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介護軽度者向け総合事業のテコ入れ策はどこまで有効か?-事業区分の見直しなど規定、人材育成や「措置」的な運用が必要

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳
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介護軽度者向けの「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)について、制度・運用の見直しなどを模索していた厚生労働省の検討会が2023年12月、中間整理を取りまとめた。中間整理では、ボランティアや企業も含めた多様な主体が参画することで、高齢者の社会参加を促したり、生活支援を強化したりする必要性が強調された。さらに見直しに向けた「具体的な方策」として、事業区分の見直しとか、介護予防の強化に向けたケアマネジメントの充実なども盛り込まれた。
今回の見直しの背景には、制度発足から5年以上も経過しているのに、総合事業が市町村に浸透していないことに対する危機感がある。さらに、財務省は給付費を抑制する観点に立ち、要介護1~2を総合事業の対象に加える制度改正を求めており、こうしたプレッシャーも今回の検討に影響していると考えられる。その意味では、中間整理は総合事業の「テコ入れ策」の側面を持っている。
では、中間整理はテコ入れ策として、どこまで効果を持つのだろうか。本稿では、複雑怪奇な総合事業の内容や見直し論議が浮上した経緯を整理しつつ、中間整理の内容を詳しく見る。その上で、今後の論点として、人材育成の重要性とか、税財源を中心とする「措置制度」的な運用が求められる点などを指摘する。
■目次
1――はじめに~介護軽度者向け総合事業のテコ入れ策はどこまで有効か?~
2――総合事業の見直しが論点になった背景や経緯
1|総合事業の仕組み
2|総合事業創設の背景
3|市町村における浸透度合い
4|財務省の指摘
5|テコ入れ策としての「地域づくり加速化事業」
3――検討会の経過と中間整理の内容
1|検討会の経過と中間整理で示された4つの「方策」
2|高齢者が地域とつながりながら自立した日常生活をおくるためのアクセス機会と選択肢の
拡大
3|地域の多様な主体が自己の活動の一環として総合事業に取り組みやすくなるための方策の
拡充
4|地域での自立した日常生活の継続の視点に立った介護予防ケアマネジメントの手法の展開
5|地域で必要となる支援を継続的に提供するための体制づくり
6|工程表の作成、予算上限制度の見直し
4――中間整理の評価
1|「受け皿」「担い手」の色合いが薄くなった?
2|「事業頭」「制度頭」からの脱却?
5――今後の論点
1|市町村の人材育成・政策形成に向けた支援が重要
2|措置的な運用も不可欠?
3|要介護1~2への対象拡大は可能か
6――おわりに
(2023年12月27日「保険・年金フォーカス」)
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- プロフィール
【職歴】
1995年4月~ 時事通信社
2011年4月~ 東京財団研究員
2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
2023年7月から現職
【加入団体等】
・社会政策学会
・日本財政学会
・日本地方財政学会
・自治体学会
・日本ケアマネジメント学会
【講演等】
・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)
【主な著書・寄稿など】
・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数
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