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新たな金融手法「ブレンデッド・ファイナンス」-気候変動対策への活用

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
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国際エネルギー機関(IEA)の分析によると、世界が2050年までにネット・ゼロに向けた軌道に乗るには、2030年までに年間約4.5兆ドルのクリーン・エネルギー関連投資が必要だとされる。また、2022年にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催された、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の合意文章には、2050年までにネット・ゼロを達成するには、2030年までに再生可能エネルギーに年間約4兆ドル、低炭素経済への世界変革には、少なくとも年間4~6兆ドルの投資が必要になると明記されている。また、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の推計でも、エネルギー転換技術を含めた関連投資が、2030年までに年間約5兆ドル必要になるとされており、これは2022年の投資実績1.3兆ドルの約4倍に相当する。これから短期間で、世界の投資規模を大きく拡大しなければならない。
ただ、これだけ大規模な投資を、公的資金だけで賄っていくことは難しい。2020年以降、ポスト・コロナやインフレ対策、複雑化する国際情勢への対応で、財政に余裕のある国は多くない。この資金ギャップを埋めるには、民間資金を大規模に動員していくことが欠かせない。
その手段として、いま注目を集めているのが、ブレンデッド・ファイナンス(Blended Finance)という金融手法である。ブレンデッド・ファイナンスは、公的資金と民間資金を組み合わせて、投資規模を拡大する仕組みであり、主に信用格付が低く民間資金が投じられ難い、発展途上国向けの資金調達手段として利用されて来た。それが近年、先進国のクリーン・エネルギー関連投資においても活用の範囲を拡げようとしている。
本稿では、このような古くて新しいブレンデッド・ファイナンスの金融手法に着目し、今後、拡大が見込まれる気候変動対策(GX分野)への活用について考察する。
■目次
1――はじめに
2――ブレンデットファイナンスの仕組み
3――環境変動対応型ブレンデッド・ファイナンスの現状
4――環境変動対応型ブレンデッド・ファイナンスと民間投資家
5――気候変動対応型ブレンデッド・ファイナンスの広がり
6――課題
7――おわりに
(2024年01月16日「基礎研レター」)
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03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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