2023年11月20日

米住宅着工・許可件数(23年10月)-着工件数、許可件数ともに前月からの減少予想に反し増加

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:住宅着工、許可件数ともに市場予想を上回る

11月17日、米国センサス局は10月の住宅着工、許可件数を発表した。住宅着工件数(季節調整済、年率)は137.2万件(前月改定値:134.6万件)と135.8万件から下方修正された前月を上回ったほか、前月からの減少を見込んだ市場予想の135.0万件(Bloomberg集計の中央値)を上回った(図表1、図表3)。

着工許可件数(季節調整済、年率)は148.7万件(前月改定値:147.1万件)と147.3万件から小幅下方修正された前月を上回ったほか、着工件数同様、前月からの減少を見込んだ市場予想の145.0万件を上回った(図表2、図表5)。
(図表1)住宅着工件数/(図表2)住宅着工許可件数

2.結果の評価:戸建て業者のセンチメント悪化に反して、戸建ての着工・許可件数は増加

住宅着工件数の伸びは前月比+1.9%(前月:+3.1%)と2ヵ月連続のプラスとなった(図表3)。戸建てが+0.2%(前月:+2.1%)、集合住宅が+6.3%(前月:+5.9%)といずれも2ヵ月連続のプラスとなった(図表4)。

前年同月比は▲4.2%(前月:▲8.0%)と3ヵ月連続のマイナスとなった。内訳をみると、戸建てが+13.1%(前月:+9.1%)と4ヵ月連続でプラスを維持した一方、集合住宅が▲30.0%(前月:▲34.4%)と5ヵ月連続のマイナスとなって全体を押し下げた。

地域別寄与度(前月比)は、北東部が▲0.9%ポイント(前月:▲3.4%ポイント)と2ヵ月連続マイナスとなったほか、南部が▲3.9%ポイント(前月:+3.4%ポイント)と前月からマイナスに転じた。一方、中西部が+4.0%ポイント(前月:+2.3%ポイント)、西部が+2.7%ポイント(前月:+0.9%ポイント)といずれも2ヵ月連続のプラスとなるなど、マチマチの結果となった。
(図表3)住宅着工件数(伸び率)/(図表4)住宅着工件数前月比(寄与度)
先行指標である住宅着工許可件数は、前月比が+1.1%(前月:▲4.5%)と前月からプラスに転じた(図表5)。戸建てが+0.5%(前月:+1.6%)と10ヵ月連続のプラスとなったほか、集合住宅が+2.2%(前月:▲14.3%)と前月からプラスに転じた(図表6)。

前年同月比は▲4.4%(前月:▲7.4%)と15ヵ月連続のマイナスとなった。戸建てが+13.9%(前月:+11.3%)と4ヵ月連続でプラスを維持した一方、集合住宅が▲26.4%(前月:▲29.7%)と8ヵ月連続のマイナスとなり、全体を押し下げた。
(図表5)住宅着工許可件数(伸び率)/(図表6)住宅着工許可件数前月比(寄与度)
(図表7)住宅市場指数(項目別) 一方、全米建設業協会(NAHB)による戸建て新築住宅販売のセンチメントを示す住宅市場指数は、11月が34(前月:40)と4ヵ月連続で悪化したほか、市場予想(40)も下回った(図表7)。

内訳は販売現況が40(前月:46)、販売見込みが39(前月:44)、客足が21(前月:26)と、販売現況と客足状況が4ヵ月連続、販売見込みが5ヵ月連続の悪化となった。

もっとも、NAHBのチーフエコノミストのロバート・ディーツ氏は「建設業者のセンチメントは11月も低下したが、最近のマクロ経済データは今後数ヵ月で住宅建設の状況が改善することを示している」とし、「とくに、10年米国債金利は9月下旬以来はじめて4.5%台に戻り、これが住宅ローン金利を7.5%付近かそれ以下にするのに役立だろう。中古住宅在庫が不足していることから、住宅ローン金利が多少低下すれば新築住宅需要が喚起され、12月の市況に対する建設業者の見方が改善する可能性が高い」と述べており、足元の長期金利の低下が新築住宅需要を改善させる可能性を示唆した。
 
 

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(2023年11月20日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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