コラム
2023年12月08日

新NISA前に株高もあって一旦、利確?~2023年11月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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一般販売のみだと半年ぶりに流出超過に!!

2023年11月の日本籍追加型株式投信(ETFを除く。以降、ファンドと表記)の推計資金流出入をみると、11月は外国株式ファンドには資金流入があった【図表1】。しかし、国内株式ファンド、バランス型ファンド、外国REITファンド、その他のファンドが資金流出に転じ、国内REITファンドの資金流出が拡大した。ファンド全体でみると600億円の資金流入と11月の1兆1,800億円から急減し、純流出となった2023年5月以降だと最少となった。
 
11月はSMA専用ファンド(紺棒)に700億円の資金流入があったため、SMA専用ファンドを除外して一般販売されているファンドに限ると流出額こそ100億円と少額であるが純流出となっていた。なお、SMA専用ファンドの資金流入も過去最大であった10月の2,800億円から減少しており、投信だけでなくラップ口座の販売も10月と比べてふるわなかった様子である。
【図表1】 2023年11月の日本籍追加型株式投信(除くETF)の推計資金流出入

日経平均株価3万2,000円、3万3,000円を意識か

一般販売されているファンドが11月に資金流出に転じた一番の要因は、国内株式ファンドが国内株式の株価上昇に伴って売却が膨らんだことである。実際に一般販売されている国内株式ファンドから1,300億円の資金流出があり、10月の2,900億円の大規模な資金流入から一転して2023年5月以来、半年ぶりの売却超過となった。特にインデックス型の国内株式ファンドはタイミング投資にも用いる人が多いこともあり、11月に1,800億円の純流出と10月の1,600億円の純流入を超える売却があった。
 
一般販売されている国内株式ファンドの資金動向を日次でみると、インデックス型(黄棒)には10月に日経平均株価(赤線)が3万1,000円を下回った翌営業日を中心に資金流入があった【図表2】。それが11月は日経平均株価が上昇に転じるとともに資金流出基調に転じた。特に日経平均株価が急上昇して3万2,000円台に乗せた翌営業日の7日や3万3,000円台に乗せた翌営業日の16日には500を超える純流出があった。やはり日経平均株価の3万2,000円や3万3,000円の水準を意識して売買している投資家が多かったようだ。
 
ただ、国内株式ファンドはインデックス型が売られる一方でアクティブ型に限ると11月に入っても買われた。一般販売されているものには500億円の資金流入があり、10月の1,400億円からは減少したが引き続き流入超過であった。日次でみるとアクティブ型(緑棒)でも7日や16日など資金流出に転じている日はあったが、流入基調が続いていた。国内株式は日経平均株価の上げ幅が月間で2,600円に達するなど大きく上昇したが、そんな中でもアクティブ型へ投資意欲は堅調だった様子である。
【図表2】 一般販売されている国内株式ファンドの日次資金流出入
なお、アクティブ型の国内株式ファンドの中では配当に注目した運用を行う、いわゆる好配当株式ファンドが人気を集めている。11月に100億円以上資金流入したファンドが2本(青太字)もあった【図表3】。この2本の直近1年間の収益率はコスト控除後でも31%と配当込み日経平均株価、TOPIXの22%、23%を大きく上回っていることが人気の要因の1つだと考えられる。
【図表3】 2023年11月の推計純流入ランキング

新NISAも意識して売却が膨らんだ可能性?

また、外国株式ファンドへの資金流入も11月に急減した。一般販売されている外国株式ファンドへは11月に2,300億円と相変わらず2,000億円以上の資金流入があったが、10月の5,500億円からほぼ半減した。タイプ別にみるとアクティブ型の外国株式ファンドが700億円の資金流出と10月の1,500億円の資金流入から2023年6月以来となる流出超過に転じた。インデックス型の外国株式には11月に2,900億円の資金流入があったが、10月の4,000億円と比べると1,000億円以上も減少した。
 
11月は世界的に株価が急騰する中、ほとんどの外国株式ファンドの基準価額が上昇した。なかでも米ハイテク株が大きく上昇したため、ハイテク株や成長株にフォーカスした外国株式ファンド(赤太字)の中には11月の上昇率が二桁になるものが多かった【図表4】。アクティブ型、インデックス型問わず、基準価額の上昇を受けて、高値警戒感から投資するのを見合わせる、もしくは利益確定で売却する投資家が多かったと考えられる。
 
なお、11月に外国株式ファンドでアクティブ型は売却が膨らみ、インデックス型も鈍化した背景には、新NISAの開始が迫ってきていることの影響も考えられる。新NISAでは年間投資枠が360万円、生涯の投資限度額が1,800万円と現在のNISAの2倍以上に拡大される。新規資金のみで新NISAの投資枠をすべて使い切れる人も限られているため、課税口座の金融商品を一旦売却して、新NISAで買い直す動きが出てくることが予想される。11月は基準価額の上昇と相まって、ややフライング気味ではあるが新NISAへの買い替えを意識して利益確定のため売却が膨らんだ可能性もあるだろう。
【図表4】 2023年11月の高パフォーマンス・ランキング

来年以降、毎月分配型が売れなくなるかも?

その他に新NISAの開始に伴って、毎月分配型ファンドの販売動向も気になるところである。毎月分配型ファンドは11月も一部(【図表3】赤太字)のファンドが売れたが、これまでのように毎月分配型ファンドは売れなくなる可能性もありそうである。

そもそも現行のNISAでは、一般NISAで毎月分配型ファンドが購入可能であり、実際に一部の投資家は一般NISAで毎月分配型ファンドなどの高分配ファンドを購入してきた。一般NISA買付分の投資信託の分配金利回り(黄線)を簡便的に計算すると、タコ足分配が可能だった2015年や2016年には10%に迫っていた【図表5】。それ以降は金融庁が問題視し、タコ足分配ができなくなってしまい、それ以前ほど分配金が出せなくなってこともあり、一般NISAの投資信託でも分配金利回りが低下している。それでも分配金利回りは2022年でも3%以上あり、一部の投資家は一般NISAで毎月分配型ファンドのような高分配ファンドに投資していることがうかがえる。
 
しかし、新NISAでは毎月分配型ファンドの購入が不可能になっている。新NISAが開始される来年以降、これまで毎月分配型ファンドを購入してきた投資家が新NISAを活用するのか、活用する場合はどんな商品を買い付けるのか注目したい。毎月分配型ファンドを売却して、その売却資金を元に新NISAで購入可能商品に乗り換えるといった動きが出てくるかもしれない。
【図表5】 一般NISAの投資信託の年末残高と実績の分配金利回り
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2023年12月08日「研究員の眼」)

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