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- コロナ禍明けの家計消費-外出型消費は回復傾向だが、全体では低迷が続く
2023年12月20日
1――はじめに~5類引き下げ以降、外出行動は活発化しているが個人消費は低迷が続く
今年5月に新型コロナウイルス感染症の感染症分類が5類に引き下げられ、外出行動が一層、活発化することで、個人消費の改善が期待されてきた。しかし、2023年10月の時点では、未だコロナ禍前の水準を下回っている(図表1)。物価の上昇率が賃金の上昇率を上回り、実質賃金がマイナスで推移しているため(図表2)、使えるお金が増えないのならば支出を抑制することは、消費者行動としては自然なことだろう。
一方で、街や観光地の混雑状況から、旅行やレジャー、外食などの外出型消費が回復している様子を感じる方も多いだろう。現在の個人消費は、全体では低迷しつつ、消費領域によって濃淡が生じていることが予想される。よって、本稿では、総務省「家計調査」を用いて、二人以上世帯の消費支出の内訳について、コロナ禍で増減が見られた費目に注目しながら、足元までの状況を分析する。
一方で、街や観光地の混雑状況から、旅行やレジャー、外食などの外出型消費が回復している様子を感じる方も多いだろう。現在の個人消費は、全体では低迷しつつ、消費領域によって濃淡が生じていることが予想される。よって、本稿では、総務省「家計調査」を用いて、二人以上世帯の消費支出の内訳について、コロナ禍で増減が見られた費目に注目しながら、足元までの状況を分析する。
2――二人以上世帯の消費支出の概観~全体では低迷、食料や教養娯楽等が減少、保健医療等が増加
まず、2020年以降の二人以上世帯の消費支出、および内訳の主な費目(大分類として示されるもの)の状況を捉え、次節にてコロナ禍の影響を受けた個別費目(主に小分類)の状況を捉える。
二人以上世帯の消費支出は、コロナ禍前の2019年同月と比べると、2020年の4・5月や夏、年末など緊急事態宣言が発出された時期などに減少している(図表3(a))。2023年4月以降は減少傾向が続いていたが10月は、やや上向いている(対2019年10月実質増減率+0.1%)。しかし、これは消費税率が10%へ引き上げられた2019年10月(反動減が生じた時期)との比較であることを考慮すべきである。2019年と比べると、いずれの年においても、10月は上昇しやすい一方、9月(駆け込み需要が生じた時期)は低下しやすくなる。ちなみに、消費税率が引き上げられた2019年ではなく、1年前の2018年10月と比べると、2023年10月の消費支出はやや減少している(実質増減率▲3.6%)。
なお、図表1に示す総消費動向指数と、この二人以上世帯の消費支出の動きが異なるようだが、これは、前者は二人以上世帯に加えて単身世帯や三世代世帯なども含む総世帯の消費支出総額(GDP統計の家計最終消費支出に相当するもの)であることに加えて、コロナ禍前との比較ではなく、2020年=100として指数化されたものであるためである。いずれにしろ、2023年10月までの時点では、個人消費はコロナ禍前の水準に戻らずに低迷していること、また、5月の5類引き下げ以降も消費は低迷している傾向は同様である。
また、消費支出の内訳を見ると(図表3(b)~(f))、コロナ禍前をおおむね下回るのは「食料」や「家具・家事用品」(駆け込み需要と反動減との比較による増減が顕著)、「被服及び履物」、「教養娯楽」、「その他の消費支出」(交際費や仕送り金など)である。一方、コロナ禍をおおむね上回るのは「住居」や「保健医療」である。これらの理由としては、既出レポート1でも見てきたように、感染予防意識の高まりで外出が自粛されたことで、外食や旅行、レジャーなどの外出型消費が減少する一方、家の中で過ごす時間が増えたために巣ごもり型消費が活発化した影響がある。なお、大分類として示される主な費目では、5類に引き下げられた5月以降で顕著に増加(あるいは減少)傾向を示すものは特段見当たらない(見えにくい)ようだ。よって、次節では、コロナ禍の影響を受けた具体的な費目に注目して分析する。
二人以上世帯の消費支出は、コロナ禍前の2019年同月と比べると、2020年の4・5月や夏、年末など緊急事態宣言が発出された時期などに減少している(図表3(a))。2023年4月以降は減少傾向が続いていたが10月は、やや上向いている(対2019年10月実質増減率+0.1%)。しかし、これは消費税率が10%へ引き上げられた2019年10月(反動減が生じた時期)との比較であることを考慮すべきである。2019年と比べると、いずれの年においても、10月は上昇しやすい一方、9月(駆け込み需要が生じた時期)は低下しやすくなる。ちなみに、消費税率が引き上げられた2019年ではなく、1年前の2018年10月と比べると、2023年10月の消費支出はやや減少している(実質増減率▲3.6%)。
なお、図表1に示す総消費動向指数と、この二人以上世帯の消費支出の動きが異なるようだが、これは、前者は二人以上世帯に加えて単身世帯や三世代世帯なども含む総世帯の消費支出総額(GDP統計の家計最終消費支出に相当するもの)であることに加えて、コロナ禍前との比較ではなく、2020年=100として指数化されたものであるためである。いずれにしろ、2023年10月までの時点では、個人消費はコロナ禍前の水準に戻らずに低迷していること、また、5月の5類引き下げ以降も消費は低迷している傾向は同様である。
また、消費支出の内訳を見ると(図表3(b)~(f))、コロナ禍前をおおむね下回るのは「食料」や「家具・家事用品」(駆け込み需要と反動減との比較による増減が顕著)、「被服及び履物」、「教養娯楽」、「その他の消費支出」(交際費や仕送り金など)である。一方、コロナ禍をおおむね上回るのは「住居」や「保健医療」である。これらの理由としては、既出レポート1でも見てきたように、感染予防意識の高まりで外出が自粛されたことで、外食や旅行、レジャーなどの外出型消費が減少する一方、家の中で過ごす時間が増えたために巣ごもり型消費が活発化した影響がある。なお、大分類として示される主な費目では、5類に引き下げられた5月以降で顕著に増加(あるいは減少)傾向を示すものは特段見当たらない(見えにくい)ようだ。よって、次節では、コロナ禍の影響を受けた具体的な費目に注目して分析する。
1 久我尚子「コロナ禍における家計消費の変化~ウィズコロナの現状分析とポストコロナの考察」、ニッセイ基礎研レポート(2021/5/20)など。
(2023年12月20日「基礎研レポート」)
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経歴
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
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