2023年11月02日

米FOMC(23年11月)-予想通り、2会合連続で政策金利を据え置き。追加利上げの可能性は残す

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、2会合連続政策金利を据え置き、フォワードガイダンスを維持

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が10月31日-11月1日(現地時間)に開催された。FRBは市場の予想通り、政策金利を2会合連続となる5.25-5.5%で据え置いた。量的引締め政策の変更はなかった。

今回発表された声明文では景気判断部分で経済活動について、前回の「堅調(solid)なペースで拡大」から「力強い(strong)ペースで拡大」に上方修正されたほか、雇用の増加についても、前回の「鈍化(slowed)」から「緩やか(moderated)」に上方修正された。また、景気見通しでは足元の金融環境の引締まりを踏まえて、信用状況の引締まりに関する部分に「金融(financial)」の記述が追加された。一方、フォワードガイダンスに変更はなかった。フォワードガイダンス部分では「追加的な金融引締めの程度を見極める上で、委員会は金融政策の累積的な引締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する予定である」との表現が維持され、追加の利上げの可能性を残した。

今回の金融政策方針は全会一致での決定となった。

2.金融政策の評価:依然として追加利上げの可能性は残した

政策金利の据え置きと追加利上げの可能性を残したことは予想通りであった。

パウエル議長の記者会見では、足元のインフレ動向について夏にはかなり良好な数値が示されたとしつつ、インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりであることを示した。また、金融政策について最近の長期金利の上昇が金融引締めと同様の効果をもつことを認めた上で、インフレ率を長期にわたって持続的に2%まで低下させるのに十分制限的な金融政策スタンスを達成したのか未だ確信が持てないとしており、ガイダンス部分に変更がなかったことと併せ次会合以降の追加利上げの可能性を残した。

当研究所は今後の長期金利の動向や金融環境の引締まりが景気やインフレに与える影響が不透明なものの、足元の好調な経済状況や労働市場の動向から賃金上昇率の低下は緩やかに留まるとみられ、当面コアインフレ率が物価目標を大幅に上回る状況を考慮すると12月の追加利上げの可能性は依然残っていると予想する。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • 委員会はFF金利の目標レンジを5.25-5.5%に維持することを決定(変更なし)
  • 加えて、以前発表した計画通り、財務省証券、エージェンシー債、エージェンシーの住宅ローン担保証券の保有を引き続き削減する(変更なし)
 
(フォワードガイダンス)
  • 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • 委員会は追加情報とそれが金融政策におよぼす影響を引き続き評価する(変更なし)
  • インフレ率を時間の経過とともに2%に戻すのに適切な追加の金融引締めの程度を見極める上で、委員会は金融政策の累積的な引締め、金融政策が経済活動やインフレに影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮する予定である(変更なし)
  • 委員会はインフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
  • 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
  • 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
  • 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)
 
(景気判断)
  • 最近の指標は、第3四半期の経済活動が力強いペースで拡大したことを示唆している(経済活動について、前回の「堅調なペースで拡大してきている」” has been expanding at a solid pace”から「力強いペースで拡大した」” expanded at a strong pace”に上方修正)
  • 雇用の増加は年初から緩やかになったが、依然として力強く、失業率は低水準を維持している(雇用の増加に関して前回の「ここ数ヵ月の雇用の伸びは鈍化した」”Job gains have slowed in recent months ”から「雇用の増加は年初から緩やかになった」”Job gains have moderated since earlier in the year”に上方修正)
  • インフレは高止まりしている(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 米国の金融システムは健全で強靭だ(変更なし)
  • 家計や企業に対する金融・信用状況の引締まりは、経済活動、雇用、インフレを圧迫する可能性が高い(「金融」”financial”を追加)
  • これらの影響の程度は依然として不透明である(変更なし)
  • 委員会はインフレリスクに引き続き高い注意を払っている(変更なし)

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 
  • パウエル議長の冒頭発言
    • 政策スタンスは制限的であり、引締め政策が経済活動とインフレに下押し圧力をかけていることを意味するが、引締めの効果はまだ十分に現れていない。本日、我々は政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定した。追加的な政策引締めの程度や、政策が何時まで制限的であり続けるかについては、入っているデータ、進展する見通し、リスクのバランスを総合的に判断して決定する。
    • 経済活動は力強いペースで拡大しており、以前の予想を大幅に上回っている。
    • 力強い雇用創出は、労働供給の増加を伴っている。労働参加率は昨年末から上昇し、とくに25歳から54歳の労働参加率が上昇した。雇用と労働者数の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を上回っている。
    • インフレ率は長期目標である2%を大幅に上回っている。インフレ率は昨年半ばから緩やかになり、夏にはかなり良好な数値が示された。しかし、数ヵ月の良好なデータは、インフレ率が目標に向かって持続的に低下しているという確信を得るために必要なことの始まりに過ぎない。インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりがある。
    • 潜在成長率を持続的に上回る成長、あるいは労働市場の逼迫がもはや緩和されていないことを示す証拠があれば、インフレの更なる進展がリスクにさらされ、金融政策の更なる引締めが正当化される可能性がある。
    • 金融情勢はここ数ヵ月、長期債利回りの上昇などに牽引され、大幅に引締まった。金融情勢の持続的な変化は金融政策の行方に影響を与える可能性があるため、我々は金融情勢を注意深く監視している。
    • 我々は今後も、入ってくるデータの全体像と、それらが見通しと経済活動およびインフレに与える影響、ならびにリスクのバランスに基づいて、会合ごとに決定を下していく。
 
  • 主な質疑応答
    • (長期債利回りの上昇は今回の会合でのFRBの行動にどの程度代替されたのか)夏以降、より広範な金融環境の引締めに寄与している長期債利回りの上昇に注意を払っている。広範な金融情勢の持続的な変化は、金融政策の行方に影響を与える可能性がある。金融環境の引締まりは2つの条件が満たされる限り、将来の金利決定にとって重要な意味を持つ可能性がある。1つ目の条件は引締めが持続的である必要があること。もう1つの条件は長期債金利の上昇が、我々が期待した政策の動きを反映したものではないこと。
    • (12月に利上げをしなかった場合、その時点で利上げはピークに達したと考えるべきか)まず、我々は12月について決定を下していないことからはじめたい。12月の会合までに2つのインフレ指標、2つの労働市場、そして経済活動に関するいくつかのデータが発表される。我々はこれらに加え、金融情勢や世界情勢なども含めて12月に判断する。そして、(1月以降も)委員会は常にその時点で適切と思われることを実行する。
    • (FRBスタッフは景気後退をベースライン予想に戻したか)戻していない。議事録で示されるだろう。最近の動きは、短期的な景気後退を示唆するものではない。
    • (金融環境の引締まりが利下げの軌道にどのような影響を与える可能性があるか)委員会は現時点で利下げについて全く考えていない。我々はインフレ率を長期にわたって持続的に2%に低下させるのに十分制限的な金融政策スタンスを達成したのかという質問に非常に焦点を当てている。次の質問は何時まで制限的な政策を続けるのかだ。利下げはその次の質問だが、今は最初の質問にしっかりと焦点を当てている。
    • (インフレ率を低下させるために労働市場や全体的な成長にとってどのような痛みが必要か)今回のような利上げサイクルにありがちな失業率の上昇をみることなく、インフレ率に関してかなり大きな進展を達成したことは誰にとっても喜ばしいことだ。これは歴史的にも異例で、歓迎すべき結果だ。しかし、物価の安定を完全に回復するためには、成長率の鈍化と労働市場の軟化が必要になるだろうが、そうなっていないことは良いことで、その理由はわかっている。1つはパンデミックへの対応による需給の歪みの解消、もう1つは需要を緩和し、供給側に回復する時間を与える制限的な金融政策だ。これら2つの力が一緒になってインフレを押し下げている。しかし、そうしたことは一巡し、おそらくまだ物価の安定を取り戻すにはいくつかの課題が残されている。
 
 

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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2023年11月02日「経済・金融フラッシュ」)

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