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中国不動産不況と不良債権問題-日本の経験から言えること
基礎研REPORT(冊子版)11月号[vol.320]

総合政策研究部 専務理事 エグゼクティブ・フェロー・経済研究部 兼任 矢嶋 康次
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1―中国は日本病にかかったのか?
2―中国が不良債権処理に陥ると?
日本の不良債権処理は、とにかく時間が掛かった。まさに“too little, too late”であり、不良債権処理について「もっと不良債権はあるはずだ、こんなものではない」といった声が多く聞かれた。実際に事態が鎮静化したのは、日本の独特な金融制度への理解が深まり、信頼性の高いデータが出るようになって、事態のコンセンサスが形成され、政治的に困難であった大規模な公的資金導入が、数度行われた後である。
そう考えると中国の現状は、不良債権が急増する前の状況ではないかと感じてしまう。ただ、日本の90年代と比べると、現在の中国との相違点も見えてくる。
例えば、中国は共産党の一党独裁体制であるため、民主的なプロセスを経ないで政策を実行することができる。これは、バランスシート調整において、公的資金投入が迅速に行えるなどの点ではプラスである。
一方で、為替に対する対応は、大きく異なると考えられる。日本では輸出のブレーキとなる円高が、大きな問題となったが、中国では資本流出を伴う元安が、大きな問題となる可能性が高い。株価や消費の下支えには、金融政策を緩和し、金利を下げることが効果的である。ただ、それは元安誘導する政策にもなり、資本流出を招く危険がある。中国経済の低迷を受けて、海外勢が直接投資を引き上げることに加えて、国内から資金逃避の動きも起こる。この怖さは、日本の90年代より、はるかに大きなリスクとして予見される。
すでに地政学的な分断などもあって、中国では直接投資が急減している[図表2]。為替も元安基調を強め、リスクが前倒しで顕在化しているようにも見える。
3―最大の問題は「データ」の信頼性
日本の経験に照らせば、不良債権の問題で注目されるポイントは3つある。1つは、不良債権などバブル崩壊の全容把握ができる「信頼できる」データがあること。2つ目は、国内外で実態の「本当の悪さ」に対するコンセンサスが形成されること。3つ目は、公的資金導入などの大胆な政策が打たれること。この3つが、どのようなタイミングで出て来るかが、極めて重要である。これができないと、中国経済が長期低迷するというシナリオの蓋然性が高まることになろう。
(2023年11月08日「基礎研マンスリー」)
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03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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