2023年10月30日

英国スナク政権発足から1年-視野に入る次期総選挙と政権交代

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨
 
  1. 英国のスナク政権の発足から1年で政策の現実路線への軌道修正が図られた。
     
  2. 財政ガバナンスは、独立財政機関「予算責任局(OBR)」による経済見通しの作成と財政ルールへの適合性判断という従来の軌道に回帰した。2030年からのガソリン車、ディーゼル車の販売禁止の延期や高速鉄道(HS2)の第二期の北部延伸計画の中止も現実路線への回帰と言えるものだ。
     
  3. 16年の国民投票で離脱を選択して以来続いていたEUとの関係の遠心力の強まりにも一定の歯止めが掛かった。ジョンソン政権が力を入れた「グローバル・ブリテン」戦略とインド太平洋傾斜の成果は、スナク政権発足後、豪州、NZとのFTA発効、CPTPP加盟などのなど形で表れている。これらの協定の経済効果はEU離脱を埋め合わせるほど大きくない。インドとのFTA交渉の成果に期待がかかる。
     
  4. 25年1月までに実施される総選挙では14年振りの政権交代も見込まれる。保守党の強硬派からは減税を求める声もあるが、ハント財務相は財政ルールを尊重する構えである。
     
  5. 労働党の影の財務相は財政ガバナンスを強化する方針を示している。根強いインフレ圧力、グローバルな環境の変化、厳しい財政事情という制約は変わらない。外交・通商・安全保障政策も含めて、大きな軌道修正は難しいものと思われる。

 
政策は現実路線回帰も、保守党の支持率は野党労働党に大差をつけられている-次期議会選挙での投票の意向に関する世論調査-

(2023年10月30日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

経歴
  • ・ 1987年 日本興業銀行入行
    ・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
    ・ 2023年7月から現職

    ・ 2011~2012年度 二松学舎大学非常勤講師
    ・ 2011~2013年度 獨協大学非常勤講師
    ・ 2015年度~ 早稲田大学商学学術院非常勤講師
    ・ 2017年度~ 日本EU学会理事
    ・ 2017年度~ 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
    ・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
               「欧州政策パネル」メンバー
    ・ 2022年度~ Discuss Japan編集委員
    ・ 2023年11月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
    ・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員

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