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日経平均バブル後高値更新3万5000円へ~2024年の株価見通し~

金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
1――サマリー
2――日銀の緩和維持で再び上昇、FRBのハト派豹変も追い風
3――好調持続が見込まれる日本企業の業績
さらに24年度についても11%の大幅増益が見込まれている(市場予想ベース)。この場合のROEは10.0%で(23年度純利益の5割を株主資本に加算すると仮定)、過去最高だった17年度の10.4%に近づく。理論的にはROEが改善すれば株価が上昇しやすいのは当然だが、海外投資家も日本株の魅力を再認識するかもしれない。
FRBの利上げは終盤にあり24年にも利下げに踏み切るとみられている。一方、日銀が動くとすれば緩和縮小方向しか考えられず、海外投資家にとっての「円安リスク」は遠のいた。そこに2年連続の大幅な賃上げが重なれば、海外投資家の「日本株買い第2弾」が来ても全く不思議ではない。新NISAスタートで国内個人投資家の資金流入が見込まれることも需給面でプラス要因だ。24年度業績の堅調さを確認できる夏~秋にかけて日経平均3万5000円回復も期待してよいだろう。
4――リスクは米国景気の急減速
しかし、さすがに米国民にインフレ疲れが出てきたのか、ミシガン大学消費者信頼感指数が4カ月連続で低下するなど消費者マインドは悪化傾向が目立ち、10月の米小売売上高は前月比0.1%減と、23年3月以来7カ月ぶりに減少した。しかも内訳をみると食料品など生活必需品の売れ行きはまずまずだが、家具やスポーツ用品など不要不急のモノは減少幅が大きかった。
年末商戦の売れ行きは悪くなかったものの、人々が値引きを待っていた様子や無利息の後払い(要はツケ)の購入額が予想を遥かに上回った。あと数ヶ月ほど様子を見ないと確かなことはわからないが、米国の消費に陰りが出始めたようにも見える。クレジットカードの延滞が急増していることや、10月に返済が再開した学生ローン(奨学金)の延滞率が6割にのぼったというニュースも気がかりだ。
だが今後、FRBによる高金利長期化で米国景気が急減速した場合、米国株下落が日本株に悪影響を及ぼすリスクには注意が必要だ。かねて指摘してきたように米国株はバブルの様相を呈している。図表4のとおり、S&P500ベースの23年の予想EPS(1株あたり純利益)は23年1月時点よりも低い。24年は23年より改善が見込まれているものの、やはりゆるやかな低下傾向が続いている。それにもかかわらず株価は22年末から23%上昇した(23年12月25日時点)。NASDAQに至っては予想EPSがほぼ横ばいなのに株価は43%の上昇だ(同)。
米国株が上昇した主な理由は、23年の米国景気が想定以上に底堅く推移したこと、FRBの利上げ終了と24年の利下げ開始が視野に入ったことだが、株価はファンダメンタルズでは説明できない水準まで上昇している。FRBの利下げ開始時期が市場の期待よりも後ずれするなど何らかの要因で市場心理が悪化すれば、米国株は10%~20%の下落余地がある。
仮にこうしたリスクが顕在化するとしたら、恐らく24年前半だろう。というのもFRBは遅くとも24年の年央以降には利下げに踏み切ると思われ、また米国景気が急減速するならば、それは24年前半に起こるとみられるからだ。日米の金融政策が転換期に差し掛かっている24年前半は、まだ不安定な状況が続きそうだ。
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(2023年12月27日「基礎研レポート」)

03-3512-1852
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
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