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- 中国の出生率の動向-第3子出産容認の効果
2024年01月15日
中国において生まれてくる子どもの数(出生数)が大幅に減少している。2022年は956万人と初めて1,000万人を割り込み、過去最少となったことが話題となった。出生数は1979年の一人っ子政策以降、特に1980年代後半から減少傾向にあったが、第2子の出産が容認された翌年の2016年には前年より大幅に増加(合計1,786万人)に転じている(図表1)1。しかし、出生数はこれ以降再び減少に転じており、2016年から2022年までのわずか6年でおよそ半減といった事態に至っている。
政府は2016年から第2子、2021年からは第3子の出産を容認しているが、生まれてくる子どものうち第1子、第2子、第3子(それ以上を含む)の出生数や出生率に変化はあったのであろうか。
国家衛生健康委員会は2021年、2022年の出生順序別の構成比を公表している(図表2)。それに基づくと、2022年の出生数(全体)は前年より106万人減少し、出生順序別でみると第1子が前年より27万人減少、第2子が68万人減少、第3子が11万人減少している。それぞれ2021年からの減少率をみると、第1子が5.8%減、第2子が15.5%減、第3子が7.1%減となっており、第2子の減少が出生数全体の減少に大きな影響を与えている。
政府は2016年から第2子、2021年からは第3子の出産を容認しているが、生まれてくる子どものうち第1子、第2子、第3子(それ以上を含む)の出生数や出生率に変化はあったのであろうか。
国家衛生健康委員会は2021年、2022年の出生順序別の構成比を公表している(図表2)。それに基づくと、2022年の出生数(全体)は前年より106万人減少し、出生順序別でみると第1子が前年より27万人減少、第2子が68万人減少、第3子が11万人減少している。それぞれ2021年からの減少率をみると、第1子が5.8%減、第2子が15.5%減、第3子が7.1%減となっており、第2子の減少が出生数全体の減少に大きな影響を与えている。
一方、CEICによる出生順序別の出生率(15-49歳までの女性による)を確認すると、2015年の第2子出産容認以降、2016年、2017年と第2子の出生率は急増しており(2016年は前年比2.18ポイント増、2017年は前年比9.88ポイント増)、この点については規制緩和の効果が表れていると言えよう(図表3)。ただし、2017年以降は第2子の出生率が急速に低下しており、これが出生数全体の急減の一因と考えることもできる2。
また、政府は2021年に第3子の出産容認を発表している。2022年の第3子の出生数は前年比11万人減の134万人、出生率はわずか前年比0.37ポイント増となっている3。第2子の出産容認翌年の2016年の状況と比較すると、第3子の出産容認の効果は限定的であると言えよう。
また、政府は2021年に第3子の出産容認を発表している。2022年の第3子の出生数は前年比11万人減の134万人、出生率はわずか前年比0.37ポイント増となっている3。第2子の出産容認翌年の2016年の状況と比較すると、第3子の出産容認の効果は限定的であると言えよう。
1 中国政府は一人っ子政策を堅持しながらも、2000年代には一人っ子政策の緩和の動きも見せている。各地域の状況を鑑みた措置が可能となり、少数民族、夫婦とも一人っ子、農村部で第1子が女児の場合などについては第2子の出産を認めている。また、2013年には夫婦のどちらかが一人っ子の場合、第2子までの出産が容認されている。
2 【参考文献】三浦有史(2023)「中国の少子化対策は機能するか」、『アジア・マンスリー』Vol.23、No.265、2023年4月、日本総研。三浦(2023)は出生数に着目し、第2子の出生数の減少幅が第1子より大きい点が出生率低下の原因の1つとみなすことができるとしている。
3 なお、2022年の第1子の出生率は対前年比で増加している。これは2021年のコロナ禍(出産控え)などによってトレンド以上に減少したことへの反動と推測される。実際、2020年水準は下回っており、出生数の実数は図表2のとおり2021年を下回る。
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経歴
- 【職歴】
2005年 ニッセイ基礎研究所(2022年7月より現職)
(2023年 東京外国語大学大学院総合国際学研究科博士後期課程修了) 【社外委員等】
・日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
(2019年度・2020年度・2023年度)
・生命保険経営学会 編集委員・海外ニュース委員
・千葉大学客員准教授(2023年度~) 【加入団体等】
日本保険学会、社会政策学会、他
博士(学術)
(2024年01月15日「基礎研レター」)
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