2023年12月25日

米個人所得・消費支出(23年11月)-PCE価格指数(前年同月比)は総合指数、コア指数ともに前月、市場予想を下回る

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得(前月比)は市場予想に一致、個人消費は市場予想を下回る

12月22日、米商務省の経済分析局(BEA)は11月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月改定値:+0.3%)と+0.2%から上方修正された前月を下回った一方、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%に一致した(図表1)。個人消費支出は前月比+0.2%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想の+0.3%は下回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.3%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から下方修正された前月を上回った一方、市場予想の+0.3%に一致した(図表5)。貯蓄率1は4.1%(前月:4.0%)と前月から+0.1%ポイント上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比▲0.1%(前月:横這い)と前月、市場予想(横這い)を下回った。前月比でマイナスとなるのは20年4月以来である。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.1%(前月改定値:+0.1%)と+0.2%から下方修正された前月に一致、市場予想(+0.2%)を下回った(図表6)。前年同月比は総合指数が+2.6%(前月改定値:+2.9%)と+3.0%から下方修正された前月、市場予想(+2.8%)を下回った。コア指数は+3.2%(前月改定値:+3.4%)と+3.5%から下方修正された前月、市場予想(+3.3%)を下回った(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:インフレ率の低下が継続

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人消費(前月比)の名目ベースは23年9月の+0.7%から2ヵ月連続で低調な伸びに留まった(図表1)。

これに対して、個人所得(前月比)は賃金・給与の堅調な伸びが続いていることもあって、個人消費の伸びを上回った結果、貯蓄率は4.1%と23年5月につけた5.3%のピークを大幅に下回っているものの、23年9月の3.8%から2ヵ月連続で上昇した。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数は総合指数が前月比、前年同月比で前月から低下したほか、コア指数が前月比で前月並みの伸びとなった一方、前年同月比で前月から低下するなど、インフレ上昇圧力が緩和していることを確認した。

このため、11月は個人消費の増加が続く中、インフレ上昇圧力が緩和しており、FRBが目指すソフトランディングシナリオに沿った結果と言えよう。

3.所得動向:賃金・給与の伸びが加速

11月の個人所得(前月比)は賃金・給与が+0.6%(前月:+0.2%)と前月から伸びが大幅に加速した(図表2)。賃金・給与の伸びが加速したのは、11月の雇用統計で雇用の伸びが加速したことや失業率の低下にみられる労働需給の逼迫を反映しているとみられる。

一方、その他の所得項目では、利息配当収入が+0.4%(前月:+0.8%)と依然堅調ながら前月から伸びが鈍化した。また、移転所得が▲0.4%(前月:▲0.2%)と6ヵ月連続でマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大するなどマチマチの結果となった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、11月の名目が+0.4%(前月:+0.3%)と前月から小幅ながら伸びが加速した(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)も+0.4%(前月:+0.3%)と伸びが加速し23年3月以来の伸びとなった。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:ガソリン・エネルギー消費が大幅に減少

11月の名目個人消費(前月比)は、財消費が▲0.2%(前月:▲0.5%)と2ヵ月連続でマイナスとなった一方、サービス消費が+0.5%(前月:+0.4%)と前月から伸びが加速して個人消費全体を押し上げた(図表4)。

財消費は、耐久財が+0.5%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じた一方、非耐久財が▲0.5%(前月:▲0.4%)とこちらは前月からマイナス幅が拡大して財消費全体を押し下げた。

耐久財では、自動車・自動車部品が横這い(前月:▲1.0%)と前月からマイナス幅が大幅に縮小したほか、家具・家電が+0.4%(前月:▲0.9%)、娯楽財・スポーツカーが+0.7%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じた。

非耐久財では食料・飲料が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速したほか、衣料・靴が+0.1%(前月:▲0.5%)とプラスに転じた。一方、ガソリン・エネルギーが▲7.2%(前月:▲4.1%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほかマイナス幅が拡大して、非耐久財消費全体を押し下げた。ガソリン・エネルギー消費は実質ベースでも11月は前月比▲1.7%とマイナスとなっていることから、ガソリン・エネルギー消費の大幅な落ち込みは価格の下落に加え、ガソリン・エネルギーの消費需要も低下したことが示されている。

サービス消費は、医療サービスが+0.2%(前月:+0.7%)、輸送サービスが+0.4%(前月:+0.8%)と前月から伸びが鈍化した。一方、娯楽サービスが+0.4%(前月:+0.1%)、住宅・公共料金が+0.8%(前月:+0.5%)、外食・宿泊が+1.5%(前月:+0.6%)と前月から伸びが加速したほか、金融サービスが+0.4%(前月:▲0.8%)と前月からプラスに転じた。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格が前月比、前年同月比ともにマイナス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が▲2.7%(前月:▲2.7%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、前月並みのマイナス幅を維持した(図表6)。一方、食料品価格指数は▲0.1%(前月:+0.3%)と5ヵ月ぶりにマイナスに転じた。

前年同月比は、エネルギー価格指数が▲6.0%(前月:▲4.7%)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、前月からマイナス幅が拡大した(図表7)。食料品価格指数は+1.8%(前月:+2.4%)とこちらは77ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びは鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年12月25日「経済・金融フラッシュ」)

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