2023年10月30日

米個人所得・消費支出(23年9月)-コア価格指数(前月比)は+0.3%と23年4月以来の水準に加速

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.結果の概要:個人所得は市場予想を下回った一方、個人消費は市場予想を上回る

10月27日、米商務省の経済分析局(BEA)は9月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.3%(前月:+0.4%)と前月、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.4%を下回った(図表1)。個人消費支出は前月比+0.7%(前月:+0.4%)と前月、市場予想の+0.5%を上回った。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出(前月比)は+0.4%(前月:+0.4%)と前月に一致、市場の+0.3%予想を上回った(図表5)。貯蓄率1は3.4%(前月:4.0%)と前月から▲0.6%ポイントの大幅な低下となった。貯蓄率は22年11月以来の水準に低下した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.4%(前月:+0.4%)と前月に一致した一方、市場予想(+0.3%)は上回った。変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は前月比+0.3%(前月:+0.1%)と前月を上回った一方、市場予想(+0.3%)に一致した(図表6)。前年同月比は総合指数が+3.4%(前月改定値:+3.4%)と+3.5%から小幅下方修正された前月、市場予想(+3.4%)に一致した。コア指数は+3.7%(前月改定値:+3.8%)と+3.9%から小幅下方修正された前月を下回った一方、市場予想(+3.7%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:PCE価格のコア指数(前月比)は23年4月以来の水準に上昇

個人消費(前月比)は名目ベースで9月が+0.7%と前月の+0.4%から伸びが加速し、7月の+0.8%に次ぐ水準となるなど、個人消費が堅調であることを確認した(図表1)。
(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景にした賃金・給与の堅調な伸びなどから堅調を維持しているものの、過去4ヵ月は個人消費の伸びを下回っており、貯蓄率は23年5月の5.3%をピークに低下基調が持続している。このため、個人消費は堅調を維持しているものの、所得では賄えきれておらず、貯蓄を取り崩す形で消費を維持する状況を示しており、個人消費は今後鈍化が見込まれる。

一方、FRBが物価指標としているPCE価格指数の前月比は、総合指数ではエネルギー価格の上昇もあって前月並みの高い伸びが続いているほか、物価の基調を示すコア指数も3ヵ月ぶりに上昇に転じており、9月は物価上昇圧力の緩和が足踏みとなった。また、総合指数、コア指数ともに前年同月比でFRBが物価目標とする2%を大幅に上回っていることと併せ、依然としてFRBによる追加利上げの可能性は残ろう。

3.所得動向:賃金・給与の堅調な増加が持続

9月の個人所得(前月比)は労働需給の逼迫を背景に賃金・給与が+0.4%(前月:+0.5%)となり、前月から小幅に伸びが鈍化したものの、引き続き堅調を維持した(図表2)。また、利息配当収入が+0.5%(前月:+0.5%)と前月並みの堅調な伸びを維持した。自営業者所得は+0.4%(前月:+0.6%)と堅調ながら前月から小幅に伸びは鈍化した。一方、移転所得は▲0.1%(前月:▲0.1%)と4ヵ月連続でマイナスとなった。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は、9月の名目が+0.3%(前月:+0.3%)と前月並みの伸びとなった(図表3)。一方、価格変動の影響を除いた実質ベース(前月比)は▲0.1%(前月:▲0.1%)と、こちらは3ヵ月連続でマイナスとなり可処分所得の伸びがインフレに追いついていない状況が続いている。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:財、サービス消費ともに堅調な伸び

9月の名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.7%(前月:+0.7%)と前月並みの伸びを維持した一方、サービス消費が+0.8%(前月:+0.3%)と前月から伸びが加速した(図表4)。

財消費は、耐久財が+1.0%(前月:▲0.3%)と前月からプラスに転じた一方、非耐久財が+0.5%(前月:+1.3%)と前月から伸びが鈍化するなどマチマチの結果となった。

耐久財では、自動車・自動車部品が+1.9%(前月:▲0.8%)、家具・家電が+0.3%(前月:▲0.1%)、娯楽財・スポーツカーが+0.8%(前月:▲0.2%)といずれも前月からプラスに転じた。とくに、自動車関連の消費が好調だった。

非耐久財では食料・飲料が+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した一方、衣料・靴が▲0.1%(前月:+0.3%)、ガソリン・エネルギーが▲0.8%(前月:+9.7%)といずれも前月からマイナスに転じた。

サービス消費は、娯楽サービスが▲0.1%(前月:+0.4%)、金融サービスが▲0.4%(前月:+0.4%)と前月からマイナスに転じた一方、外食・宿泊が+1.3%(前月:▲0.1%)と前月からプラスに転じた。さらに、住宅・公共料金が+0.6%(前月:+0.4%)、医療サービスが+0.6%(前月:+0.3%)、輸送サービスが+3.2%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速した。とくに、輸送サービスの伸びが目立った。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格が前月比で4ヵ月連続プラス

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+1.7%(前月:+6.1%)と前月からプラス幅は縮小したものの、4ヵ月連続でプラスとなった(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.3%(前月:+0.3%)とほぼ前月並みの伸びとなった。

前年同月比は、エネルギー価格指数が横這い(前月:▲3.6%)と7ヵ月ぶりにマイナスが解消した(図表7)。食料品価格指数は+2.7%(前月:+3.1%)とこちらは75ヵ月連続のプラスとなったものの、前月から伸びは鈍化した。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2023年10月30日「経済・金融フラッシュ」)

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