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行き場を失う日本のプラスチック廃棄物
金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志
4――海外でのプラスチックリサイクルの取組みと日本での課題
EUでは、シングルユースプラスチックの禁止、マイクロプラスチック添加製品の販売禁止といった対策が行われている。2021年、これらの実施にあたっては円滑な実施に向けたガイドラインが公表された3。
また、欧州では廃プラスチックの回収とリサイクルに向けた取り組みが進められている。ドイツでは1991年には一般家庭から出る容器包装廃棄物について生産者や小売業者が処理責任を負う旧容器包装廃棄物令が定められた。2019年にはさらなる容器包装廃棄物の削減とリサイクル率向上を目指して新たな容器包装廃棄物法が施行された4。また、ドイツでは廃棄物を一括収集し、人手に頼らずに機械により分別を行う大規模なソーティングセンターで処理を行う効率的なリサイクルシステムを構築している(図表5)。
日本では容器包装リサイクル法により、自治体が分別収集を行っているが選別・回収方法は自治体毎に異なっている。また、回収された廃棄物もペットボトル等選別がしやすいもの以外は多くが焼却処分されている。プラスチックの資源循環体制を構築していく上では、効率的な回収・再利用を促す制度の制定・普及していくことが求められる。
日本でも資源循環体制の構築にはケミカルリサイクルの普及・活用が求められる。ただし、現状ではマテリアルリサイクル、サーマルリサイクルを併用しつつケミカルリサイクルの普及を推進していく必要があるだろう。廃プラスチックの再利用の義務化は事業者の負担となり得る。また、新しく産業廃棄物処理の施設を作るには、周辺住人の理解が必要となるという課題点もある。
静岡県御前崎市では、産廃処理大手の大栄環境が産業廃棄物処理施設「御前崎リサイクルエネルギープラザ」の建設を計画していたが、住民投票での反対により計画は中止された6。住民投票では投票の約9割が建設反対であった。産業廃棄物処理施設の建設に周辺住民の理解を得ることは容易ではない。
日本ではプラスチックの資源循環の実現に向けて2022年から「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラスチック資源循環促進法)」が施行された。同法では、プラスチックにかかわる事業者を製造事業者、提供事業者、販売事業者、排出事業者、地方自治体などに分類し、それぞれにプラスチック資源循環に向けた取り組みを求めている。
プラスチックのリサイクルには様々な課題があるが、原油などの化石資源は限りがあることや廃プラスチックによる自然環境の汚染を防止するためには限りある資源を消費、廃棄し続けていくのではなく、循環型社会へ移行していくことが求められる。日本での循環型社会の実現に向けた体制の構築が求められている。
3 日本貿易振興機構、「EU、マイクロプラスチック添加製品の原則販売禁止を決定」、2023年10月4日
4 日本貿易振興機構、「循環経済に向けて廃棄物管理とプラスチック削減に取り組む(ドイツ)」、2020年6月4日
5 日本貿易振興機構、「欧州委の研究機関、廃プラ処理は焼却よりリサイクルを推奨する報告書発表」、2023年3月3日
6 日本経済新聞、「静岡県御前崎市の産廃施設、事業者の大栄環境が撤退表明」、2021年3月16日
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(2023年12月04日「基礎研レポート」)
03-3512-1860
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
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