA、50代などからの資産形成はどうするのか-新NISAをどう活用すれば良いのか。まだ間に合うのか。

金融研究部 研究員 熊 紫云

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【15年間の一括投資】
投資期間15年で1,000万円を一括投資する場合、1989年10月末から一括投資を開始するケースから2008年12月末から投資を開始するケースまで、1か月ずつずらした231ケースの最終時価残高の結果を示したものが図表3である。
【図表3】15年間の一括投資の最終時価残高(投資元本:1,000万円)
投資期間が5年、10年、15年と長くなるにつれ、最終時価残高の平均値が大きくなる。投資期間15年で最終資産残高の平均値の大きい順にランキングすると、米国株式型、先進国株式型、全世界株式型、外国債券型、国内株式型、国内債券型の順となる。この順番は投資期間5年と10年のランキングとほぼ同様である。投資元本1,000万円から、国内債券型が1,448万円、国内株式型が1,533万円まで増加しており、外国債券型が2,128万円で2倍以上に増加している。全世界株式型が2,603万円、先進国株式型が2,962万円、米国株式型が3,201万円と約3倍に増えている。

投資期間が15年だと、債券型だけでなく、全世界株式型、先進国株式型、米国株式型の元本割れケースの割合が0%となる。つまり、国内株式型を除いたこれら3つの外国株式型への投資は、上記の10年の一括投資で元本割れしていたケースでも、さらに5年保有すると、最終時価残高が元本を上回ることを示している。

一方で、国内株式型は、試算したケースの40%が「日本バブル崩壊以降」の長期低迷の影響を受け、2012年末からのアベノミクスによる量的・質的金融緩和政策などでの価格上昇の恩恵を受けていないため、15年間という長い期間投資しても元本割れケースの割合が高い状態が続いている。但し、国内株式型は2012年末からのアベノミクス以降、外国株式並みの上昇となっており、それ以前と大きく投資特性が変わったと見ることもできる。従って、今後の日本株式の投資判断では過去のデータによる試算結果のみで判断すべきでない点は注意が必要である。

最終時価残高の最大値と最小値の差については、国内債券型が978万円だが、全世界株式型が5,997万円、先進国株式型が7,021万円、米国株式型が9,764万円と相当拡大している。

投資期間が15年という十分に長い場合でも、債券型は価格変動が小さいため、大きな時価上昇を期待することが難しい。価格変動が小さいということは必ずしも良いこととは言えない。

それに対して、株式型は価格変動が大きいため、最終時価残高がかなり高くなる可能性がある。つまり、価格変動は確かにリスクではあるものの、けっして悪いこととは限らない。

例えば、米国株式型の場合、最終時価残高の最大値が1億にも達したケースがある。このケースは2008年12月末に投資を開始して、直近の2023年12月末に投資を終了しているものである。

米国株式型の最終時価残高は最悪のケースでも1,257万円で、すべてのケースで元本の1,000万円超となっている。また、確かに価格変動は大きいものの、主に時価が増加する方向での価格変動なので、むしろ、高い時価残高になる楽しみが大きいとも言える。
 
投資期間5年の場合、どの投資対象でも元本割れする可能性がある。また、株式型は短期間で様々なニュースによって株価が乱高下するため、最終的な時価残高に対する予想が難しいと言える。

投資期間10年の場合、債券型は各ケースで最終時価残高の価格変動が小さく、リスクが限定的であるので、その分、時価の増加が小さくなる。米国株式型等の外国株式型は、運が良ければ、株価低迷期に購入し、高い時期に売却することができれば極めて高い資産形成金額が期待できる。一方、運が悪いと投資終了時期に金融危機等に遭遇し、投資元本が半分以上も毀損する可能性があるが、待てば時価が回復する可能性が高い。

投資期間15年の場合、各投資対象は元本割れケースの割合がない。債券型は価格変動が小さく、大きな時価の増加を期待することが難しい。外国株式型は価格変動が大きいものの、主に時価が増加する方向での価格変動なので、むしろ、高い時価残高になる可能性が高い。
 
投資期間が15年以上ある人、もしくは投資期間が10年など短いが資金的に余裕がある人は、米国株式型等に一括投資するのが、最も良い選択となる。

2――新NISA等で資産形成はどうするのか

2――新NISA等で資産形成はどうするのか

一括投資で5年、10年、15年運用した結果を見てきたが、実際に、50代など投資期間があまり長くない人は新NISA等の税制優遇制度を活用してどのような投資対象を選べば良いのか。この章では、50代前半、50代後半と60歳以上に分けて説明していきたいと思う。

【50代前半】
一般的に50代前半の人は今後も働く期間が比較的長いため、15年や20年の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への15年以上の一括投資は、元本割れにはならない可能性が高い。そのため、資金的に余裕がある人は、貯めてきた預貯金の一部を使って、米国株式や先進国株式インデックスに連動する商品に新NISAの成長投資枠で一括投資するのが良いと思う。勿論、同様な商品への積立投資を併用するのも良い。万が一、資金的に余裕がない場合でも、今から老後資金などの準備を始めたい人は新NISAのつみたて投資枠で無理のない範囲で米国株式型等の外国株式型商品の積立投資を開始して長期に継続することが大切である。その上で、株価が大きく下落した際にでも、成長投資枠で一括投資することが良いと思われる。

【50代後半】
50代後半の人は多くの場合、10年程度の投資が可能だと考えられる。米国株式型、先進国株式型、全世界株式型への10年程度の一括投資だと、まだ元本割れの可能性がある。既にある程度資産形成が出来ていて、十分に満足しているものの、それほど経済的に余裕があるわけではない人、あまり投資経験がなく自信がない人、元本割れのリスクを取りたくない人は預貯金、個人向け国債などを活用すべきである。無理してまで新NISAを活用する必要はない。一方で、資金的にかなり余裕があり、投資経験が多少ある場合は、もし運が悪く、投資終了時期に金融危機などに遭遇し、投資元本が一時的に毀損しても、時価回復まで待つことができるので、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠で一括投資しても良いと思う。
【60歳以上】
60歳以上の人は定年等までだと5年程度の投資が可能だと考えられる。投資期間が5年だと、短期的な価格変動リスクにさらされるため、資金的に余裕があまりない人や投資経験があまりない人は、積極的にリスクをとることはお勧めしない。無理に新NISAを活用するより、預貯金や個人向け国債等、元本割れのない投資対象に投資したほうが無難である。一方で、資金的に余裕がある人や投資経験が豊富な人は、年齢と関係なく、時価が回復するまで待てたり、経済状況の見極めができたりするため、新NISAの恩恵を最大限に生かすために、米国株式型等の外国株式型インデックス連動商品に新NISAの成長投資枠で一括投資すれば良いと思う。

3――まとめ

3――まとめ

50代になってからの老後資金の準備では、投資期間が10年を切ってきたら、リスクの少ない投資をすることが一般的にはおすすめとされることが多いが、50代前半の人は投資期間が15年程度あるし、50代後半及びそれ以降の人でも投資に自信のある人や資金的に余裕のある人は、新NISA等で米国株式インデックス等に連動する商品に一括投資することで高い収益を挙げることができる可能性がかなりある。その場合、投資期間中に株価が大きく下落していても、売らずに投資を継続して気長に待ったほうが良い。早く時価が回復する可能性が高いので、むしろ、追加で一括投資をしても良いくらいだ。

結論としては、50代になっても老後資金等の資産形成は十分間に合う。今投資経験がなくても、投資を始めれば、投資の経験とか知識とかが身についてくるものだと思う。自信がなければ信頼できる金融機関やシンクタンク等でプロの意見を聞けば良い。適切な投資対象を選んで、投資を始め成功体験を積んで、より効率良く資産形成が出来ることを心から祈念したい。そのためにも新NISAを十分活用して、なるべく早く投資を開始することをお勧めしたい。

【参考】

40歳以下の若い人は以下のレポートを参照してください。
 
2023年4月28日「確定拠出年金やNISAでは何に投資したら良いのか【2023年3月版】-国内債券型、国内株式型、外国株式型等でパフォーマンスを比較してみた」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74672?site=nli
 
2023年7月28日「新NISAでは何にどのように投資したら良いのか-長期の資産形成ではリスクよりもリターンを気にすべき」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75635?site=nli
 
2023年8月17日「新NISAでは何に投資したら良いのか(続編)-長期投資ではやはりリスクよりもリターンを気にすべき」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=75863?site=nli
 
2023年12月22日「長期投資におけるリターンとリスク-長期投資では年率リターンと年率リスクで判断してはいけない」
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=77054?site=nli
 
 

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金融研究部   研究員

熊 紫云 (ゆう しうん)

研究・専門分野
資産運用・資産形成

経歴
  • 【職歴】
     2020年   日本生命保険相互会社入社
     2021年4月 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2024年01月19日「基礎研レポート」)

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