コラム
2023年10月11日

2023年9月投資部門別売買動向~海外投資家は大幅売り越し~

金融研究部 研究員 森下 千鶴

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日経平均株価は、9月上旬に中国の景気減速懸念や米金融引締め観測の後退から、6日に3万3,241円まで一旦上昇したが、その後は一進一退の動きとなった。中旬に入ると米国景気の堅調さを受け再び上昇し、9月15日には3万3,533円と3万3,500円を上回った。下旬は、利益確定売りが先行し日経平均株価は下落した。9月19、20日の米FOMCでは利上げは見送られたが、米金融引締めの長期化が懸念され、22日にはさらに3万2,402円まで下落した。9月25日の日銀の金融政策決定会合は現状維持だったことから安心感が広がり、日経平均株価は一旦3万2,678円まで上昇した。しかし、月末にかけて米政府閉鎖の可能性が懸念されたことから再び下落し、3万1,857円で終えた。9月はこのように日経平均株価が推移する中、個人、事業法人が買い越す一方で、海外投資家が売り越した。
図表1 主な投資部門別売買動向と日経平均株価の推移
2023年9月(9月4日~9月29日)の投資部門別の売買動向をみると、海外投資家は、9月に現物と先物の合計で3兆703億円の売り越し、9月最大の売り越し部門であった。現物と先物の合計だと、2023年3月以来の月間での売り越しだった。週間では、9月第2週(9月11日~15日)は5,380億円買い越すも、9月第3週(9月19日~22日)は1兆2,533億円の売り越し、さらに9月第4週(9月25~29日)は1兆6,377億円の売り越しとそれ以上に売り越した。9月第3週~第4週は、米金融引締め長期化懸念や米政府閉鎖の可能性から米国株の下げを受けて、日経平均株価も下落幅が1,700円に迫るなど大きく下落しており、海外投資家の売りが特に集中したようだ。

図表2は海外投資家の週間の売買動向を、現物と先物に分けて集計したものである。現物は9月を通して売り越しだった。先物では、9月第1、2週と前半は買い越しだったものの、第3、4週と後半は売りが目立った。9月下旬は米金融引締め長期化が懸念されたため、リスクオフ姿勢が強くなり現物、先物ともに売りが優勢となったようだ。ただし、9月第4週は現物は777億円の小幅売り越しに対し、先物は1兆389億円の売り越しと特に先物の売りが目立った。特に短期投資の投資家の売却が多かった様子である。
図表2 先物は9月第4週に大幅売り越し
一方で、個人が現物と先物の合計で1兆2,792億円の買い越しと、最大の買い越し部門であった。

特に、9月第3週(9月19日~22日)は9,223億円、第4週(9月25日~29日)は6,209億円の買い越しとなった。9月第3、4週に日本株が下落するなか、個人は「逆張り」の買いをしていたことが確認できる。
図表3 個人は特に9月下旬に買い越し
図表4は、旧市場第一部とプライム市場の過去5年間の平均売買高を月別にまとめたものである。7月から9月は、夏休みなどで市場参加者が減少し、相場があまり動かなくなる「夏枯れ相場」がアノマリーとして知られている。ただ、2023年7月~9月の月別売買高は過去5年平均の1.2倍と例年と比べて活況だったことから、日本株に対する注目は例年より高かったようだ。10月~12月は7月~9月と比べて売買高が増加する傾向が見られる。今年前半に見られた日本の変化を期待した海外投資家の買いが10月以降戻ってくるのか、または売りが継続するのかも合わせて注目していきたい。
図表4 2023年は夏場も売買高は活況
 
 

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金融研究部   研究員

森下 千鶴 (もりした ちづる)

研究・専門分野
株式市場・資産運用

経歴
  • 【職歴】
     2006年 資産運用会社にトレーダーとして入社
     2015年 ニッセイ基礎研究所入社
     2020年4月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)

(2023年10月11日「研究員の眼」)

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