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炭素国境調整措置の影響-スピード感が重要、受け身では競争力を失う恐れ

総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
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気候変動対策に関する国際的な取組みが加速している。もともと昨年2020年は、パリ協定の実施初年度であり、気候変動対策に対する関心が高まることは予想されていた(「日本の地球温暖化対策-『カーボンプライシング』の可能性を考える」(2019-12-25)より)。しかし、気候変動対策は、既存の産業構造に変革を迫るものであり、その歩みは加速しながらも、ある程度漸進的なものにならざるを得ないとの見方も多かった。実際、地球温暖化に関する世界会議が初めて開催されたのは、1985年のフィラハ会議であり、すべての国が参加する枠組みとしてパリ協定に結実するまでには35年の月日が経過している。
この状況を大きく変えたのは、全世界で猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症の拡大だ。感染爆発が起きた当初は、各国政府が新型コロナウイルス対応に追われ、人命を最優先するために気候変動対策への取組みは優先順位を下げざるを得なかったが、感染状況が落ち着きを取り戻し、ワクチン開発に進展が見られると、政策当局の関心は、経済復興に向けた経済対策へと移って行った。その中で、経済復興の推進力として注目されたのが、環境を重視した投資やインフラ整備などによる復興を目指す「グリーン・リカバリー」だ。各国は、持続可能でレリジエントな社会システムを構築するために様々な政策を打ち出し、環境負荷の小さな社会の実現を目指して急旋回している。今般の取組みにおける大きなポイントは、環境対策だけでなく、産業政策としても位置づけられている点だ。この分野で遅れを取ることは、産業の国際競争面においても不利な立場に置かれることを意味する。
本稿では、年後半に掛けて注目度が高まるだろう「炭素国境調整措置(炭素規制の緩い地域からの輸入品に対して炭素排出量に応じた追加の負担を課す制度)」に着目し、足元の国際情勢を概観したうえで、その効果や課題、日本企業や産業への影響について考察する。
■目次
1――はじめに
2――「炭素国境調整措置」の導入に向かう世界
1|世界の動向~先行する欧米~
2|日本の動向~岐路に立つ日本~
3――「炭素国境調整措置」の概要~期待される効果と課題~
1|期待される効果
2|課題
4――環境政策と産業政策のつながり~地球規模でサプライチェーンの再構築が加速~
5――日本企業や産業への影響~グリーン化の遅れで「産業空洞化」が進む恐れ~
6――おわりに
(2021年04月09日「基礎研レポート」)

03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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