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首都圏中古マンション市場の動向(2023年8月)~東京都心部と、余暇も楽しめる郊外エリアが強く上昇
金融研究部 准主任研究員 渡邊 布味子
首都圏中古マンションは価格の上昇が続いている
市区町村別の動向は異なっている
各市区町村の特徴的な動向は以下の通りである。
「東京都中央区」は2022年には4位(2012年は10位)に、「東京都江東区」は2022年には8位(2012年の13位)に上昇した。いずれもこの10年の間にさらに開発が進んだエリアであり、街全体の価格水準も大きく引きあがった。
「東京都文京区」は7位(12位)となった。区内は高低差が多く駅距離を感じる立地が多いが、各駅から東京都心部へ近接している。容積率が低いエリアが大半で高層マンションが立ちにくく、また、高台には旧来からの閑静な住宅地が多く、低層高級マンションを好む層の需要と合致する。
「千葉県浦安市」は17位(7位)、「東京都武蔵野市」は13位(9位)、「川崎市中原区」は11位(8位)、「東京都世田谷区」は10位(4位)と順位を落とした。いずれも舞浜(浦安)、三鷹、武蔵小杉、世田谷などのブランド住宅地を擁するエリアであるが、以前に比べてブランドよりも利便性などの実利を取る層が増加しているようだ。
なお「三浦郡葉山町」は9位(32位)と躍進したが、他の市区町村とは上昇理由が異なると考える。葉山御用邸をはじめ別荘地でもある閑静な住宅地であり、リモートワークなどのコロナ後の働き方を前提に、通勤利便性よりも居住の快適性や余暇を重視する層を惹きつけたと見られる。
東京都心部の高価格帯のマンションが占める割合が上昇
それが2022年には2,000万円未満のマンションが5.8%、2,000万円以上4,000万円未満のマンションが占める割合が41.5%に低下し、それ以外の価格帯が占める割合は1億円以上が3.3%、8,000万円以上1億円未満が1.7%、6,000万円以上8,000万円未満が13.7%、4,000万円以上6,000万円未満が34.0%に増加している(図表5)。
また市区町村別の成約総額が全体に占める割合は、東京23区合計が59.1%(2012年は48.4%)、その内、千代田区・港区・中央区・渋谷区合計が17.3%(10.7%)、さらに港区・渋谷区合計が11.0%(7.6%)と、都心部が占める割合が増加している。
なお2022年において2,000万円未満の手ごろなマンションの成約はほとんどないが、成約物件の平均築年数は2012年より伸びている。新築マンションの設備に近づけるリフォームを行ったうえで、リフォーム費用等を上乗せして販売されている中古マンションが以前よりも増加していると見られる。
今後も都心部への集積が進むが、上昇幅は市区町村別に異なるだろう
また、現在住んでいるマンションと同程度の築年のマンションの成約価格だけでは、マンションの価格が上がっているかは測れず、リフォームが行われている場合には工事費用相当額を除いて考える必要がある点には留意が必要である。
保有するマンションの資産価値が気になる人や、これから新築または中古マンションを購入しようと考える人は、マンション販売を仲介するホームページなどで、これまでの価格上昇が大きい地域と小さい地域のそれぞれに立地する複数のマンションの価格を、築10年、築20年などの築年別に見ておいた方が良いだろう。
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(2023年10月06日「研究員の眼」)
03-3512-1853
- 【職歴】
2000年 東海銀行(現三菱UFJ銀行)入行
2006年 総合不動産会社に入社
2018年5月より現職
・不動産鑑定士
・宅地建物取引士
・不動産証券化協会認定マスター
・日本証券アナリスト協会検定会員
・2022年、2023年 兵庫県都市計画審議会専門委員
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